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一番難しいと言われている巻、一番厚い巻を乗りこえて、気持ちが切れたのでしょうか。
ずいぶん時間がかかってしまいました。
しかし、読み終わってみれば、今までで一番エッセイ集らしい巻だったかもしれません。
”他人の称賛を根拠にして、それが徳の高い行為の報酬なのだと考えるのは、あまりに不確実にして、あやふやな土台にもとづいている。とりわけ、現代のような、腐敗した、無知な世の中にあっては、よい評判はむしろ有害でさえある。”
好感度の高い人ほど、何か失敗した時の風当たりが強烈な、21世紀の日本について書いているようだけれど、500年前のフランスなんですよね。
人間社会って進化しないものなのかなあ。
”老いは、顔よりも、精神に、たくさんの皺をつけるにちがいない。年老いても、すっぱいにおいや、かびくさいにおいがしないような魂など、まずめったに見られるものではない。”
心します。
”もっとも美しい心とは、もっとも多くの多様性や柔軟性をそなえた心にほかならない。”
多様性という概念を当時から提唱していたのもすごいけれど、10年近く前にこの訳語を使用した訳者も、今になってこれほど日常よく耳にする言葉になるとは思わなかったと思うわ。
”民衆の無知に折り合いをつけられないような英知は、すべて味気ないものにすぎないわけで、これではもう、他人の仕事はおろか、自分の仕事にだって関わるのはやめなくてはいけなくなる。公私を問わず、ものごとは世間の人々との関わりなしにはすまないのである。”
ああ、確かに学校の勉強はできただろうけど、仕事はできない人っているなあ。
難しい言葉でまくしたてられても、具体的に何をしたいのかが伝わらない。
だから誰も相手にしなくなる。
仕事が滞る。
頭がいいなら、頭の良くない人にわかるようにかみ砕いてプレゼンをしてほしいのだが。
”討論において、一致(ユニゾン)とはまったくもって退屈なことでしかない。”
そう考える人はごく少数だよね。
一致しなくても強引に推し進めるしさ。
一時期教育の場でディベートを盛んにやっていたと思うんだけど、今はどうなんだろう。
”彼らにはまちがいを直す勇気がないのだ。なぜならば、自分がまちがいを直されることに耐える勇気がないのだから。”
モンテーニュはそこそこの地位のある著名人なのに、非常にリベラル。
自分の考えをしっかり持っているからこそ、他者にもそれを求めるし、他者の意見も尊重する。
その代わり借り物の意見をえらそうに言う人は、コテンパンにやっつけるらしいです。
そしてモンテーニュさん、どうしたんでしょう。
一番長い章は「ウェルギリウスの詩句について」というタイトルで、もっぱら性愛についてを延々と書いてらっしゃる。
検閲が厳しかった時代はカットされたそうだけど、ねちねち書きすぎです。笑