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中学時代、大学時代、そして今。
住み慣れた杉並区の、よく知る土地のいまとは異なる姿にも、
昔の人々の生活の違いにも、興味深く読めた。
土地勘の無い方でも、なんかのんびりした時代の雰囲気を楽しめるはず。
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「胴村」という記述を久世光彦のエッセイ以下ではじめて目にした。クビになって胴ばかりの退役軍人が住む町のこと。
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何よりも小山清のことに触れられているのが嬉しい。本当に井伏さんはたくさんの弟子に慕われた、面倒見のいい兄貴分だったんだろうなぁ。一度お目にかかりたかった。
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この小説は著者自身が言ってますが、著者の住んでいる周りの事柄など周辺の起きた事を日記調にまとめたものです。それなので、当時の「荻窪」周辺の事が解ります。
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タイトルから荻窪周辺の話だけかと思いきや、学生時代に関東大震災にあったときの話(早稲田界隈)や、マレーへ従軍したときの話(海音寺潮五郎や小栗虫太郎が出てくる……!)なども入っていて、自伝に近いエッセイですね。
たまに話の時代が前後したりして、そこが逆に思いつくまま自由に語ってる感じで、近所のおじさんの面白話みたいな。
本当に色んな文士達が出てきて、井伏さんの交友関係の広さ、慕われっぷりが感じられて面白かった。(太宰治が可愛いんだ……)
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ご近所文豪の穏やかで優しい目線の随想録
地元民として、荻窪から見た近代史、郷土史としても大変興味深かった。
著者の押しつけがましくない自然体の語り口も心地よい。
関東大震災の避難生活(早稲田球場、中央線線路避難)、
戦時下の徴用船の騒動などの若かりし頃の活動的なエピソードから、
先輩格としての文士らとの交流・支援と続き、
戦後、地元に回帰するも何やら死を想起させるエピソードが増えて、
やがて、特段意識していないと言いながらも老境の身を穏やかな荻窪の地で想うところで終わっている。
その他
・時系列の記述がやや奔放で不親切。回想の入れ子構造が多用。
・地理的描写も地元関係者でないと付いていくのが至難の技。
・意外と太宰との交流の記述は少ない。触れたくなかったのかもしれない。
・「荻窪」以外の記述も意外と多い。転居前は当然として、阿佐ヶ谷将棋会の比重が大きい。
しかし、当時の文学窶れの人は、ダメ人間なのに特権階級意識が高そうで、面倒くさそうである。
よくサークルクラッシャーしないものだが、著者のような存在が大きいのかもしれない。
・二二六事件は、著者は花火のような銃声を聞いているだけなのだが、以降伝聞→資料と進めていくところが無理なくさすがである。
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荻窪に住んでいた井伏鱒二による大正末期から昭和前期の東京の様子や世相、近隣に住む文士(阿佐ヶ谷将棋会)との交遊の記録。
当時はまだ青梅街道を馬が野菜を乗せて通っており、阿佐ヶ谷や荻窪、高円寺に鉄道の駅を誘致の話が出ている。関東大震災の際には東京が3日間燃え、菊池寛が横光利一を探して幟を立てて東京中を歩き回ったなど、文士の絆の強さを思わせる。井伏鱒二は立川まで歩いて広島に列車で帰ったという。
2・26事件に小林多喜二の獄死など当時ではどのように受け止められていたのかリアルタイムな目線での記録となっている。
不世出の作家小山清など知ることができてよかった。
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昔荻窪に住んでいた時に買ったけど結局読まなかった本を30年近く経ってから読んだ。井伏鱒二の文章はなんとなくおおらかさと洒落た味わいがあって「黒い雨」を読んで以来好きだ。昭和初期の荻窪あたりの今からは想像がつかないような田舎びた感じや、戦争に向かう時期の緊張、その中でしたたかに生きる街の人々や今よりは生きる余裕もあったように見える文人たちの姿が飾らない雰囲気で馴染みのある地名の中で描かれる。荻窪タウンセブンの建設前のワクワク感のようなものも書かれていて身近なところもあって嬉しい。1993年に亡くなったということは実は私が荻窪に住んでいた時と重なっていた部分があったのかもしれない。