投稿元:
レビューを見る
犯罪を通して、宗教、人生観の違い、家族愛を描いたって感じ。一人一人の役割が重い。「解錠師」を思い出す。
投稿元:
レビューを見る
評価はやや甘め。ジョン・ハートやトマス・クックを彷彿とさせる家族をテーマにした祈りと赦しの物語。死体は登場するが、謎解き目線で読むと失望する。
ミネソタの田舎町を舞台に、主人公の家族と周囲の人々の生活を牧歌的に綴っているだけなのだが、序盤から引き込まれそのまま読了。中盤に大きく動き出すまでは普遍的なエピソードの繰り返し。でもどういうわけだかハマってしまい、このまま事件もなく終わってしまってもいいとさえ思ってしまった。主役の兄弟をはじめ、人物造形が巧い。あっさり描かれているのにそれぞれが活き活きとした印象で、登場人物の希望も苦悩もすんなり受け入れられる気持ちにさせられた。
終盤ではちょっとしたサプライズもあるが、真相は予測可能。若干間延びした感じが残念だが、謎解きに対する肩透かしは想定内だったので、特に問題なし。
タイトルの意味がわかる場面は秀逸。読み手の私が一番救われた気になった。全体を通して感じるのは浄化。年の瀬にのんびり読めたからかな、いろんなものが洗い流されたようで、気持ちのよい読書時間でした。つくづく、作品とタイミングの相性って大事よねー。
投稿元:
レビューを見る
ミステリーというより,家族の物語としての重みが先に来て,読み応えたっぷりの満足感がある.現在の私が40年前を振り返って書くという形式で,13歳の少年にすぎない私の考察も重厚になって,一夏の経験というにはあまりにも次々起こる出来事に崩壊していく家族と踏みとどまる人の強さがぎっしり詰まっている.ニューブレーメンという街の様子もそこにあるかのようで,川や草原や吹きゆく風など匂いなども確かに感じられた.吃音の弟ジェイクに訪れた奇跡に感動した.
投稿元:
レビューを見る
何故かはわからないがちょっと取っつきにくくて読み進むのに時間がかかった本だった。タイトルの意味が分かったあたりから盛り上った感じでしたが。主人公が男の子だったせいですかね?感情移入がイマイチ出来なかったような……
投稿元:
レビューを見る
コーク・オコナーのシリーズは未読のまま。ウィリアム・ケント・クルーガーの作品を初めて読む。
あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった――。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作!
教会付属の幼稚園に通っていたので、食前のお祈りを必ずしていたことを思い出した。一貫して静かな、心に残る物語。ミステリとしては珍しい読後感であった。
投稿元:
レビューを見る
ドイツ系住民の多い、ミネソタの田舎町の殺人。
牧師の父とその家族が経験する夏。
引き込まされる。
投稿元:
レビューを見る
ボビー少年と旅の人の死、この二つの死の真相については結局語られなかったな。正し過ぎる人は周囲の親しい人達を追い詰めてしまう可能性があるのかも。
投稿元:
レビューを見る
トマス.クックが好きなひとははまる。確かに、ミステリー色は薄いが、アメリカの片田舎の都市のよき文化と悪しき文化が匂いたつ。なぜか、行ったこともないのに、懐かしい気がするのはどうしてなんだろう。
投稿元:
レビューを見る
いろいろな事を考えさせられる深い本だった。ミステリーというよりも「祈り」と「赦し」の本。背景描写も登場人物の心理描写も 素晴らしく静かに落ち着いて心に訴えかけるのは 翻訳も良かったからだろう。ただ自然信仰と神道と仏教を足して割ったような考え方を持ってる私には どうしてもキリスト教の教えを骨にして書かれているこの本の作者が伝えたかったであろう事は 心の底からは やはり理解できない部分が残る。それでも 読んで良かったと思える 深い本だった。
投稿元:
レビューを見る
他の方のご指摘の様に、スティーブン・キングの
「スタンド・バイ・ミー」っぽい事は否めないかも。
ですが、逆を云えばああいうテイストが好きならば
十二分に楽しめる事間違いなしです。
何より、行間から匂い立つような夏の強い日差し、
カラカラに乾いた砂や土、ひんやりとした石切り場、
咽るような草の香りに、汗。
著者の表現力の素晴らしい事!
死や悲しみ(差別的な事も多々)を根底に置きながら、
美しくまとめ上げ、そしてこのさわやかな読後感よ。
おお、神よ(笑)
あと、地味に食べ物の描写が好きでした。
ガスがドラム家の台所で作るポテトとチーズの料理が
美味しそうです食べたいです。
解説を読んで知ったのですが、意外にも
ニューブレーメンが架空の街とは…
これだけ風景描写が手に取る様に書かれているのに!
投稿元:
レビューを見る
2014年エドガー賞、 文春3位、このミス3位
1961年夏、ミネソタ州の田舎町
語り手 フランク・ドラム13歳
牧師の父親 ネイサン
芸術家肌の母親 ルース
音楽の才能に恵まれた姉 リーゼ
吃音症の弟 ジェイク
ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』『川は静かに流れ』に続いて『ありふれた祈り』を読んでみると
エドガ―賞って長編推理小説だけどミステリー的な要素より
人間の内面を深く描いた優れたヒューマンドラマが評価されてるような印象。
後半、動き出してエピローグまで良かったけど
中盤にかけては退屈な感じ
あんまり退屈な時間が長くてどうも
エピローグがなかなか効いてましたが
たどり着くまでは、いまいち感が強かったなぁ
投稿元:
レビューを見る
40年前の1961年の夏を当時13歳だった主人公が回想する。ミネソタ州ニューブレーメンに住まう主人公とその家族や、かかわりのある人々が構脚橋で起きた出来事とともに丹念に描かれ、時代と西部のテイストが楽しめる。中盤からは・・・もうネタバレしちゃうので書かないけど、じっくり読ませる深い味わいがあり堪能しました。初クルーガー。他の作品もボチボチ読もっかな。
投稿元:
レビューを見る
いくつもの死に向き合う中で成長する兄弟。
とりわけひとつは最愛の姉の死。
姉の死にまつわるフーダニットの目くらましも悪くない。
また、そういったミステリ性をおいておいても、周囲の人々との繋がり、母の心身崩壊と再生を通じて過ぎて行く少年時代の特別時間の描き方がとても良いと感じた。
時間の軸を進め、関係者達のそれぞれの死でこの物語を締めくくっていくところもふさわしいクロージングだった。
投稿元:
レビューを見る
悲しい物語
でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。
1961年夏
牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。
自身の心の底に住み着いた戦争の後遺症ゆえに、ひたすら“神”の道を進む父の言葉は、困難にあった町の人びとの心にいつも寄り添っていた。
自分の家族に起こった困難のとき、母はそんな夫に「せめて今日だけは“ありふれた祈り”にして……」とつぶやく。
キリスト教の赦しや救済について、疑い迷い罵るという感情が普通にあること、それでいて、それらをすべて俯瞰するように包み込み潜んでいる“神”の存在。
信仰心ですべてを解決していたら、この本は「つまらない祈り」になっていただろう。
投稿元:
レビューを見る
読書備忘録696号。
★★★★★。
翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。
アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。
ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックリベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑
すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。
そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。
その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。
そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。
物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。
まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。
教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。
ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。
そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。
誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。
少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。
牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。
この作者の作品「このやさしき台地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑