紙の本
社会派映画のような重厚感
2019/02/25 00:30
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投稿者:beni - この投稿者のレビュー一覧を見る
当時、雑誌に連載されていたそうだが、こんな凄い作品がどうして近年まで埋もれていたのだろうと思う。
写真から受ける緊迫感と臨場感が半端ない。
現在の日本とは全く違う、当時の社会の空気感まで
しっかりとアングルの中に捉えられている。
それにしても、当時の日本人は今の日本人とは顔つきが全然違う。
20代半ばの若い刑事でも、ナチュラルに引き締まった表情をしている。
職業柄の緊張感からではなく、もっと深い落ち着いたものである。
今日、そこらで見かける同年代の人間など、悪いが足元にも及ばぬ。
こんな大人な日本人が当時、この国には当たり前にいて、戦後の日本を復興させていったのだなと、そんなことまで考えさせられる。
事件を追うリアルさと、当時の普通の日本人の顔の魅力。
幾度でも頁を繰りたい写真集である。
紙の本
向田刑事が東野英治郎さんにしか見えない
2023/09/04 11:56
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
向田刑事と緑川刑事がある事件を追う、二人の刑事の活動はまるで松本清張の小説のよう、なにかの作品のスチール写真のようにみえる、向田刑事が東野英治郎さんにしか見えないということは緑川刑事は格さんの横内正さんか
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ずっと見たかった写真集、後発のナナロク社発行の普及版。昭和33年に起きたバラバラ殺人の犯人を追うベテラン刑事と若手刑事の二人組を取材した実録写真集。ひたすら足で地味に聞き込みをしている二人を追っているモノクロ写真集だが、地味さは無く、驚くほど劇的な写真だ。よく言われているように、まるで映画のスチルのよう。昭和30年代の街並みや人々の服装も興味深く、眺めていて飽きない。刑事ふたりのあまりにも刑事然とした服装がまた良い。万年筆、黒電話、定食屋、マッチ……そして人々の喫煙率の高さ!昭和を感じる。
写真の構図がスタイリッシュなものが多いので、ページに施されたデザイン(写真アプリのレトロフレームのようなやつ)が煩く感じられてしまうのが惜しい。
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緊迫感のある本物の刑事と昭和の町と猟奇的殺人と。すべてにゾクゾクした。ここまで撮らせた側とここまで撮った側の関係性が密と言うより、互いに一体化しているように感じる。撮った側の気配は感じさせず、刑事たちが圧倒的な存在感で見る者に迫ってくる。
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すごい。ドラマ以上にドラマみたい。昭和30年代。どうやって殺人事件を追う刑事に密着したんだろう。事件が事件だけに鳥肌がたった。白黒のコントラストがすごみをましているよう。
30年代なんてつい先日のことのようだけど、街の様子がものすごく昔のようでショックを受けた。ちょうど両親が東京で学生生活を送っていたのはこんな街中だったんだなぁ。思わず知った顔がないか探してみたりして。なんだかテレビ映像で見るよりもリアルな情景にどぎまぎした。このおしゃれなしあがりがまたにくい。
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都築響一さんのトークショーに行った際見せてもらった。
昭和の刑事の捜査の様子を、カメラマンが追って撮っていったもの。
まるで映画。
当日購入したかったが別にも色々買ってしまい躊躇し未入手。
まだ買えるのだろうか。
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⑧「血の轍」の表紙に使われているそうな。緊迫感が凄い。S33年の事件ということでその頃の世情も垣間見れる。乙一さんのまとめ方も素晴らしい。
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若竹七海「錆びた滑車」巻末おまけ「冨山店長のミステリ紹介」のお勧め。昭和33年に茨城県で発生したバラバラ事件の捜査をする茨城県警と警視庁の刑事2人組に同行、彼らを撮影したカメラマン渡部雄吉の密着写真集。現代では絶対不可能な企画。
「ー滑車」読了日に試しに借りてみる。ひと目見てのめり込んだ。こんなのドキュメンタリーでも、もうあり得ない。本物のベテラン刑事(警視庁の方)が、ホントに小説に出てくるままに聞き込みの時はにこやかに、推理するときには苦虫を潰して歩いている。煙草でもうもうとした会議室。狭い部屋に20名が、いかつい顔を突き合わせて、ああでもない、こうでもないとメモに書きとる。丸こい湯飲み。二本の黒電話。電話がかかってくる(表紙の写真)。急いで咥えタバコでコートをはおる。ハンチング帽を被って外に出れば、都市化直前の幅広い道路にまばらな車の東京だ。下町を足で稼いで聞き込み捜査。店は未だ配給所の面影を残している。ヌカ一杯15円、小麦60円。飯場の立ち食い屋、一食10円均一。そこで出されているのは、雑炊とかスイトンとか。下町のうなぎ丼、天丼、餃子丼全部150円。笑顔のベテラン刑事。新米の茨城県警刑事は厳ついままだ。歩いて聴いてゆくのは、ドヤ街や旅館などの下町ばかりだ。路地で遊ぶ子供たち。女将さんがそのまま30年代の小さな旅館の女将さんみたいだ。演技じゃないんだ。捜査は水戸へ、または岐阜県へ。旅館で聞き出した容疑者の住所が岐阜県だったのである。しかし1ヶ月の聞き込みの結果、住所は偽りだという結論に至る。手がかりは遂に途絶えた。
ここまでが、写真集の約半分である。もう一度いう。これはまるでドキュメンタリー以上だ。刑事の頭を抱える苦悩も、本物だ。もう2度と撮れない。そしてまるで一冊の推理小説である。よってこれからの展開は、もう書かない。文章は乙一。2014年再刊の時に、ドラマチックに構成し直している。
「ー滑車」では、元刑事だった祖父へのクリスマス・プレゼントにと、古書店のお客が買った。ぴったりだ。きっと喜んだことだろうと思う。
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「罪の轍」の表紙から。どうして茨木県下バラバラ殺人事件合同捜査本部は渡部雄吉というカメラマンに捜査の写真を撮らせることを許したのだろう?この写真集の存在そのものがミステリーに感じました。先ずは実際の事件に同行するカメラの生々しい迫力に圧倒されます。二人の刑事が歩く昭和33年の東京の街並み。映り込む人々の在り様。匂いまで伝わってくるような時代のシズルが捉えられています。そして、緑川刑事、向田刑事の顔、仕草、聞き込みを受ける市民の表情、捜査会議の警察内部の人々の存在感、登場人物全員のキャラの濃さにたじろぎます。緑川刑事を現代の俳優でキャスティングしようと思っても不可能な感じの渋さです。さらにはこの事件そのものが「新しい名前」を手に入れるため、という動機がこの時代の「らしさ」かも。「砂の器」や「飢餓海峡」との共通性を感じます。つまりは敗戦から13年経った日本の、実はまだ戦争のダメージを引き摺っている時代の匂いを蘇らせるタイムカプセルのような写真集なのです。「もはや戦後ではない」という記述のある経済白書が昭和31年ですが、昭和33年はまだまだ戦争が作り出したものが社会に溢れていたことを体感しました。きっと社会の空気の匂いが変わるのが昭和39年の東京オリンピックからなのではないでしょうか?
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出先にて待時間潰しに入った図書館で、たまたま目に付きページを開いた。タイトルの『張り込みー』から松本清張を連想したけれど、内容はノンフィクション。実際に起きた事件の捜査風景が撮影されていて、読み終わったときには一本の映画を観たような気分になった。