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2015.4.26市立図書館
「日本人と英語」をめぐって巷に流布する言説、たとえば「英語ができれば収入アップ」「女性は英語が好き」「英語の必要性は増す一方」といったことばに根拠はあるのか、きちんとした統計資料を適切に読み取ることでこれまで素朴に信じられてきた(喧伝されてきた)言説の当否をばっさばっさと斬っていく。最終的には、れっきとした政策提言や研究論文にさえ引用されることがある多くのの言説には根拠がなく、データを見るとまったく当たっていないこともままある、という結論。
さんざん踊らされてきた人が読めば眼から鱗というかがっくりくるかもしれない(でも、冷静に考えればこんなものよね)。文科省の教育政策に関わる人達の感想が聞きたい。
でも、これ言語学(英語)じゃなくて、社会学の棚にあるべき本じゃないかしらね? まあ、英語教育関係者に読んでもらうには830に並んでいたほうがいいか。
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膨大な統計資料をRで分析し、英語に関する俗説をことごとく痛快に論破している.このような社会学的アプローチは政策立案者にとって非常に重要であるのもかかわらず、俗説をペースにことを進めている大ばか者が多い.文部科学省がその典型だ.反省すべきだ.Rを勉強中なので多くの事例があり参考になった.
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日本人の英語力は本当に低いのかなど、日本人の英語にまつわる命題を世論調査の結果に基づいて定量的(=統計的)に検証した本。
例えば、「英語ができる人は年収が高い」という命題は、親の年収とか学習年数等他の条件が同等で、英語だけできる/できないという条件で比較すると、否定されるらしい。
結論だけ知りたいのであれば、最終章だけで事足りる。
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英語に関するイメージ的な言説(英語が話せれば収入が上がるとか、就職の幅が広がるとか)は広く流通しているが、実際には日本社会ではそれほど英語が必要とはされていない。特に女性は仕事に結びついていない。早期英語教育によって英語能力は多少上がるが、それが何?という話。
2010年までの社会調査データに基づいているので、その後に急増したアジア圏からの旅行者対応などを考えると、接客などで多少でも英語を使う人は増えているかもしれない。「これまでの教育に基づく現在の状況」を分析したものであり、これからどうなるかという議論ではない。とはいえ早期教育や大学における英語オンリー教育などを積極的に導入しなければならないほど英語が求められているかというと、実際にはそうでもないのではないか。むしろエリート層こそ英語能力が求められる。
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データにもとづいて、日本人と英語に関する夢のない事実を明らかにしている。
・高度の英語能力を持った日本人はごく一部しかいない。
・英語教育を受けられるか否かは、出身階層によって大きく左右される。
・日本人は、全体として、世界的に見て英語力が低いのは事実だが、最低とか、突出して低いということはない。しかし、他国では、高階層の人は英語ができ、低階層の人は英語ができないという格差が大きいが、日本人は、低階層の人でもそれなりに英語がわかるのに、高階層の人でもそれほど英語ができないという格差の乏しさが、日本人の英語ベタを目立たせる結果となっている。
・現実に、英語を使っている日本人はごくわずか。
・英語学習熱のある人もごくわずか。
・英語を使用する必要にかられている人もごくわずか。この本の使っているデータの時点(2000年から2010年)でみると、グローバル化によって英語の必要性が高まっているという事実は見られない。
・英語ができると所得が高くなるという傾向も、あまり見られない。
・相対的に見て、女性が仕事で英語を使う機会は男性より少ない。
・早期英語教育熱は、公教育向上に対する期待、英語の有用性の認知などに支えられている。
・早期英語教育を受けた人は、そうでない人よりも英語ができるようになる確率が高い。しかし、小学校での早期英語教育の効果の有無は、未検証。
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日本の英語教育についての批評本。日本人の英語力に関するあらゆる説について統計的に分析している。
全体に通して言える結論は日本の英語教育は過熱しており、ビジネスの的になりやすいということ。確かにグローバル化が劇的に進むにつれて、英語の必要性は必然的にん高まるが、国によってその必要度合いは違う。発展途上国を筆頭に学問を母語で学ぶことができず、仕方なく英語で代用している国と母語で困ることがほとんどない日本では背景が全く違う。故に日本において英語が堪能であるから「年収が上がる」「学力が上がる」といった相関関係は疑わしい。