紙の本
憲法とは何なのかを考える手がかりになります。
2015/03/27 11:19
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
憲法とは何か、ということを私たちに語りかけてくれる憲法学者としては、樋口陽一さんや、先日亡くなられた奥平康弘さんなどがいらっしゃいました。本書は、社会学者である大澤真幸さんと、若手の憲法学者である木村草太さんが、対話という形を通して、「法の支配」ということを「空気の支配」ということと対比して説明したり、ヘイトスピーチ化する日本の問題点を考えてみたり、議会でなぜ実りある議論がなされないのかを先に出た「空気の支配」ということばを使って考えてみたりしながら、憲法を私たちのものにするために私たちが真剣に考えるきっかけを与えてくれます。
紙の本
参考になるところが多すぎて
2018/05/25 20:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
『憲法の条件』は社会学者の大澤真幸と憲法学者の木村草太の対談です。
今の社会について、憲法論議について、示唆に富む本です。
参考になるところが多すぎて、引用しきれないぐらい。
ひとつだけ選ぶと
もともと多くの日本人にとって、憲法九条の核になっていたのは、新しい世界の理念をつくるということです。
そう、自分の国だけ平和でいましょうというのが平和憲法ではありませんよね。
投稿元:
レビューを見る
社会学者の大澤氏と憲法学者の木村氏の対談本。
内容は興味深いが、対談形式だと、少し理解しにくい。
個人的には、木村先生単独の作品のほうが、ギャグや小ネタが入っていて面白い。
投稿元:
レビューを見る
対談本という性質上、ある事柄について体系的な知識を学べるというようなものではなかったが、憲法学者と社会学者が、特定のテーマについてそれぞれの専門分野からの知見を述べ合っており、刺激的な内容だった。政治や法律に関心のある人なら何かしらの考えるヒントが得られるはず。
個人的にこれはと思った部分を以下に引用する。
木村「憲法研究者ではない一般の人から見れば、憲法というのは国の物語の象徴としての役割のほうが重要なのではないかと思います。それがどのよに誕生したのかという物語と不可分に結び付いている。……ところが、日本国憲法の場合には、大多数の国民が共有できるような、よりどころとしての具体的な歴史的物語がない」(pp58-60)
大澤「日本国憲法の原点には、敗戦がある。それは、敗戦から始まる物語にならざるを得ない。ところが、先ほど述べたように敗戦を否認しているために、物語にならないのです」(p61)
木村「表現の自由が萎縮しやすいのは、表現の自由には、それ自体に対価がないからということになりますね。……しかしながら、人々の発する情報が自由に流通することによって、社会全体のレベルでは利益を得られます。個人が表現するということは、自分の利益ではなく、社会の利益を実現するための贈与としての性質があり、そこに社会的価値がある」(pp86)
木村「……ヘイトスピーチにはグノーシスのようなものも感じます。……グノーシスをどう理解するのかというのは、それ自体すごく難しいのでしょうが、私が注目しているのは、「現に流通している標準的な世界観はすべて間違っているのであって、自分たちだけが真理を知っているのだ」という一種の秘教主義、選民思想的な部分です」(pp110-111)
木村「〔集団的自衛権の〕賛成派は、アメリカに見捨てられたら日本はやっていけないから……集団的自衛権をもとうという。それに対して反対派は、集団的自衛権を認めたら戦争に巻き込まれるからだめだという。激しく対立しているようでいて、いずれの議論も利己的である点は同じです。どちらも国際公共価値には目を向けていないわけです」(p171)
大澤「「日本の国益のために」という論理は、本当はまだ、理性の私的利用の範囲なんです。……究極的には、国の振る舞いも、理性の公共的使用という観点から考えるべきだと思っています」(p180)
木村「〔命令委任の禁止について〕そもそも何のために独立して判断しなければならないのかというと、単なる地域の代表としてではなく、全国民の代表として、日本全体の公共的な価値を実現するためです。そうした地点から議論しなければのらないのに、それがないままに命令委任から解放されてしまうと、国会内論理みたいなものに突き動かされてしまう」(p201)
大澤「理性を公共的に使用せよ、といったところで、何が公共的な判断なのかは本当はわからないわけです。公共的に使用されたりせいがどう判断するかは、結局、不可知のままだ。とすれば、そもそも、公共的な判断などというものはないのだ、と開き直ってはいけない。内容は定かでなくても、公共的な判断は必ずある、と想定することが重要です」(p261)
投稿元:
レビューを見る
冒頭、「集団的自衛権は違憲です」とはっきり書かれていてNHK出版やるねと思った。後半の議会についての批評が特に面白かった。PTAに始まり、なぜ議会が機能しないのか、ユダヤ人は全員一致を疑う、一票の格差問題が田舎が損する得するの話になるのはおかしい、合理的な根拠があれば不平等は認められる、などまさに最近、会社の会議で全員一致が求められて悪い会議だといっていた人がいたのでとても良いテキストになった。読みたい本もさらに増えた。今年読んで良かった本ベスト入り。
投稿元:
レビューを見る
社会学者大澤真幸先生と憲法学者木村草太先生の対談をまとめたもの。
そもそも、法の支配とは何か?
法に書かれているものは絶対神の言葉であり妥協が存在しないイスラム教。法の上に皇帝が君臨し、法を支配する中国。そして、人間が法を作り、その法に人間が支配されるという形での法の支配。
日本国憲法の成立、意義、そして国民感情の成り立ちなど鋭い切り口で明快に分析される。
具体的各論についても、非常に明解である。集団的自衛権はなぜ違憲か、そしてあるいみ明確に違憲である自衛隊の存在と、生存権の関係。法解釈についての議論など、非常に面白く、また気づかされることが多い。
憲法について考えるということだけでなく、法というものはなにか?法を運用するということはどういうことかなど、法治国家で生活し、法律を使用して仕事をしている私たちには非常に参考になる本だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
社会学者大澤真幸さんと憲法学者木村草太さんの対談で、新書ということもあり、ライトな語り口、難解なところなど全く無く、余り本を読まない人でもすんなりと一気に読めるだろう。
大澤さんのいつもの心理学的な視点や独特のキーワードも冴えており、本書では特に中核となる「法の支配/人の支配」という二項対立を提起し、一貫して言及される。
日本人にはいまだに「法の支配」という近代社会の原則がなじめない。「法」を外部からの介入としてしか感じ取れないのだ。その上、戦争の責任者を結局うやむやにして過ごしてしまった点、ドイツとは真逆である。日本人は自らが引き起こした戦争を、あたかも天災か何かのように、まるで自分たちが被害者であるかのようにイメージして、そのままの心情を保持してきた。
戦後はアメリカにひたすら思いを寄せ、中国が経済的に台頭してくると、アメリカからの「愛」を取られまいと、ますます必死に媚を売る。すでに沖縄等の米軍基地や「思いやり予算」などという法外なもので徹底的に服従してきたのに。
最近無理矢理成立された安保法制は、木村草太氏が断言するように、間違いなく「違憲」であり、しかも安倍晋三やその一派が繰り返してきた妙な「例示」や説明がいかに馬鹿馬鹿しくデタラメであるか、本書では明確に語られている。
ここで指摘されているように、「集団的自衛権」はその本質が理解されることも無く(もしかしたら安倍自身も全然理解していない)、「日本を守るため」という不可解な名目で自公政権が打ち出してきた。勘違いやデタラメばかりの彼らの説明を、真に受けて信じてしまった国民がいるというのが情けない。
他にもヘイトスピーチやネトウヨについての分析が面白かった。彼らは「国に愛されていない」と感じ、「国に愛してもらいたい」と必死なのである。つまり彼らの場合愛国者といっても「国に愛されたい者」の意味なのだ。
学術的な論述を好む私としては、この小冊子ではちょっと物足りない部分もあるものの、万人向けのわかりやすい本として、本書はおすすめできそうだ。
ただし、「国家的な緊急事態への対処を決めておくべき」という議論の部分は、いま安倍自民党が目指している改憲=緊急事態法案の中身とはどうやら異質なもののようだが、そのへんは本書では詳細に突っ込まれていない。それもそのはず、これは昨年(2015年)1月に刊行された本なのである。
投稿元:
レビューを見る
例えを多用した議論の積み重ねがわかりやすく、一気に読めた。
哲学から日本国憲法へのアプローチは興味深い。ルソーやカントなどからの引用も勉強になった。
「選挙権は権利というより公務」という考え方にはなるほど、そうだよなと納得。
「国家緊急権」についても理解が深まった。
投稿元:
レビューを見る
憲法について騒がれることが多くなったので学びのために手に取った本。
集団的自衛権、憲法9条といった世の中で騒がれているようなポイントだけではなく、憲法そのものについての基本的な考え方を学ぶことができる。
ただ、法に対しての人の解釈が無数あるように、法そのものに対しての基本的な考え方も他にも多くあるのだろうという予感はしている。
これはあくまで一つの意見ということで解釈している。特に初心者の私にとっては最初の一歩の本なので、これがすべてだと真に受けてしまうのは危ないなと。
ただ個人的に大いに共感できる意見が多かったのも確かだ。
憲法9条はどこの国にもない誇れるものだと思う。
例えば1000年たって人類が戦争で滅びかけていたとして、人は思うだろう。
なぜあの時人類は平和を求めようとしなかったのだろうか?なぜ自国の、自民族の利益を追い求め、争い、傷つけあったのだろうか?と思うだろう。
その時に日本国憲法第9条が発見されば、やはり人類の中には良識がある者もいた。と思うだろう。
未来のために残したい、そんな憲法なのだと思う。
もちろん各国が自国中心の利益を求める中、この憲法で自国を守れるのか?本当に大丈夫なのか?疑問はある。
が、日本だからこそ持てたこの独自の憲法。安易な道を選ぶ前に、しっかりとした議論を行うことは強く感じる。
投稿元:
レビューを見る
2015年刊。◆全体を通読した読後感は、著者とは憲法の捉え方(説明の手法?)が違うかもしれない(勿論結論に明瞭な反対箇所は少ないし、どうしようもないレベルの憲法論とは異質と理解可能なのだが)という印象。例えば、木村≒長谷部恭男の法の支配論、広義の国際法に依拠しすぎな説明等。◆ただ、その論の前提たる疑問、例えば①熟議の場、討論の場としての議会制度自体の形骸化への懸念は尤もだし、②集団的自衛権容認立法=片思い米国へのラブレター=この目的達成に有用ではない等はフムフムと。◆なお、著者の北岡伸一評には苦笑。
投稿元:
レビューを見る
木村草太の対論を連読。今回は、社会学者・大澤真幸が相手でしたが、二人の学者によって非常に高尚なレベルでの憲法論が展開されているのはわかるにしても、それが私たちにどうつながっているのか、他人ごとに思えてしまうのでは、今の憲法との関係と同じになってしまいます。
二人には、それを自分ごとと感じさせる工夫を、私たちもそれを受けとめる努力が必要だと思います。
投稿元:
レビューを見る
買ってから長いこと放置プレーしてしまった一冊。しかし、読み始めたらあっという間に読了。
日本人ってやはり憲法に対しての意識が二極化してるだろうなぁ。朴も正直なことを言ったら興味深いないほうだったけど、これを読んで実状がわかった気がする。集団的自衛権、ヘイトスピーチとかとか。でも、同じ主題でも語る人の立場で見解が180度違うのが興味深い。だから、こういうことはちゃんと多面的に捉えた上で自分の考えを持つことが大事。
投稿元:
レビューを見る
気鋭の若手憲法学者と「不可能性の時代」等の概念で著名な社会学者の対談。ヘイトスピーチや集団的自衛権といった話題について、リベラル方面からの問題提起を行う。憲法は、もちろんひとつの国民国家において国民が政府と取り交わした約束ではあるが、現行憲法の前文にも「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という文言があるように、一国の利益のみに依るものではなく、本書で挙げられる「理性の公共的使用」や「国際公共価値」などといった理念に基づくべきなのだろう。
投稿元:
レビューを見る
いろんなことが違憲だ違憲だ、とあちこちで姦しいが、憲法とはそもそもなんだ?
本書の結論を先に言うと、それは「他者との共存のためにあるもの」だ。
法的安定性、なんていう言葉もちょっとしたブームになったように、法の支配はあきらかに揺らいでいる。
日本人にとって、法とは職員室から駆けつけてくる先生のようなものだ、という例えがあった。
理由はよくわからないけど先生が駆けつけてきてダメだというからダメなんだろう、という子ども。職員室にご注進にいく子どももいれば、職員の側から飛び出してくることもある。
つまり法とは、なんだかわからないけど外部からやってくるもの。エイリアン。魔法。
誤解してはいけないのは、「法の支配」といったときには、善き法もあれば悪い法もあるということだ。けれど、それぞれは絶対悪か? 絶対正義か?
集団的自衛権の行使について。ある世論調査では、集団的自衛権行使容認の賛否への反対が58%。反対のうち24%が、限定した内容にとどめるべきだ、とも答えている。反対なのに、限定ならいい。
強い酒であるウォッカが禁止されていたとしよう。ウォッカを解禁したいが世論がうるさい。そこで極端に薄い水割りを出す。ほら、こんなに薄いんだ、これなら飲めるでしょう、とウォッカを解禁に導く。しかし実際にウォッカが流通すれば、ストレートのウォッカばかりが出てくる。反対だけど限定ならいい、なんてのは、このウォッカ理論にまかれてしまう。
いろんなことが、薄いウォッカ、のように緊張感をなくす方向で議論され(いや、議論さえされないか?)ていく。このことを極めてまずいと思わなければならない。
とはいえ、憲法は他者との共存のため、言い換えれば公共のためにある、のだと考えれば、ウォッカを解禁したい人と、させたくない人も共存させる働きが必要になる。そういう意味では、変えなければならないところもあるだろう。
空気ばかり読む前に読んでもいい本。