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刺戟的なタイトルですね笑。
書名から、国に反旗を翻した市町村を紹介した内容に思われるかもしれません。
もちろん、そういう市町村もあります。
ただ、結論から云うと、その肝は「自分たちのまちのことを、自分たちの頭で考え、自分たちのまちに必要なことを、自分たちでできる範囲でやった」というところにあるでしょう。
地方版総合戦略の策定をコンサルタントにほぼ丸投げしている市町村も多いと報道されています。
本書ではそれとは対照的に、自らの足で立たんとする市町村が数多く紹介されていて参考になりますし、何より気持ちが奮い立ちます。
たとえば、いまでは「奇跡の村」とも称される長野県下條村(人口約4,000人)は1992年から役場職員の意識改革に乗り出しました。
当時としては常識はずれともいえる職員の民間企業への研修など役場改革を断行。
ピーク時59人いた職員を37人まで減らし、職員をプロ集団に育て上げました。
役場の奮闘ぶりに住民も呼応し、村が提案した建設資材支給事業を受け入れ、小規模の道路や農道、水路の施工を住民自ら手掛けるようになりました。
また、下水道事業は、国から手厚い補助が出る公共下水道や農業集落排水事業を止め、トータルコストの安い合併浄化槽に一本化しました。
そうして捻出した財源を活用して、子育て世代専用の村営住宅の建設や子どもの医療費無料化などの少子化対策に充てました。
下條村に学べと、職員を研修のため同村に派遣したのは、財政難にあえいでいた福島県泉崎村(人口約6,600人)です。
かつてイケイケの拡大路線で住宅分譲地や工業団地、さらには大規模公園墓地まで造成したものの、バブル崩壊で裏目に出て事実上の財政破綻に陥りました。
そのころ、新たに就任した小林村長は、村の財政状況を聞いて絶句したそうです。
小林村長は福島県庁に日参し、財政支援を取り付けて低利融資を受け、農協からの高利貸し付けの返済に充てました。
一方で、「自主的財政再建計画」を策定し、徹底的な歳出削減を断行。
さらには分譲地の販売促進へ小林村長を筆頭に議員や職員、住民が東京の銀座で分譲地の宣伝ビラを配って歩きました。
これとは別に、小林村長は泉崎村から約200キロ離れた東京・銀座まで歩く「財政再建行脚」を行い、分譲地のPRをしたというのですからすごいです。
平成の大合併が進められた当時、いち早く「不参加」を表明し、単独自治体の道を選択したことで有名になったのが福島県矢祭町(人口約6200人)です。
その矢祭町にはもともと図書館がなく、書籍を扱う店舗はコンビニエンスストアだけでした。
町民アンケートでも図書館開設を望む声が多数寄せられていました。
老朽化した町の柔剣道場を改築して図書館にすることまでは決まりましたが、財源不足で肝心の蔵書の手当てがつきません。
職員の一人が寄贈本による図書館づくりを発案し、新聞で大きく報じられたこともあって全国から大量の本が届きました。
運営も住民ボランティアが運営委員会を組織して担うなど常識を超えていました。
一方で、専門家からは「こんなでたらめな図書館は図書館として認められない」と冷ややかな視線にさらされました。
ところが、2007年には先進的な活動をしている図書館に贈られる「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、専門家も黙らざるを得なくなったようです。
いまでは「世界一のクラゲ水族館」として人気を博す山形県鶴岡市(人口約130,000人)の加茂水族館の「復活劇」は感動を呼びます。
1930年と85年も前に開設された加茂水族館は、1967年に民間に売却されます。
ところが、運営する民間会社の経営不振から水族館は閉館の憂き目に。
残された職員4人で地元の人からの募金を元手に細々と魚や動物の世話をすることになりました。
別の会社がオーナーとなって再出発しましたが、周辺には立派な水族館が次々にオープンし、加茂水族館は「落ちこぼれ水族館」という不名誉な称号を手にすることになりました。
入館者数が過去最低を更新する中、企画展の準備をしていた飼育員がサンゴの水槽から小さなサカサクラゲが泳ぎだすのを偶然発見しました。
エサをやると500円玉くらいの大きさに成長したので、それを展示したところ、お客さんは大喜び。
これに気をよくしてクラゲの飼育と繁殖方法を確立させ、今では51種類ものクラゲを展示し、全国的な話題を集める水族館となりました。
まるでドラマのような成功物語ですが、飼育員たちのあきらめない気持ちが成功を導いたといえましょう。
こんな例が豊富に紹介されており、読み物としても実に面白いです。
また、著者が独自にまとめた全市町村の「自律度」ランキングも大いに参考になります。
肝心なのは、優秀な誰かに解決策を考えてもらう「タリキノミクス」ではなく、自力で知恵を出し合って答えを出していく「ジリキノミクス」という著者の主張に共感します。
最後に、本レビューの事例の最初に紹介した長野県下條村を長年牽引してきた伊藤喜平村長の印象的な言葉を引き写して、いつもよりだいぶん長くなったレビューを締めたいと思います。
「国や都道府県の果たす役割は重要だが、同時に各自治体が自らの体質を強くしなければいけない。自治体の体質を強くできるのは、住民であり、住民の責任でもある。是々非々の姿勢で自治に参加し、地域の力を引き出していくべきだ」
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まず、まえがきで、国の役人による失敗だらけの過疎対策の焼き直しであるアベノミクスでは地方再生はできないと著者は言い切っている。
そして、第1章 お任せ民主主義「タリキノミクス」が日本をダメにした で、そのメカニズムをきちんと説明している。
自治体は「分譲マンション」の統治しステてムと比較して、論じるところが解りやすくて面白い説得の仕方だ。
第2章 納税者が知るべき「自律度」ランキング ということで、独自に全市町村をランキングしている。「財政自律度」「住民1人当たりの借金残高」「税の納付立」「自治体選挙における投票率」
第3章は後悔先に立たず「タリキノミクス」の落とし穴である。
そのなかのひとつで、「橋下ポピュリズム論」の誤解【「放蕩型」タリキノミクス】大阪市 ということで、・大阪市民の厚遇とハコモノ充実度、・教育環境の劣悪化で学力・体力低迷、・溜まった既得権の洗い直し、という項目をたて、ステレオタイプ化した橋下批判の誤解を解く説明をいていた。
そして第4章で実録「ジリキノミクス」で実現した豊かな暮らし ということで、著者の真骨頂、四半世紀に亘って地方を歩き回った実績が、地元目線で、きちんと分析された事柄が紹介されている。
続いて、第5章「ローカル・アベノミクス」に騙されるな、第6章地方再生の特効薬とは何か で、すばらしい地道な実践が紹介されている。
最後にあとがきで「地域主権」と「住民自治への道 ということで、大量生産大量消費型の資本主義から、小ロットで多品種な自律的な社会経済システムへの地道な移行の重要性を示し筆をおいておられます。
本のなかで紹介のあった「島根県中山間地域研究センター」が出版した「地域づくり虎の巻」を読みたいのと、「地元の作り直し」がもっともっと普及することを祈っております。
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どこの人も書いているようなことばかり。
あまり目新しく、眼からウロコ的な内容は無かった。
また、すべての自治体・すべての自治体職員を指して批判するような「決めつけ」口調には反論しもっと勉強してもらいたい。そんな自治体、そんな職員ばかりでは無いことを。
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国に頼らずに自主財源で取り組んでいる事例、そうではない事例を紹介している。
失敗例は一律で補助金に頼っているからという論理なので、そこまで学びにはならなかった。
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タリキノミクスよりジリキノミクスだ、という言葉遊びはどうにも受け付けないが、ようするに国に頼るな、地方は自力でこそよみがえる、というお話。
ここでいう自力は、何も財政とかだけを指すわけではない。ようするに「自治」である。自治というのは、住民が参加するということだ。
役人と政治かと住民は三竦みだったはずが、住民の急激な弱体化(無関心化とも言う)によってバランスが崩れて、役人が全部仕切るようになった。そうなると、解決策の選定を任せたはずが、何故か課題の抽出までしてきて、住民との間にズレが起こる。
って書くと、役人バッシングに見えるかもしれない。だが本書が一番問題視しているのは「おまかせ民主主義」の主役たる住民だ。とにかく任す。任して文句をいう。このあたりの構造は鷲田清一の『しんがりの思想』にジットリした実態とともに語られていて、そちらのほうがより問題の深刻さ(と、それへの無関心さ)がわかる。
本書の大部分は、いくつかの指標のベストワースト自治体ランキングと、ダメな自治体の例と、うまくいった自治体の例で占められている。これは正直いって全然おもしろくない。ダメな例はもう見飽きたし、ランキングで一喜一憂するような状態でもあるまい。よい例を真似るなら、「ソフトウェア」や「ハードウェア」を真似るのではなく、まさに「国に頼るからバカを見る」という姿勢である。
その姿勢には「崖っぷち」と「退路断ち切り」と「伝統・風土型」がある。真似をするならそういう姿勢、それで、出来れば伝統・風土型がよいと思うなあ。市町村にかぎらず、自治をもっと住民の手に取り戻さねばならない! と力んでみるが、自治会には顔を出さないのだ。困ったなあ。