紙の本
わかりやすい
2021/07/04 09:39
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後の日本の問題点がわかりやすく整理されていて、よかったです。アメリカとの関係やねじれなど、興味深く読むことができました。
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「著者の集大成」などと思いたくないけど、「戦後」と「今に対する危機感」が強く伝わってくる。読み応え十分。
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加藤さんには『敗戦後論』という本がある。細かくは読んでいないが、今度の戦争で日本は加害責任を問われていて、それは否定しようのない事実だが、それに抵抗を示す日本人が多いのは、日本人犠牲者をまず悼むということをしていないからではないかという論であった気がする。本書はその『敗戦後論』での弱点を克服しようとしたものである。結論から言えば、いわゆる平和憲法、第9条ができたときの理念、精神を生かすには、憲法を左に改正し、国際主義に立ってやるべきだということになろう。日本国憲法は戦後世界が、冷戦に到るほんの数年の平和の理念の一つの象徴、結晶であり、加藤さんは、その精神をもう一度とりもどすべきだというのである。ぼくも読んで感銘を受けたが、加藤さんは矢部浩治さんの『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』の中の、フィリピンがアメリカの基地をすべて撤去した精神にならうべきだと考えている。それは対米従属をやめ、アメリカとの間に新たな関係をつくることである。この数年日本の対米従属ということは人々の常識化しつつあるが、安倍首相は人々の批判を意に介せず、むしろ強化をもくろんでいるようだ。本書でぼくがもう一つ感動したのは、アメリカの中で、戦後まもなく、原発を投下したことに対し、各界から反省が起こったことである。日本への原爆投下は本土決戦での犠牲を少なくするためであるという論がアメリカでは固定しているが、それは上のような反省論を封じこめるためであった。原爆投下はあくまでアメリカが、日本敗戦後のソ連に対抗して行われたものであり、戦争犯罪の一つであることは否定できない。それは、連合国の戦争理念を打ち砕くものであった。戦勝70年を祝う行事が中国やソ連で行われたが、良識があるなら、アメリカの原爆投下やシベリア抑留に目を向けるべきであった。600頁もの本であるが、いろいろ考えさせられることの多い本であった。
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敗戦国に共通した敗戦後の心理文化的推移(シベルブッシュ) 夢の国、目覚め、不純な勝利、勝者の精神、復讐と報復、再生、勝者からの模倣
太平洋憲章 1941/8 英米が戦争遂行のために発明した認識上の一大武器、第一次大戦後のウィルソンの平和14箇条を踏襲
枢軸国 ローマとベルリンが東経12度、13度と近かった ローマベルリン枢軸
国際連盟からの脱退除名は日本ドイツイタリアとソ連 スターリン自身が4国同盟に乗り気だったこともある
1943/11 大東亜会議、大東亜共同宣言 重光葵が準備 当時中華民国大使
ベルサイユ会議での日本 サイレント・パートナー
人種差別撤廃条項の提案をした
1945/9/18 朝日新聞 48時間発行停止 兵士の非行記事をたびたび載せたことと、米国の原爆投下にふれた有力政治家鳩山一郎の談話を掲載した
米国による原子爆弾の使用と無辜の国民殺傷つまり国内200都市無差別爆撃が、病院船攻撃や毒ガス使用以上の国際法違反、戦争犯罪であると鳩山は述べた
8/10の日本政府の対米非難声明とまったく同じ論理
原爆投下に関して、日本では長い間、うらみでも赦しでもなく、批判を示すことが投下した者に対する積極的なコミットを意味するという観点が示されなかった
下山判決 広島と長崎の被爆者5名が国を相手に損害賠償(原爆投下による精神的損害に対する慰謝料と米国の原爆投下を国際法違反と認定することをもとめて訴えた
1963 結審 原告の請求は棄却。しかし米軍による広島長崎への原爆投下は国際法に違反するとし、被爆者個人は損害賠償請求権を持たないが、原爆被害における国の責任は大きいと認定
こうしようと言える日本 ドーア
矢部宏治 日本はなぜ基地と原発をやめられないのか
フィリピン マルコス政権を打倒した後の憲法改正1987で、米軍基地の撤廃を定める条項を盛り込み、憲法をよりどころにして、主権回復を成就
近年フィリピンは対中国の領土紛争を視野に米国と防衛条約 対等の関係
1991米比軍事基地協定が満了した後、フィリピン国内に外国軍事基地は許可されない
アメリカ交渉団団長 リチャード・アーミテージ
フィリピン マングラプス外相
フィリピンの米軍基地はフィリピンを守るためのものではないことがわかった
1966 マレーシアとのサバの領有権をめぐっての衝突 両国との国交断裂にまで発展した時、マレーシアの同盟国の英国は艦船を派遣したが、フィリピンの同盟国のアメリカはなにもせず
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はじめに-戦後が剥げかかってきた
第1部 対米従属とねじれ
第2部 世界戦争とは何か
第3部 原子爆弾と戦後の起源
第4部 戦後日本の構造
第5部 ではどうすればよいのか
おわりに-新しい戦後へ
新書でタイトルに「入門」とあるのに大変厚みのある本で、これを読んだだけで戦後が分かる!という類の本ではないが
戦後政治を時系列で理解するための「索引」として手元に置いておきたい。
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「基地撤去を憲法九条に書き込む、そのことによって日米安保条約、日米地位協定の法的拘束を乗り越え、米国との交渉に臨み、基地撤去を実現するという、フィリピンのやり方に手本をとる」ことは素晴らしいことだと思います。先例があることですから、ぜひ実現してほしいです。そして、日本の平和を、自分に都合の良い一国主義から世界の万人が認める国連中心主義へと変わっていってほしい。そのためには、過去にアジアの国々に行ってきたことをしっかり認め、彼の国々の人々に謝罪しましょう。それが、われわれの世代の責務だと思う。
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見渡すとは希望を得ることだ
ただの概説書にあらず。
混迷の時代で考えるための超一級の思想書!
【神戸市外国語大学 図書館蔵書検索システム(所蔵詳細)へ】
https://www.lib.city.kobe.jp/opac/opacs/find_detailbook?kobeid=CT%3A7200183286&mode=one_line&pvolid=PV%3A7200456623&type=CtlgBook
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憲法論争というととかく護憲=左翼、売国/改憲=右翼、愛国みたいな単純な構図で語られがちだが、そのいっぽうで右翼から支持されている現政権による政策が、ことごとく対米追従のその実は売国的なものだったりもする。ものごとはなにごとも単純に分けて考えられるものではなく、ましてや思想が絡むこととなればなおさらだ。本作は新書ながら単行本なみに分厚い大著だが、そもそも憲法をめぐる立ち位置から始まって、今後の憲法のあるべき姿に著者なりの結論を出すなど、「戦後入門」と題してはいるが、日本国憲法にかんする入門書としても非常に最適な1冊。とくに現在は改憲が国会レヴェルで取沙汰されるようになっており、全国民は1度は眼を通しておく必要があるのではないか。さて、冒頭で書いたことであるが、たしかにわたし自身もむろん例外があることを知っていたとはいえ、なんとなく冒頭のような感じで理解していたため、本作で叮嚀に背景などが解き明かされているのを読むと、眼からウロコが出るような体験も多かった。原爆にかんする言及も白眉で、当時の大統領がどういう認識であったかなど、単純なことさえ教科書ではあまり教わらないので、一言一句に新鮮な驚きがあった。そして、最後には著者独自の改憲案が登場する。わたし自身としては100%同意できるものではないが、作中で触れられていた問題点など要諦は押さえられており、なかなか考えさせられる。図書館で借りたため、じっくり読み解くことができなかった点は残念であったが、とても身になる読書をした実感がある。
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これまで読んだ中で、最も分厚い新書かもしれない。著者は、これを高校生向けに書いたと巻末で述べている。確かに比較的平易な語調で綴られるため、読み進めることは可能だ。そして、現在我々が抱えている、対米関係、憲法9条、基地問題、核の問題を、第1次世界大戦前後より背景を概説しながらひも解いていく。原爆投下の責任に関しての論考はスリリングで、これまで教科書等では決して読めなかったことだ。確かに高校生に勧めたい、というのは頷ける。筆者は説く、問題解決の糸口は国際主義と9条の左折の改憲にあると。後半は、どうすればよいか、ということに力点が置かれ、一気に読み進めてしまった。シリア問題などを見ると、筆者の夢見る国際主義と、現実の国際社会のリアリティの中で、どの程度実現可能性があるのか、という疑問も生じる。しかし、具体的な策を提示する辺りは、筆者の誠実さなのだろう。一読の価値はあり、かつ厚み以上の内容を伴った著作だと思う。
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所謂“戦後”なるものは、どのように形成され、進展して来たのであろうか?色々と考えるべきポイントや材料は在る…本書は、確かに分厚い新書だが「視るだけで疲れる…」ような代物ではなく、「普通に読み易い本」で取っ付き易い…価値在る一冊だと思う…
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600頁を超える大部な新書。
扱うテーマは濃いが、語り口は平易で、大変読みやすい。
世界戦争の持つ意味(本来の、「もたざる国、ならず者国家v.s.国際秩序の擁護者」の構図から、「全体主義、ファシズムv.s.自由民主主義」という物語の「再成形」)、原爆が持った大きな歴史的意味や、米国による原爆投下を批判できない日本の問題(原爆慰霊碑に見られるような「絶対的(理念的)平和主義」が現実に即していないこと)、吉田ドクトリンを基軸とした戦後日本の歩み(親米・軽武装・経済中心主義による、対米従属の意識の緩和策)、未だくすぶり続ける駐留米軍基地や核兵器の問題など、第一次世界大戦以降から現代に至るまで、緻密な歴史分析と問題提起を行う。
そして、これらの歴史から生じた「ねじれ」(著者は折に触れてこの言葉を使っているが、かなり多義的に用いられている感がある)、日本の対米従属や核廃絶といった問題を解決するための、日本の唯一のあり得べき道として著者が提案するのが、国際主義に立脚した国連中心主義と、憲法9条の強化(改憲により、国連中心主義や非核三原則、外国軍基地撤廃等を宣言する)である。
近時の報道やネットコミュニティ、あるいは街頭において散見されるヘイトスピーチや「東アジア外交の重視⇒左翼、売国」といったレッテル張りがいかに空虚で、それによるマイナス作用を見ていないものか、あるいは、これまで日本でよく語られてきた「戦争は悪、自衛隊は悪、核兵器は悪、平和を守れ」といった(そのように主張するだけの)理想主義的言説が、いかに現実と遊離し、日本の抱える諸問題を解決に導いてこなかったかが、よくわかるはずである。
著者の結論に乗るにせよ反るにせよ、今後の日本のより良い、現実的に可能な未来を考えるに当たって、必読の書。
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全600ページ余りの大作であるが、意外と読みやすく引き込まれる。歴史に詳しくなく、また特に近現代史については子供並みの知識しか持ってないので、明確な感想は持てないが、まずは世界戦争の評価について。これまでに知っていた事と当然ではあるが裏もあるわけである。戦争を始めるのにも誰もが納得できる理由が必要であるし、戦争を終らせる時に戦後の関係を支配するための策略が作られることもある。特に第二次大戦は米国の原爆の使用を正当化するための策略を練り、明らかに大量破壊兵器であるにもかかわらず、別枠におかれている矛盾。戦後日本の構造として、憲法9条の理念は理想と懲罰が含まれていたが、何よりも国民が最大の支持基盤であり、ここまで継続してきた。そして著者によると国連の理想実現と結びつく形で、世界にモラルリーダーシップを発揮することが期待されるものである。今後の方法として、フィリピンが憲法を変えることで米軍基地を撤去できたことを参考。現在の安倍政権は国家主義と対米従属で破綻は目に見えている。最終的には憲法9条を国連中心の国際協調主義で左折に変えることが著者の主張である。
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日米関係、憲法9条、核問題、基地問題についての解決方法を提示してくれている。しかしこの解決方法は理念のようなもので、ここに至るまでのプロセスはどうしたら良いのだろうかと思った。
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新書としては大振りだが、終戦以降の日本が置かれた立場を解説し今後の指針まで論ずる読みごたえたっぷりの一冊。原子爆弾と憲法九条に関する記述が丁寧であり、核兵器廃絶の運動や武力的な脅威を考える上で示唆に富む。一見簡素に思えるタイトルは、世界平和を唱えるだけでなく熟慮し行動することの重要さを強く訴える。
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新書と思えない分厚さだが内容も非常に充実。
戦後の「ねじれ」と対米従属に至る過程と問題点や提案について世界大戦・原爆・憲法・安保など様々な内容を多くの資料を基に丁寧に解説されており、また、タブー視されている事案もしっかり取り上げられている。
自分を含め戦後の時代を肌で感じたことのない世代にはお勧めの良書。
※第三部で引用されているSF作家G・オーウェルの新聞への寄稿文はかなり衝撃的。1945年時点でその後の冷戦構造や核兵器をめぐる世界の動きを予言するような内容。