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萬寿生さんのレビュー一覧

投稿者:萬寿生

784 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本日本の歴史をよみなおす

2006/01/01 19:32

百姓=農民ではない。文字から見ればあたりまえ!。これまでの日本史では無視。

27人中、25人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 百姓=農民ではない。文字から見ればこのあたりまえのことが、これまでの日本史のなかでは無視されていた。日本は古代から海で隔離されて孤立した、農耕社会であったという、歴史の常識が、古文書を丁寧に読み解くことで覆されてきた。百姓とは文字どおり、種々の職業に従事する人々のことだったのである。貧しい水呑み百姓に分類されていた人々が、実は大々的な交易や、各種産業・事業を経営する、裕福な事業家だったのである。また日本列島は周囲を海で隔離された孤島だったのではなく、海や河川を交易路として、海外とも緊密な交易を行ってきていた、貿易立国でもあったのである。しかしこのような見解は、未だに中学高校の日本史の教科書には反映されておらす、学会に認められている見解ではないようである。
 世間や学会の常識となっている思い込みを修正するためには、多大な努力と信念が必要であろう。著者は地道に事実を掘り起こすことで、この道を歩んできた。著者が発見発掘したこのような真実はいずれ学会の主流となるであろう。そのようなことが予感される著作である。

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紙の本古文の読解

2010/09/18 20:06

受験参考書として利用するだけではもったいない本

24人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 小西甚一は、日本中世文学において確固たる研究業績をあげている学者だ(った)〔 『文鏡秘府論考』により日本学士院賞を35歳で受賞。1999年(平成11年)、文化功労者。2007年5月26日、肺炎のため死去、享年91。〕が、この本は高校生のための大学受験参考書である。しかし、知識を詰め込み暗記するための本ではない。日本の古典文学を読み解き理解する方法と大学入試問題の答を導きだす方法とが、並行して同時に組織的体系的に説かれている。受験参考書として利用するだけではもったいない本である。
 通常古語辞典の巻末に付録的に掲載されている、昔の服装や建築などについて初めにその概要が解説されている。昔の生活や風俗を知り、その環境のもとで昔の人がどのような感情・考えをもっていたのかを知り、そのうえでそれらがどのように表現されたのかを理解する。そのように教える順序がよく考えられた構成になっている。文法の枝葉末節に拘泥せず、文意を大胆に掴むで合格点をとる方法と、曖昧な理解では減点される可能性のある文法や現代語訳のための重点項目とが、学習塾の先生が語りかけるような冗談も交えた口語体で解りやすく説明されている。
 長年にわたり入試問題を出題し採点してきた経験が生かされている。研究者と教育者とが一人格のなかで共存している、日本の大学教授としては稀有な存在である。

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紙の本神は妄想である 宗教との決別

2007/10/13 21:24

自らの信じる宗教だけが絶対的に正しく、他の考えは絶滅されるべき悪であるという信念は、恐ろしい

20人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 欧米においては、キリスト教の力は大変なものらしい。この本に書かれているように、これだけ強烈に、神というものは人間の精神・脳が生み出した妄想であると、声高に徹底的に主張しないければならないとは。日本では、創造神・人格神の存在よりも進化論の方が、受け入れられている。現代の日本人には信じられないことだが、欧米では、進化論を否定し神による世界創造を主張する勢力は強力らしい。
 この本で著者は、神による宇宙と生物の設計より、自然淘汰のいう考えがいかにすぐれてるか、創造論者の主張と論理に対し、強力にまさしく理路整然とした論理で反証している。また、論理的に考えるより願望に基づいて考える宗教というものの発生と分化も、人間の心理構造と先史時代の生活環境での経験則を元にした進化論で説明できるのではないかと、提案している。すなわち宗教も科学の研究対象になりうる、宗教の進化は心理学的な副産物であるという説を述べている。
 議論を展開するやり方、論争においていかに論理的に主張するか、という点で、非常に参考になった。どこかおかしいと思っても、信念に凝り固まった人との議論では、相手の矛盾を適切に指摘することができなかったのだが、今後はこれまでよりも説得力のある議論ができそうである。
 本書の要旨は、以下のことであろう。
 『自然現象のなかには、偶然によって生じたとすれば、統計学的にあまりにもありえないようなもの、あまりにも複雑なもの、あまりにも美しいものがある。したがって、この世界を作った神がいるに違いない、という創造論者の「論理」にたいし、「設計は偶然に対する唯一の代案ではない。自然淘汰の方が優れた代案である」というのが、この誤った論理に対する科学の解答である。
 有神論者の答えは、目前の問題を解決するために、いささかの前進ももたらさなかった。事実より願望に基づいて考える傾向が、宗教に見られる。そしてこの「願望本意の思考方法」というものは無視できない。なぜなら、人間の心理は、信念を願望で潤色するという、ほとんど普遍的な傾向をもつからである。私はここで宗教が偶然得られた副産物ー何か有用なものが誤作動した結果ーだという、あくまで一般的な理論を推賞したいと思う。
 宗教の本当の意味で悪い影響の一つは、理解しないままで満足するのが美徳だと教えることなのである。 科学者として、私が原理主義的な宗教を敵視するのは、それが科学的な営為を積極的に堕落させるからである。それは私たちに、おまえは心変わりしてはいけない、知ることが可能な興味深い事柄を知ろうと思ってはいけない、と教える。そして科学を破壊し、知力を減退させるのだ。
 宗教上の信念は、それが宗教上の信念であるという理由だけで尊重されなければならないという原則を受け入れているかぎり、私たちはオサマ・ビン・ラディンや自爆テロ犯が抱いている信念を尊重しないわけにはいかない。ではどうすればいいのか、といえば、こうして力説する必要もないほど自明なことだが、宗教上の信念というものをフリーパスで尊重するという原則を放棄することである。』
 そして、本書執筆の目的は解説にもある通り、現在の世界各地の戦争の原因であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教という一神教の原理主義者の迷妄を打ち破ることであろう。自らの信じる宗教だけが絶対的に正しく、他の考えは絶滅されるべき悪であるという信念は、恐ろしいものである。

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衰えていた頭が活性化する。原理原則を実際の問題に応用して、効用を体験してみること

20人中、18人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 数学の問題を解こうとする、高校生、大学生、教師を対象とした、ハウツウもの。学ぶ人より教える側の人により参考になろう。一般論的、抽象的な表現であるため、一読しただけではよく解らないという印象を受ける人も多いのではないか。逆にそれだからこそ数学だけでなく、社会問題などを考える場合にも応用できる。
 高校生では、実際に数学の問題を解くのに何度か苦労した経験がないと、ここに書かれているノウハウの実効性は感じられないのではないか。逆に教師にとっては、その有効性がすぐに実感できるであろう。
 数はすくないが、数学的感覚がやしなえる面白い例題もある。パズルやクイズ的な問題もあり、衰えていた頭が活性化する。原理原則を実際の問題に応用して、効用を体験してみることである。
 問題解決の過程は以下の事項である。
「第一に問題を理解しなければならない。
第二にデータと未知のものとの関連を見つけなければならない。
関連がすぐにわからなければ補助問題を考えなければならない。
そうして解答の計画をたてなければならない。
第三に計画を実行せよ。
第四にえられた答えを検討せよ。」
第一の過程の詳細事項は下記である。
「問題を理解すること
◇未知のものは何か。与えられているもの(データ)は何か。条件は何か。
◇条件を満足させうるか。条件は未知のものを定めるのに十分であるか。、又は不十分であるか。又は余剰であるか。又は矛盾しているか。
◇図をかけ。適当な記号を導入せよ。
◇条件の部分を分離せよ。それをかき表すことができるか。」
第二の過程にはさらに多くの項目があるが、あとは本書の見返しを読んで下さい。

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紙の本竜樹

2003/01/12 17:56

龍樹

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 龍樹(ナーガールジュナ)には、前々から関心があった。大乗仏教の理論の大成者、空の哲学の完成者として、名前を知っていた。日本では八宗(南都六宗、真言・天台宗)の祖といわれる。鎌倉仏教も天台宗から発展したものといえるから、日本の全仏教の祖とも言える人物である。
 始めに伝記を述べ、次に中観の理論について、それが批判している説一切有部の理論の概要とともに解説し、最後に龍樹の著作の現代語訳を載せている。龍樹の思想を理解するのに、この構成は解り易い。縁起や中道について、これまでの理解とは異なった内容を、知ることができた。原始仏教と大乗仏教とのつながりについても、私にとっては、新しい知見が得られた。相依性というキーワードで、多くの概念が、統一的に説明できることが、解った。新たな知識、理解、智慧を得ることは喜ばしいことである。

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ついつい引き込まれてしまった

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本屋でこの漫画本をついつい立ち読みしてしまった。日本に来た外国人に日本語を教える日本語教師の、抱腹絶倒的な体験を開示した本は、佐々木瑞枝他のものをこれまで読んだことがある。
 日本人だから外国人に日本語を教えられると思っている人は、最近では少なくなってきているだろう。日本に来た外国人に日本語を教えるためには、常日頃は無意識に操っている日本語の使い分けについて、勉強しなおすとともに、教育方法をも学ぶ必要がある。日本人だからというだけで日本語を教えられるほど日本語を理解しているわけではない。この漫画に登場する外国人の質問に的確に回答できる人は、少ないであろう。むしろ。ドナルド・キーン氏など外国人の日本研究者の方が、日本人より日本語や日本文学に詳しい時代である。
 奇妙奇天烈に思える外国人の日本語の使い方と質問に、腹を抱えて笑えるとともに、自分自身の無知さ加減を反省させられる。おもしろおかしい話題とそれを巧みに表現する画とに惹き込まれて、読みとおしてしまった、あ。

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紙の本ミトコンドリアが進化を決めた

2008/05/04 14:02

ミトコンドリアが関係する生命現象を総合的かつ体系的に解説した書

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ミトコンドリアが関係する生命現象を、量子生物学、分子生物学、生化学、細菌学、生理学、病理学、進化論とあらゆる分野から、総合的かつ体系的に解説した書である。細胞内小器官のミトコンドリアが、本来は独立の細菌であり、寄生したか飲み込まれたかして共生し、本来持っていた多くのDNAが核に移動したということが、定説になっている。この事実が、真核生物の発生、多細胞生物の進化、雌雄による両性生殖の発生、および老化とどのような関係があるのか、を解説している。
 最先端の科学は細かく分科しており、同じ生物学の研究者といえども専門分野が違えば、互いの研究内容を理解することも容易ではない。このように幅広い研究分野にわたってそれぞれの内容を理解し、それらの関係を体系化して、これまでに分かったこととあいまいなこと、いろいろな仮説と検証について、素人に理解させるということは、大変な労力である。著者の精進と労苦とに感謝したい。

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全くの素人にも理解できる言語学の入門書

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大学の言語学の授業での教科書として使うことを念頭において書いた、ということである。しかし、専門外の素人にも、言語学がどのような分野の研究をする学問なのか、その全体像が、総合的体系的に理解できる様になっている。言語の特性/類型・言語学の対象/分野、音声学・音韻論、形態論、統語論、意味論、用語論、歴史言語学・言語地理学・社会言語学、について、基本キーワードが解説されていて、言語と言語学の各分野の内容が、解り易く述べられている。これまで文化人類学から、日本学、日本語、さらに言語へと読書の関心が広がってきていたが、まともな言語学の本を読むのは初めてである。入門となっている題名にふさわしく、全くの素人にも理解される構成と著述である。各章末の問題と回答も、理解を深めるのに役立つものばかりであった。

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紙の本もういちど読む山川世界史

2009/12/04 21:02

いまもって懐かしい教科書

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 高校の歴史の教科書は、日本史も世界史も山川出版であった。当時も歴史の教科書の記述について、いろいろと意見や論争があり、問題点の指摘もあったようである。しかしその教科書は高校生から見ても良くできていると思った。大学受験においてもこの教科書と資料集を読むだけで対応できた。いまもって懐かしい教科書である。新聞の書評欄でこの本を知り、読み返す気になった。
 現時点での実際の教科書ととまったくおなじなのかどうか、手元にある1991年検定のものからはかなり改定された内容になっている。アメリカのオバマ大統領まで登場している。
 教科書の記載内容、特に歴史については論争や批判が多いが、やはりよくまとめられていると思う。世界人類の3000年以上の歴史事項をB5版300ページ弱にまとめるのは、大変な作業である。どの事実を記載し、どれを省略するのか、多くの専門家が協力し、全体を見通せる見識のある大家が監修しなければ作成できないものであろう。

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紙の本逝きし世の面影

2008/09/26 20:13

日本文化の見直しも弁証法の合のレベルに到達

14人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 第一章を読みはじめた段階で、この本の趣旨と著者の見識が理解できる。色眼鏡をかけて物事を観察したり、特定の立場から事物を解釈したりはしていない。文化人類学や比較文化論の現時点までの進展を受けて、公平というか、明治以降現在までに失ってしまった、あるいは滅ぼしてしまった、日本の文化を、幕末から明治にかけて日本を訪問した西洋人がどのように感じ、どのように解釈したのか、を素直に再現しようとしている。そこには、当時の西洋や現代日本とは異なる、別な文化社会があった。
 日本近代史は自分達の歴史や文化の否定を繰り返してきた。しかし今や、特定の思想に染まらずに、公平客観的に見直せるようになってきているようだ。弁証法の正反合の合のレベルに到達したようだ。
 そのようた立場から振り返ると、滅ぼしたもの失ったものの多いことと貴重さに、残念な思いがする。そのようのものへの郷愁は深いものの、昔の環境へ戻りたいとも思わないのだが。全体を見渡せば、現代の生活から離れることはできない。生活の便利さ、快適さに差があり過ぎる。一方では、絶滅動植物種への思いと同じく、絶滅させる前に何かやり様があったのでは、という思いも強い。

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紙の本日本奥地紀行

2008/09/19 21:55

てらいも気取りも無い妹宛の手紙文が好ましい

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者は英国地理学会の会員ではあるが、地理学者でも民族学者でもない旅行家の、スコットランドの一中年婦人である。しかし、観察力と文才はなかなかのものである。てらいも気取りも無い妹宛の手紙文が、好ましい。この著作以前にも旅行記を何冊か発行し、再版されていたとのこと。
 明治11年に東京から日光・会津を経由して日本海側から東北地方を北上し、北海道に渡り、門別まで行っている。その過程での観察と印象が、当時の東北・北海道の道路事情や和人と蝦夷人の生活事情、自然や風物の貴重な記録となっている。当時の人々の貧しい暮らしぶりと、なきに等しい道路事情に驚く。その中で暮らす人たちは、好奇心が強く、明るく親切で、礼儀正しい。森林や河川の自然の美しさも格別であったようだ。現代までに失われてしまったこれらのものに、惜別の感情を持たざるをえない。しかし、とても昔に戻りたいとは思えない、蚤と蚊と、貧しい暮らしぶりと交通状況である。外国の一婦人が、そのような環境で良く旅行を続けられたものだと思う。本人の強い意志と世界中を旅行してきた経験と、当時の日本人の人の良さによるものであろうか。
 この本は原著の前半でしかもいくらかの省略があるという。この本には無い後半は、奥地ではなく関西地方の旅行記であるとのこと。

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紙の本進化の存在証明

2010/01/11 16:04

著者の代表作になろう

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者の代表作である「利己的な遺伝子」を、私は読んではいない。しかし、本書はそれにとって代わるものとなるのではなかろうか。すばらしい本である。
 著者は巧みな比喩や類推等を駆使して、科学的真理を素人に理解し易く明快に解説している。地質学、分子遺伝学、進化発生学、分岐系統学、育種学、生物地理学をはじめとする物理学や宇宙論までも含む、あらゆる学問分野の知見を使って、進化が事実であるという状況証拠を積み上げていく。まさしく網羅的、全体的、総合的、系統的に生物進化の事実が解き明かされている。化石などは今や些細な証拠の一つにしかすぎない。グッピーや大腸菌における進化実験には驚いた。進化論も量子論や相対性理論のように、人間の感覚器官では直接確認できなくとも、観察や実験によって証明できる理論までに到達しているのである。
 それでも、ドーキンスに言わせれば、新科学者は犯罪現場に遅れてやって来た探偵のようなものであり、進化という過去の犯罪現場を直接に視ることができなくとも、状況証拠から何が起こったかは確信を持って推定できる、という言い方になる。謙虚なことだ。
 なにしろ、これだけの状況証拠というより事実を提示されても、一神教の創世記を信じている人達は、進化論は生物学者による妄想、捏造であるとして、ホントの証拠を提示しろと、ドーキンスに迫るのだという。先入観があると見ても視えないものである。

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紙の本孔子伝 改版

2008/04/26 11:20

漢学者の語る孔子像とはかなり異質の孔子伝

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「偉大さは、偉大であることをいうだけで証明されるのではない。その偉大さが、そのようにして成就されたかということが、より本質的な問題である。哲人孔子はどのようにしてその社会に生きたのか。孔子はその力とどのように戦ったのか。そして現実に敗れながら、どうして百世の師となることができたのであろうか。」この問いに対する答えを求めるのが、本書の主題である。
 儒とよばれる、古い呪的な儀礼や、葬送などのことにしたがう下層の人たち、その階層に生まれた人であろう孔子の、社会と思想と、その人の生きざまとが、具体的に描かれている。 金文や甲骨文を解読し、中国古代文献から再現される当時の社会環境を背景として、孔子の出自と思想形成の過程を、推察している。漢学者の語る孔子像とはかなり異質の孔子伝である。論語の中のどの文章が生の孔子の発言であり、どの部分に後世の儒者による脚色が加わっているか、説得力のある解析が行われている。

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紙の本日本の禍機

2002/06/09 17:36

日本の禍機

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日露戦争後、日本の軍国主義の擡頭と亡国の危機について、警告していた良識の徒がいた。それは、幾多の日本論を読むなかで、いつしか知ったことである。しかし、その具体的なことは全く知らなかった。ところで、ある本の参考文献として、この本を知ることができた。
 日露戦争の直後に、軍国主義の擡頭、朝鮮や満州・清国への侵略、国際社会での孤立、英米との戦争、敗戦と亡国、を警告していた著作である。その見識、達見に驚く。まさにその後の日本は、ここで警鐘されていた道筋をたどってしまった。日露戦争の予想外の成果に日本人が有頂天になり、他国を侮るようになったためである。また、多くの血を流した代償として、満州の権益を握るのが当然の権利であると思い込み、世界の政治情勢の変化を読み取れなかったためである。目先の利益を追求するを愛国心となし、真の長期的利害を忖度しなかったためである。
 多方面の視点から一つの現象を分析しており、邦人・清国人・米国人それぞれの立場から見ても論理的で公平であり、読みの深さもあり、言っていることに説得力がある。その後の日本の運命を知っているせいかもしれないが。過去にこのような日本人がいたことは、日本の誇りともいえる。著者は米国に留学し、エール大学の教授、名誉教授になった法政史研究家であるという。
 編集者によって、旧漢字を新漢字に書き換えたり、漢語の意味を注記したり、読みやすくする工夫がなされている。しかし、明治時代の著作であり文体が古く、格調高いが、若い人には違和感があるかもしれない。それでも、現在でも十分通用する、日本人として反省すべき指摘点があり、読んでみてもらいたい。

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労作である。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日露戦争から太平洋戦争まで、約十年毎に行われた戦争が、なぜやむを得ないこととして日本国民に容認されたか、その原因を分析した、東大での講義録。労作である。この本に述べられた内容までに書き上げる為には、どれだけの史料を読み、それらの関連性を考察したことであろうか。想像するだけで気がとおくなる。このように克明に、政府、軍部、国民の考えの変化を分析したものはなかったのではないか。
 学校で習う歴史の教科書では、出来事を記述するだけで、それが起きた要因について掘り下げた説明は少ない。さらに高校などの日本史では、明治以降の現代史は授業が年度末になり時間がつまってくることや、大学入試で出題されることが少ないことなどで、駆け足の説明になることが多い。
 ここまで掘り下げた説明を受けると、満州事変から第二次世界対戦までについて持っていた、陸軍の暴走などという単純な見方をあらためさせられる。

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