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紙の本
つらい社会を生きるための50冊のフィクション
2001/08/24 20:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:uwasano - この投稿者のレビュー一覧を見る
評論家の佐高信氏が、戦後50年の1995年に『戦後を読む 50冊のフィクション』(岩波新書)として出した本の改訂文庫版である。50冊の文学を、「アジアと日本」「戦争と人間」「日本の戦後」「株式会社日本の病い」「それでもここで生きる」の五つのテーマの章に分類し、現実社会との比較をしながら解説し、戦後とは何かを問いかけている。
取り上げられている文学は、人々があまり直視したくないものをテーマとしたものが多く、それこそ社会の真の姿である、と佐高氏は言いたかったようだ。差別の問題や、戦争が落とした影や、日本特有の会社の問題といった、つらい社会ばかり描いた文学である。つらい社会の中で、人々はどう生活していったか、どんな戦いをしたか? そんな物語を選択していったようだ。
佐高氏の評論は、いつでも社会の問題点の指摘ばかりだった。どうすればいいのかといった答えを言わない、問いばかりだった。ここで取り上げられている50の文学も、安易な答えを出しているものは皆無である。つらい現実との戦いの姿を描き、そこから読者に学ばせようとする。
最近、戦前・戦中の思想を体現したような、国家中心の社会を目指すような歴史教科書が出来て話題となっている。戦前・戦中がよい世の中とは思えないが、今現在に閉塞感を感じ、過去の日本に打開策を探そうとする意志は分かるような気がする。しかし、国家中心の社会になったところで、その先に何があるというのか? 彼らの目指す社会は、ひどくつまらないように感じるし、このつらい現実を打破することは出来ないだろう。
佐高氏は、「最後の進歩的文化人」と呼ばれる。理想主義者というような意味らしいが、理想が無くなって、現実追随主義者ばかりになるのを、恐れているようだ。これからの日本社会は、ハッピー日本から程遠い、弱肉強食のサバイバルの時代になりそうだ。生きるのがつらい世の中は、ますます加速する。佐高氏のような理想主義者こそ、この状況を打破できるのではないか。現実追随主義者は、阿呆な指導者に迷走させられ、生き残るのは無理だろう。