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サマータイム | 3-72 | |
---|---|---|
五月の道しるべ | 73-108 |
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紙の本
ひと夏の思い出は、メロディーとなって駆け巡るのです。
2018/11/25 20:46
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
分野はヤングアダルトである。
表題作を含む、四つの短編集だ。
サマータイムで月刊MOE童話大賞を受賞してデビューされている。
森絵都さんの解説によると、森さんは当時はまだ作家を目指す
専門学校生で、雑誌MOEにこの作品が掲載された時、
衝撃を受けて読んだことが生き生きと綴られている。
お互いヤングアダルトを得意としながら、作風に違いが
しっかりとあって、刺激を受けるのもよく分かる。
私はお二人とも気にいった。
サマータイムを読んで、思いを新たにしたところである。
サマータイムは、三人の子どもたちの物語である。
主人公は小学五年生の進で、一人称で展開していく。
一つ年上の姉の佳奈、さらにもう一つ年上の広一。
進が、夏のプールで、広一と劇的な出会いをするところから
物語が広がっていく。広一は、佳奈とも出会い、
三人の絆が深まる。いまひとつ自信のない進、
勝気で天真爛漫な佳奈、年齢よりもずっと大人びた広一。
三人の接点の真ん中にピアノがある。
広一のお母さんはプロのジャズピアニストで、得意曲の一つに
サマータイムがある。それは広一君の得意曲でもあった。
文庫本でたった四十八ページの小品である。
しかし、この少ない枚数に、何と広い空間が満ちていることか。
子どもたちのきらめきが、実にきれいに写しとられている。
「サマータイム」「五月の道しるべ」「九月の雨」
「ホワイト・ピアノ」と続く。
短編ごとに主人公と季節は変わるが、
基本的にはこの三人の物語だ。
わたしはヤングアダルトの作品を手に取ることがある。
最大の魅力は、圧倒的な純真さである。
手に取る作品の中には、過剰なまでの悪意の描写とか、
どぎもを抜くようなトリックを持つものもあるけれど、
わたしは心情が静かに染みわたっていく作品が好きだ。
サマータイムは、そんな意味で自分の気持ちに寄り添う
感じがして心地よかった。優しさに触れられる一冊である。