紙の本
経済学の観点から、平清盛を「経営者」として見たときに何が失敗であったか書かれているので、ビジネスへのヒントになる部分も多い
2012/02/09 19:33
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投稿者:bou - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の歴史研究は凄く進んでいると思います、秘密にされてきた文書が開示されてきたためでしょうか、原因はわかりませんが、歴史を好きな私にとってはうれしい限りです。
私が興味を持っているのは、気候の変化が歴史に与える影響ですが、この本では「さおだけシリーズ」でベストセラーを出された会計士の山田氏が、平清盛の時代にスポットをあてて、なぜ平家ははやく滅びてしまったかについて、経済的な側面から解説をしています。
また平氏は貴族化していて、源氏にすぐ負けてしまったというイメージを持っていましたが、実際には源氏に多くの戦いで勝っていて、最後の壇ノ浦の戦いも味方の裏切りによって負けたことは初めて知りました。
貨幣経済がなぜまたたく間に浸透したのか等、会計士らしい説明があり大変興味深く読ませてもらいました。ぜひ、続編も出していただきたいものです。
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「密貿易」
「希少性の法則」
「勘合貿易」
「たったの10年で貨幣経済へ」
「ダラライゼーション」
「末法思想」
「銭の病」
「平家滅亡の流れ」
これらのキーワードが、向こう10年の行きつく先、そのヒントが隠されている。失敗から学ぶことにふさわしい入門書である。
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大河ドラマに先駆け、平清盛を「経営者」という視点で切り取った作品である。
さすが山田真哉作品だけあって、数字の話も適度に入って面白い。
宗銭を普及させた平家が滅亡した理由を、デフレとその後のハイパーインフレによって紐解いている。
最後の「経営者」という視点は弱かった気もするが、貨幣の基本を知る為にもよい教科書となる。
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歴史って面白いなぁと素直に思えた書籍でした。
平家がなぜ滅びたのか、宋銭がなぜ普及したのか、貿易で巨万の富を得たのは本当かなど、数々の歴史ミステリーを、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』の山田氏が解き明かします。
特に宋銭がなぜ普及したのか、そして平家がなぜ滅亡したのかという一連の解説はなるほどと思わずにはいられませんでした。
教科書からは絶対に伝わらない歴史の面白さがこの書籍にはあります。
福岡出身者には驚きの事実もあります。
来年の大河は平清盛なので、ちょっと見てみようかと思います。
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読んでいるうちに平家と貨幣の世界に引き込まれていく。歴史学科出身の会計士という2つの専門を持ち、さらに文章の明快さには定評あり、という3つの強みを持つ著者の本。
最初は「平家は日本史の教科書に数ページ出て来たくらいで忘れたなぁ…」って感じでしたが。
綿密な背景分析があるからだと思います。平安時代のことだから謎に包まれてる部分もあるけど、「そうなのか」と膝を打つ部分も結構あって、テーマ史ってこんなに面白いんだなぁ、と思った。
あとこういう夢の叶え方もあるのかーとすごく納得。最初は歴史学者になりたかった著者は、公認会計士になり、会計に関する書籍でベストセラー作家になることで、自分の好きな歴史の本を書けるような土壌を作った。
すごい人だなー
でも執筆の準備作業がとっても大変だったそうな…
・権力の源泉は金の人事権の2つ
・貨幣の三機能は交換、尺度、保存
・貨幣の発行は儲かるので偽造がなくならない
・取引コスト、決済の汎用性、輸送コストの低下
・宋銭=商品価値+貨幣としての価値
・デフレ→凶作→ハイパーインフレ
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最近の歴史研究は凄く進んでいると思います、秘密にされてきた文書が開示されてきたためでしょうか、原因はわかりませんが、歴史を好きな私にとってはうれしい限りです。
私が興味を持っているのは、気候の変化が歴史に与える影響ですが、この本では「さおだけシリーズ」でベストセラーを出された会計士の山田氏が、平清盛の時代にスポットをあてて、なぜ平家ははやく滅びてしまったかについて、経済的な側面から解説をしています。
また平氏は貴族化していて、源氏にすぐ負けてしまったというイメージを持っていましたが、実際には源氏に多くの戦いで勝っていて、最後の壇ノ浦の戦いも味方の裏切りによって負けたことは初めて知りました。(p207)
貨幣経済がなぜまたたく間に浸透したのか等、会計士らしい説明があり大変興味深く読ませてもらいました。ぜひ、続編も出していただきたいものです。
以下は気になったポイントです。
・当時の貿易のリスクはすべて宋商人が負っているので、そこから莫大な利益を得るのは日本人ではなく、宋商人であった(p19)
・日本人が貿易に参加できなかった理由は、894年の遣唐使廃止以降、造船術や航海術が発達しなかったから(p20)
・平家は独占貿易体制をとることで巨万の富を得た、他の例として、足利義満・薩摩藩・ポルトガルやオランダがある(p23)
・宋商人は、朝廷に隠れて(支払が遅く安く買いたたかれる)民間(寺社、貴族)と取引するようになり、これが密貿易(私貿易)となった(p27)
・貿易で巨万の富を稼ぐ条件として、1)販売単価高い、2)形状小さい、3)量が多い、である(p30)
・平清盛が私費で瀬戸内航路開発(大輪田泊)をしたのは、和船よりも格段に船底が深い宋船が機内(山城・大和・河内・和泉・摂津)に安全に入れるようにするため(p41)
・貿易の中心地を博多から神戸に移すことで、貿易実務を宋から日本へ移す一大革命をしようとした(p46)
・足利義満は1392年に南北朝合一を行うまで、九州を本拠地とする南朝方の懐良親王が日本国王として明と貿易を行っていたので苦労した、金閣寺を建てて明の勅使を招いたりした(p54)
・関ヶ原の戦いは、東軍がオランダの大砲、西軍がポルトガルの大砲を使った、アジア貿易の代理戦争で、プロテスタント新教国とカトリック旧教国との戦いであった(p56)
・日本経済史上のミステリーとして、絹・米を交換手段とする物々交換経済が、10年程度(1160~70年)で貨幣経済へ変わったこと(p58)
・平清盛は宋銭を買い続けていたが、朝廷は使用禁止令(1187,89,92,93年)を出しているが、効果はなく戦国時代まで宋銭が使用されることになった(p60)
・デノミを行った北朝鮮では、お金を信用しなくなり(交換上限があった)商品の確保へとシフト、そのため物価があがりハイパーインフレ状態となった(p86)
・古代日本がデノミに失敗したのは、新貨幣が質の悪いものであり信用されなかっ���から(p87)
・奈良の大仏が鉛を1%しか含んでいないのに対して、鎌倉大仏は10%含んでいて、宋銭に近い値である、材料として使われた(p104)
・清盛が狙っていたのは、実質上の通貨発行権、宋銭が普及してその輸入を平家が独占できれば、通貨発行権と同等の権限を朝廷から奪うこと(p112)
・10年程度で貨幣経済へ変わった理由は、宋銭が仏具をつくるための銅材として国内に広まっていて、銅自体の価値が高かったので宋銭がスムースに貨幣として信任された(p121)
・内乱が起きるほど不平不満がたまっていた理由として、1)全世界的な寒冷期の到来、2)宋銭の普及による貴族・武士の困窮(p135)
・宋銭が招いた格差社会とは、現代の円高に状況がにている、通貨の価値が高くなるとモノの価値が低くなり、デフレとなる、宋銭を持っている平家が有利になる(p139)
・飢饉が起きるとコメの価値が上昇するので、宋銭の価値が相対的に下がる、飢饉をきっかけとして、一気にハイパーインフレが発生した(p169)
・ハイパーインフレで資産をもっとも失ったのは、平家一門、労働者を雇っていた大規模事業もできなくなった(p170)
・平家が得意としてきた人集めができず、常備兵がいない平家は銭の価値暴落により、軍事力の低下に直結した、富士川の戦いは源氏:4万に対して、平氏:2千であった(p173)
・古代からの幹線道路である東海道は、関ヶ原、米原ではなく、伊勢の桑名、四日市、亀山を取っていて重要なポイントであった、安濃津は室町時代には「三津七湊」の一つとして有名であった(p184)
・清盛の死後1181年3月に起きた墨俣川の戦いでは平家が源氏を破っている(p206)
・1183年にも、平家軍は水軍を使って木曽義仲を破り、瀬戸内海では連戦連勝(p206)
・壇ノ浦の戦いで平家が敗れたのは、潮流の変化ではなく、田口成良の寝返りであった(p207)
・土地を中心とした国造りは江戸幕府、明治政府へと引き継がれた、国税収入で地租(土地課税)が酒税に抜かれるのは1899年、700年間、土地中心の社会が続いた(p209)
2012年1月1日作成
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もういいだろ清盛本は。と言いながらもう一冊だけ。
なぜ宋銭が短期間で普及したのか。またしかもなんで一文銭しか普及しなかったのか。そのヒントは末法思想に!
平安末期を経済の切り口から考察する。当時の経済・宗教・環境などの側面もちゃんと押さえておかないと、歴史は語れない。さすが、さおだけ屋の会計士。
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源氏との戦いに負けたというよりも、経済政策に失敗した平清盛が描かれています。宋との貿易で財を築きましたが、ハイパーインフレによって、財を失ってしまったようです。「驕れる者久しからず」と言われるほど、驕っていたわけではないようです。
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平清盛→守旧派、悪者のイメージが一変した本。
歴史はどの資料を元にするか、どの視点から見るかによって中身が全く変わってしまうということも実感させられる。
もう少し中身に踏み込めば、経営者としてというよりも、財政政策家としての清盛の側面への言及が強い印象で、随所に図表等を使ったわかりやすいまとめもあり読みやすい一冊。
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平清盛を頂点とする平氏の滅亡、そして貨幣の普及の謎を、経済学的な視点から切り込んだ。「さおだけ屋・・・」の山田真哉氏の文章は、やや軽めだがわかりやすい。
貨幣の存在しなかった平安期にたった10年で全国に貨幣を普及させたのは、清盛の手腕?それを独占した平氏は相当に富を蓄えていたはずなのに、なぜ源氏との争乱になぜ勝てなかったのか?
通貨とその運用管理のあり方を平易に説明しながら、日本で初めて起きたデフレ・インフレという現代にも通じる経済現象を解き明かす本。
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「通貨が平家を滅ぼした!」のキャッチに惹かれて読んでみた。
この時代にもやっぱりあったデノミ、インフレ、シニョレッジ(通貨発行益)。
大切なのは通貨の信認。経済って、今も昔も変わらない。
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著者のセミナーに行き、話があまりにも面白かったので購入。
本当に新しい切り口です。
歴史の勉強になるだけでなく、今、これからの時代をいかに生き抜いて行くのかのヒントにもなりました。
先生もステキでした(^ ^)
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今年は平清盛イヤー?だが、最近読んだ本(経営者平清盛の失敗)に貨幣制度を普及させて、富を得た清盛の一面が描かれていた。その後に飢饉があり、貨幣価値が下がったために、財産を失い、壇ノ浦で負けてしまうという展開は面白かった。貨幣に頼りすぎるとダメよという話だが、現在では貨幣がいろいろなところで社会の効率化を実現する役割を果たしているので、拝金主義でなければいいんじゃない。と思っていたら、お金を使わずに生活をする体験を綴った本が売れているそうで、自分で野菜を作ったり、交換したり(何かを手伝って、その代わりにもらうなど)、やってみると意外と暮らせますよという話が書かれていた。この本でいろいろ感じるところはあったが、人とのつながりで、助け合う社会をもっと努力して作らないとダメなんだとということなんでしょうね。ソーシャルメディアがその役目を果たすのかもしれないが(やや短絡的な終わり方だ)。
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貿易と貨幣制度の導入で栄えた平家。
唐の銅銭が仏具として流用可能で、同本位=仏具本位制が可能だったのではないか。
滅亡の原因は不況によるインフレ。
貸していた銅銭の価値が下がり、傭兵も雇えなくなった。
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平家滅亡へと追いやったのは、源氏のみでなかったのだ!
歴史も経済面から紐解くと面白く、大河ドラマも裏の背景から観ると面白そうだ。
平家は、デフレとハイパーインフレによって倒され、自壊したも当然と著者は語られる。清盛の最大の失敗とは、「宋銭」に翻弄されられたのね。
宋銭には、2文、10文とあったのに日本では1文銭のみ普及した訳は、非常に使い勝手のいい仏具や仏像の材料に使われてたのは、驚きだ。鎌倉大仏にも?お金を鋳造するってありがたい宋銭だったのか。