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同志社大学に学んだプロテスタントの二人が語る、キリスト教を軸にしたポスト「3-11」論
2011/11/07 17:57
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
出来の悪い生徒役を中村うさぎが演じて疑問を提出し、先生役を演じる佐藤優がその質問に答えながら、議論を発展させていくという対話本。なかなかこの二人の掛け合いが面白い。
中村うさぎは、福岡のミッションスクールで中高とすごし、同志社大学文学部を卒業した、プロテスタントとしての洗礼も受けた作家。言うまでもなく、ブランド買いあさりや成形手術、ホストクラブ勤務など、現代の無頼派作家のような人生を送ってきた人生探求派である。
佐藤優は、同志社大学神学部で修士号を取得したという異色の元外交官。いわゆる「国策捜査」による獄中生活も信仰のチカラで乗り切った筋金入りのプロテスタント。現在は膨大な知の集積をもとに、さまざまな分野で活発な評論活動をつづける作家である。
この二人による対談集、というよりも対話集が意外と議論がかみ合っているのは、二人がほぼ同時期に同志社大学に学んだプロテスタントという共通点があるからだろう。
とはいえ、同じプロテスタントであるといっても、佐藤優のそれはもっとも厳格で容赦のないカルヴィニズム(=カルヴァン主義)、それに対して中村うさぎはバプテスト派であるようだ。カルヴィニズムは、マックス・ウェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で描いたように、神に選ばれて運命はすでに決まっているという浄土真宗にも似た絶対他力の信仰。こういった知識はアタマでは理解しておいたほうがいいだろう。共感できなくても、いかなる立場から発言しているかがわかる。
内容的には前半の「3-11」以前になされた「春樹とサリンジャーを読む」が面白い。「3-11」後の対談については、日本人が政府への不信感をつのらせアナーキーになっているといった指摘や、若者たちは『エヴァンゲリオン』にみられるように終末論をなんどもシミュレーションしてきたというデジャヴュ感の指摘も興味深いが、かならずしも賛同しかねる指摘も多々ある。
日本人キリスト教徒の目から「3-11」後の日本を見るとどう写るかに興味のある人は、ざっ目を通してみるのもいいだろう。異なる視点で日本社会を見る一つの物の見方になっているからだ。
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異色の2人の対談。何とクリスチャン、そして大学繋がりという共通点。佐藤氏は「否定して否定して、それでも残るサムシング、それが宗教であり、神である」と。
立場は違うものの「神」の存在を希求して止まない2人の気持ちが伝わってくる。
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何が一番すごいと思ったかといえば、佐藤優氏のその博学さ。何故こんなに、色々な事を知っているのかと、ただただ驚き。鈴木宗男さんのことで、佐藤氏のことを知りましたが、印象は悪かったですが、この本を読んでそれはなくなりました。
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同志社大卒の佐藤優さんと中村うさぎさんがキリスト教を通して聖書、村上春樹、サリンジャー、東日本大震災を語る対談集。
佐藤優さんの博学には今更ながらですが、さらにびっくり。
アントニオ猪木が人質開放でイラクに行った時の話、クロノスとカイロスも面白かったです。
500年以上も前の想像力を持つことができるのは文学を通してだけというところが印象に残りました。
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対談書というのは読みづらくて、かつ、何が言いたかったのか、結論が見えにくいのでちょっと苦手。
聖書を語るというようりは、聖書をめぐる文学、政治(日本や海外を含め、そして今回の地震)状況を語っている感じ。
カトリックの私としては、カルバン派、ピューリタン派の人間をだすなら、キリスト教の各派の人が聖書を語り合ったほうが面白のではと思ってしまった。
ただ、中村うさぎと私の村上春樹評が似ていたのにはびっくり!!
そちらのほうが印象に残った本でした。
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中村うさぎの頭の回転が速いっ。キリスト教へのツッコミも「そうそう、そこなのよ」というのが多くて、個人的には、読んでてスッキリしたので、星4つ(基本的に生徒=うさぎ、先生=佐藤、なので、何か新しいものが生まれているとか、議論が深められているとかいうわけではない)彼女の著書、読んでみようかな~。
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他の著書も何冊か読んでいるが佐藤 優さんの博覧強記っぷりには驚かされる。「1Q84」読んでないのでついていけない話があったのが残念。中村うさぎも只者ではないっす。
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他の人も書いているが、佐藤優氏の博学にはいつもながら驚かされる。
基本は理性的で博学な佐藤優氏を教師役、感性である意味で一番人間的な生き方をしているうさぎ氏が生徒役になって、生徒が感性で真実を解き明かし、理性の先生がその理論的な説明をする感じでしょうか?
内容は佐藤優氏の他の対談に比べてやや読みやすいと思います。また内容も簡単に読めるのでその分はいいかな?
しかしながら、異色の組み合わせは、同志社大ですれちがったり、共にクリスチャンだったり、人間傍目からではわからないものですね。
いろいろな意味で、面白かった。
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3.11以降、いろいろ考えています。
あの時ある雑誌には「このたび、神は人を殺した」
「われわれはこれから神なき時代を生きて行くのだ」と
書かれています。
この言葉を乗り越える、
人々が明日に向かって歩き始めることができる、
そんな言葉を探し続けています。
2人の対談から
そんな言葉を見つけるヒントをいただきました。
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博覧強記の佐藤さんと一度言葉を交わしたことがある.「本の旅人」に連載中のフスの話はいつまで続くのですかとの質問に,「あれは気を入れて取り組んでいるのであと2年は続けるよ」との回答だった.でも,知識が噴き出る感じの佐藤さんだが,うさぎさんもなかなかの博識だ.中身の濃いやり取りを展開している楽しい本だ.
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佐藤優さんと中村うさぎさんの両方を知っている人には楽しめる内容でしょうが、本書から本格的な聖書の知識を得たいと思っている人にとっては期待外れでしょう。
私的には、うさぎさんがやたらとエヴァンゲリオンを押すので、うんざりした思いです。それならエヴァンゲリオンを中心にした本を別に作った方が良かったのではないかとも思いました。
ただ、カルヴァン派のことがうっすらとわかるので、そこだけ評価できます。
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中村うさぎは、わかったフリをしたりしない。で、佐藤優は、投げかけられた質問に膨大な知識や経験を元に、構えずにさらっと応える。かくして、核心のようなモノに切り込んでいくのが、楽しい。
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ホロコーストというと、ナチスのユダヤ人虐殺を指すが、もともとは羊の丸焼き、真っ黒に丸焼きにしてしまうと人間は食べられない、すべて毛塗りになるということは誰が食べるのか、それは神。ユダヤ人たちがアウシュビッツのガス室で殺されて焼かれて煙になった。それはすべて神様にささげられたというイメージ。
村上春樹がヨーロッパの小説、学術文献をよく読んでいて、それが村上の思想にしっかり受肉されている。
村上自身がいわば死んだ山羊の口としてヨーロッパへの回路になっている。
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大好きな二人の競演。
サイバラも大好きだけど、こっちの企画の方が新潮でのコラボ企画よりずっと優れていると思う。
佐藤優は、難しい話をとても分かりやすく書いてくれるから大好き。
広範にて深淵な知識と、頭のキレと、心優しい性格から来ている技だと思う。
震災を経験した日本人の全体主義はどこから来ているのかという問いに対して、キリストの壮絶な死に方を見たパウロとペテロが一念発起するのと同じで、人はそういうものを見ると、突き動かされるようにできている、という分析に納得。
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佐藤優の著書を何冊か読んでいる人にとってこのプロローグはしっくりくるだろう。
なぜ512日間の独房生活にあのような態度で耐えることができたのか、そして拘置所を出た後はゆっくり本を読み、親しい友人たちとの時間を大切にしたいと言っていたのに、なぜこんなにもハードな執筆活動を続けているのか。
いずれも著者の原体験ともいえる、幼い頃に牧師から教えを受けた予定説によるものだと述べられる。言うなれば、救われる人間がすでに書かれている天国のノートがあって、そこに自分の名前があることを信じて、神様の前で正しい行動をするんだよ。そういった教え。
なるほどなー、と思いながら第一章を読み始めると中村うさぎがこんなことを言う。
中村「何それ?そんなインチキくさいこと信じないよ、私は(笑)!天国にノートなんて、ないから!佐藤さんは、そんなこと、マジで信じてるの?」
佐藤「信じてますよ」
中村「いやいや、ノートって、あなた……(笑)」
そんな異色の対談集。
内容としては中村うさぎの頭の良さが際立つ。終末遅延問題、終末はまだ2000年くらいきてないだけでいずれくるよそしてそれは確実だよ、って話を聞いて、説明を受け理解した途端、便秘にたとえてしまう頭のやわらかさと回転の早さ。
イエスの誕生が確かなできごとであるという考えを聞き、イエスの誕生が確かならば未だ到来していないが終末もまた確かなできごと、つまり私が食事をしたものは必ずウンコになるようなもんだね。便秘だったら食べたものがなかなか出てこないけどそれはいずれ必ずでてくるもんね。ウンコが消えてなくなったとは考えない。遅れてるだけだよね、って考えるもんね。こんな具合。