紙の本
不思議な中毒性をもった作家たち
2017/05/27 07:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おそらく村上春樹氏が翻訳していなければ、1922年にニューヨークで生まれ、たった3冊の短編集でアメリカ文学のカリスマとも呼ばれるこの女性作家の作品を読むことはなかっただろう。
そして、これが短編集でなければきっと読了することはなかったかもしれない。
それは訳者である村上春樹氏もこの短編集のあとがきにも書いているように「彼女の小説は、かなり多くの部分が、癖のある、場合によってはいささか「難解な」文体によって」出来上がっていて、ましてや作品の舞台がどうしても日本の町の風景とは手触りも違うので、読書の愉しみとはほど遠い。
同じ訳者あとがきで村上氏は彼女の作品には「いったんはまりこむと、もうこれなしにはいられなくなるという、不思議な中毒性」があると書いている。
不思議な中毒性。
まさにそれは村上氏の作品そのものにもいえることだ。
村上氏の作品は最近ひどく難解で、読書の愉楽といえるかどうかわからないところがある。
それでも読者を離さないのはまさに「不思議な中毒性」を持っているからで、そういう点では不思議な中毒性を持った2人の作家の共同事業として、日本語版ができあがっているといえる。
この短編集には17篇の作品が収められているが、そのうちのいくつかはペイリー自身がモデルといわれる「フェイスもの」(主人公の名前がフェイス)だ。
日本の風景でいえば下町の人情話に近い。それでも日本の読者である私たちには彼女を含め少し理解し難いが、きっと他人なんてそういう距離でいるは確かだ。
それは日本であれアメリカであれ同じだろう。
紙の本
クールなユーモアあふれる無駄のない饒舌がいい!
2005/08/09 02:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは面白かった。いかにもニューヨーク、という感じの乾いたユーモアがいい。雑多な人種・民族が集まっている街の猥雑さを一杯に吸い込んだ口語を縦横にめぐらした文体で、翻訳からはわかりづらいがおそらく散文詩のような文章なのだろうと想像させられて、すごく原書が読みたくなる。中心人物であるフェイスやその両親、兄弟、元夫、息子たち、友人たちの造型も奥行きがあってリアル。長編小説が読んでみたいなと思わせられて、確かに人生には小説よりも大切なものは沢山あるのだろうが、こういう作家が短篇小説集を三冊、詩集を三冊しか出版していないというのは読者としてはいかにも惜しい気がする。もっとも、そういう文学的野心に欠けるところが、こういう作品を生み出す精神的なバックボーンになっているのだろうけれど。処女短編集の翻訳が新刊で出ているが、これは文庫で読みたいかも。
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なんとも
2019/05/01 16:53
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
都会に住むおしゃれたちの生活ってこんな感じ?
残念ながら、私には共感できる部分があまりなかったですが、そういう人もいるのだなと思いながら楽しく読みました。
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自伝とも言われる「主人公・フェイスもの」と「同時代的民間伝承」(村上氏による言葉を引用)で構成される短編集です。
なかでも私は「フェイスもの」のラストに収録された「長距離ランナー」が印象的でした。
274ページに、「私は既に人生の多くの時間を、寝ころんだり、立ち止まったり、じっと眺めたりすることに費やしてきた。だから走ることにする」という文章があります。この文章に私は彼女の意欲の表れを感じました。そして、私もがんばろうと思える勇気をもらいました。人生は長い。
作品を通して、生きることの困難さを考えさせられました。うまくいかないことばかり。汚いことばかり。遠回りばかり。しかしそれはやむをえないという、彼女がもたらす作風のざらざらした読み応えの奥にある意味。
外国という舞台で読むとまた日本の作品とはひと味違ったリアルさがそこにありました。なんだか怖かった。
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現存するアメリカ人作家のなかで、最も敬意を抱かれているグレイス・ペリー。最初はかなりかじりにくい文章で(逆に噛めば噛むほど滲みでてくるのですが)、もちろん物語としての面白さは確実です。
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本国で非常に根強い人気のある作家なのだそう。(訳者によれば)。難解、とかいうことらしいが、それは用いられている語句の問題というより、語り口やいくつかのレベルでの空白によるのではないかと思う。小難しい、という感じはしない。短い一遍を読み終えた後、読み流すことも可能なのだけれど、腑に落ちない何かがあってつい読み返してしまうといった味わいの本。個人的には近年の収穫である。
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村上春樹訳だと思って手にとってみたんだけど… 文体とストーリーが馴染んでない感じがして、読みにくかったなぁ。原文だともっと楽しめるかも?
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今世紀最高の女流作家・短編小説の名手に村上春樹が挑戦。NY・
ブロンクスに生まれ、二十世紀のアメリカを生き抜いた女の名作品集
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そんなに読みにくくない文章、のはずなんですが、意味が難解。むずかしいです。何回も何回も読み返してようやく理解できる。全部読むのに相当骨が折れました。それでもまだいまいち深くまで解ってないんじゃないか、これと思ってしまう体たらく。まだまだ読者としての力がついてないぜ自分!村上春樹さんの役ということですが、全然村上の匂いがしない。表題作の「最後の瞬間の〜」のタイトルが凄く好きなんですが、想像していた内容と全く違っていて逆に面白かったです。何故か「しぬまでにしたい10のこと」的な内容を想像していたんですね。この人はああいう内容の文章は書かないだろうなぁ。1年後ぐらいに再読して、どれくらい自分に読解力がついたか計りたいです。すんなり理解できたら絶対面白いと思うんだけどなぁ…。
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私にはまだ難しすぎたかも知れない。整ってるんだけども「え、これ誰?いつ出た?」みたいなところが多かったんですが、私だけでしょうか。カタカナ苦手だなあと改めて思った。ところどころ怖かった。
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なんだか不思議な本で、ストーリーというストーリーは無いし、ずっとだらだらと一人称の語り口調で、話はあっちやこっちに脈絡なく飛ぶし、人間関係も誰が母で誰が友人やら全然つかみきれないまま、不完全燃焼で読了。
向いてませんでした。
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内容(「MARC」データベースより)
「自由な半時間ができると、窓辺に座る。彼女は待っているのだ。」 たった三冊の短篇集で、40年間、圧倒的支持と尊敬を受け続けている作家グレイス・ペイリーの不思議な小説世界を村上春樹訳でおくる短篇小説集。
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このタイトルだけで小一時間、思考できる。笑
訳は村上春樹さんなのですが、何故か内容よりも彼のあとがきが一番印象に残っています・・・。(酒井)
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男は「生きる」が、女は「生活」する。
だから男のやるバカは笑えるけど、女のやるバカは本気で、ときにイタイ。
それが主婦だったりすると生活感が圧倒して本気度がいや増ししちゃって。
この本に出てくる女のひとたちは、みんな必死に生活をしながら、一途に本気のバカをやっている。
それがなんともかなしくておかしく、書き手の目線の密着度のせいかあはれにまで到達してしまっている。
意外なことにわたしはそんな女性が好きなんだなあと気付かされてしまった。
何度も読み返す。泣き笑い笑い泣き。
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3冊の短編集しか出してないけど、とっても大御所らしいアメリカの女流作家。
春樹は、好きらしいんだけどね。
彼女自身をモデルにしているような短編や、伝聞から話を膨らませていったような都会の話と、大雑把に二つの流れに分けられる。
うーーん。
確かに、表現とか手法とか上手いと思うんだけど、カーヴァーのように胸にしみてくるような感覚はない。もしかしたら、そういうところがクールでいいのかもしれないけど、どうもそこまで読み込むことが出来なかったように思う。
アホで、すみません(苦笑)