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紙の本
法を守ろう、という掛け声がかかる、ということはそれだけ法を守らない企業が多いことの証明だろう。でも、この本からはそういった企業が、うまく立ち回る知恵しか見えてこない
2004/08/07 22:26
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「不正を防止したり、商品の安全性を守るといった倫理的問題に対して、企業がきちんと責任を持つべきだというのがコンプライアンスの考え方です。」
「企業が不祥事を起こすと、行政処分を受けるだけでなく、消費者や取引先、投資家の信頼を失い、最悪の場合、存亡にかかわるリスクとなります。」
「企業不祥事のほとんどは小さな不正を見逃すことから始まります。企業はコンプライアンス活動に経営全体で取り組まなければなりません。」
「本書では、コンプライアンス文書の作成から、社内体制の整備、運用のノウハウまで具体的に解説します。」
ということである。
ま、これだけで何となく内容が見えてしまうあたりは、さすがに日経とでもいったら良いのだろうか。ついでに簡単に目次を見てみると、1.変わる企業と社会の関係。2.高まるコンプライアンス経営の重要性。3.コンプライアンスにおける計画。4.コンプライアンス体制の構築と教育。5.コンプライアンス体制の運営 コミュニケーションとモニタリング。結びに変えて。参考文献という構成になっている。
で、とりあえずコンプライアンスの意味は、と言えば「広く倫理的な実践まで含んだ法令遵守活動」という。勿論、企業活動において、ということだが、実例を見ていると、殆どリスク管理と同じではないか、いや、この本を読む限り、リスク管理の一環としてしかコンプライアンスが出てこないのではないかと言う気がしてならない。
たとえば、雪印食品である。法令遵守のために告発を行ったのは、先日もTVで哀れな社長の姿が放映されていた西宮冷蔵である。そして、告発をした西宮冷蔵は、その後食肉業者が続々と取引をやめたことで廃業に追い込まれている。この本では、西宮冷蔵が逆に悪者扱いされていることに、ほとんどふれることなく逆に、法令を遵守しなかった企業が、その後、いかに立派なコンプライアンス経営を行ったか、を、そういう組織ができたことを礼賛することに終始する。
おいおい、である。それなら、なぜ西宮冷蔵との取引をやめた丸大などの食肉業者を、法令遵守活動をしない、あるいは阻止する会社として告発しないのだ。日本ハムが、法令遵守活動を行い始めた、若手社員は立派だとのたまう。しかし、肝心なのは組織ができたことではない。この本でも繰り返されるように、経営陣が以下にそれに対して真剣に取り組むかだろう。
雪印が、日ハムが西宮冷蔵に頭を下げたか? 取引を再会したか? 経営陣は消費者に対して、何を表明したのか? 株主総会で報告をした? するだろう、しなければパッシングが強まるから。しかし、経営が変わるということは、単に書類が書き換わるということではないはずだ。
ところがだ、ISOにしてもHACCPにしても、日本の食品衛生法にしても、日本の企業がやっているのは査察だけを何とかクリアすればいい、という活動だけではないか。そういった、日本の構造的な経営体質について触れずに、一部の不祥事を引き起こした企業の、表面的な改心をした部署の活動をのみ取り上げて、持ち上げる。まさに、企業のための企業支援家による本である。