紙の本
「型破り」なんて誰が言った?
2002/07/29 09:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:米作り - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHK連ドラ以来、萬斎ファンとなった私は傍から見れば単なるミーハーだ。しかし、そのミーハーをいつのまにか狂言ファンにしてしまう力と可能性を、この本は秘めている。
「サイボーグ」という言葉に一瞬ドキッとさせられるが、伝統に(基礎となる)型の体得は必須条件だという野村氏の解説を飲み込んでいくうちに違和感は薄れていった。野村氏の言う「サイボーグ」は、基本となる動作を身につけた後に、新しい演出法を自ら編み出すクリエイティブなサイボーグだ。そして狂言にはその「新しさ」を受け入れる柔軟さがあることを教えてくれる。
野村氏のパフォーマンスは「型破り」と評されることもあるようだが、核心を保ちながら他の芸能との交流を通して発展していくことはごく自然なことだということを、野村氏による歴史的背景の説明から読み取ることができる。根幹にある「伝統」だって、発明当時はその時代の「型破り」だったのかもしれない。そう思うと、現在「型破り」と称されるものだって、百年後には立派な「伝統」となるかもしれない。このように、伝統に対する人々の考え方の変遷がしのばれて面白い。
この本を通じて、狂言の世界に興味を持つことができた。ドラマの野村氏しか見たことがない方に強くおすすめしたい一冊だ。
紙の本
狂言界の貴公子であり、各世代から広く支持されている野村萬斎が独自の視点で語る狂言についてのエッセイ集
2002/01/31 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大笹吉雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あるジャンルに偉才や人気者が出現すると、とたんにそのジャンル全体が活性化するのは、今も昔も変わらない。狂言という古典演劇における野村萬斎は、さしずめかつての歌舞伎界での坂東玉三郎のごとき存在だと言えば、おおかたの納得を得られやすいのではなかろうか。玉三郎の登場がどんなに歌舞伎を活性化させたか、今さら述べるまでもあるまい。
野村武司という前名のころから、萬斎は狂言界のホープとして知られてはいた。が、その世界を超えて人気に火がついたのは、萬斎を襲名して三年後、九七年のNHK朝の連続テレビ小説『あぐり』で、ヒロインの夫役を軽妙に演じて以来のことになる。以後の萬斎の活躍が、文字通り八面六臂であるのを知っている人も多いはずだ。
本書はその萬斎の、日経新聞に書いていたコラムや、自ら主催していた会の会報に寄せた文を編んだエッセイ集である。タイトルがちょっと変わっているが、幼児から型やカマエといった狂言の基礎をたたきこまれたその身体をコンピューターに見立てて、狂言の申し子という意味で使われている。それが嫌みにならないところに萬斎の人柄がある。
中での異色は新聞に載せた「狂言と『顔』」「狂言と『首』・『肩』」「狂言と『ノド仏』」「狂言と『髪』」といったタイトルの、萬斎の体の一部にピントを合わせ、それを通して狂言やその出し物を解説している文章で、これらはこの人ならではの味わいがある。
それにしても全体に狂言への愛情にあふれていて、同時にそれがいかに現代に生きているか、強くアピールしている点が印象に残る。萬斎自身、テレビや映画や翻訳劇や新作狂言などにも積極的にかかわっているが、このことはいわば異界から伝統的な狂言を見直し、それへのかかわりをより深めるためのいい補助線になっているのがよくわかる。換言すれば、狂言の申し子としての自分をよく知っている。読後がさわやかなのはそのためである。
なお、忠之の撮り下ろしの多数の写真が、本書に花を添えている。三つの座りダコのある足のクローズアップなど、普段は目にすることなどあり得ない。そういうものを含めての満載──これはかけことばのつもり──の写真だ。 (bk1ブックナビゲーター:大笹吉雄/演劇評論家・大阪芸術大学教授 2002.02.01)
投稿元:
レビューを見る
狂言師 野村萬斎さんの狂言とは何か?を書いたエッセイ。型を師匠から弟子へプログラミングされていくさまをサイボーグにたとえているようだが、身体の各部分についてわかりやすく説明している。アイドル本ではないと思います^^;
投稿元:
レビューを見る
野村萬斎氏が日経新聞に連載していたものをまとめたものと、自身が主宰する狂言会「ござる乃座」でのあいさつ文。「ござる乃座」は彼の学生時代から続くものなので、文章や考え方の変遷も見ることができる。
投稿元:
レビューを見る
身体言語、というものを文字で理解できるという面白い本です。自分の体と対話するっていうのはこういうことなんじゃないのかな。
投稿元:
レビューを見る
私は野村萬斎にいつもにこにこしてる印象を持っていたが、やはり彼は伝統芸能に携わる人物。この本からは彼の芸に対する厳格さがかいまみえた。
投稿元:
レビューを見る
何が素敵って 写真が素敵
立ち姿に隙がないよ
頭切れそうな文章だし..
アップ写真が多くてファンにはたまらないでしょう
(私か)
投稿元:
レビューを見る
私の大好きな野村萬斎さんの著書。
中身はかたっくるしい。
ファンの人だけ楽しめればいいのかしら。
狂言に興味なかったら読む必要もないかと
投稿元:
レビューを見る
プログラムされた肉体と「型」。
人間臭いイメージの伝統芸能「狂言」と、無機質、硬質な「サイボーグ」という言葉の組合せは、読む者に居心地の悪い緊張感を強いてきます。
その異物感こそ、野村萬斎氏思うツボ。してやったりの企みでもあるのでしょう。
「サイボーグ」の真意を知りたくて、ページをめくるのももどかしく、読みはじめました。
師から弟子へ、狂言を教えるとき(多くの場合、その関係は親から子ですが)、厳しく「型」を教え込みます。
手の高さはここ。足の運びはこう。声の出し方はこう。
師がやるのを繰り返し真似させることで、型を植えつけ、全身の回路をつないで、機能させることができるようになる。
「型」を伝えることは、人間の肉体にデジタル情報をプログラミングしていくことのようだ。
そうして、「型」を覚え込まされた狂言師、「狂言サイボーグ」ができあがる。
「メソッド」と呼ばれる、まず役の人物の気持ちになりきることで、リアルな演技ができるという欧米の演技法の主流の考え方とは対極にあるのが、狂言の演技法であるようです。
この本は、狂言サイボーグとなり、表現者としての人生を歩みはじめた青年が、黒沢明に出会い、英国に留学し、蜷川幸雄に鍛えられ、異文化に遭遇し、その度に基盤である「狂言」を問い直す過程が描かれています。
そして、「狂言」って、そういうものだったのか、という「狂言入門」の知識もいろいろありました。
私がいちばん驚いたのは『狂言と「目」』と題された一文です。
狂言はもともと、面をつけて行う演技であることを前提としていて、面をかけていないときは「直面(ひためん)」と言って、自分の顔を面として扱うのだそうです。
だから、狂言には「目の演技」はない。
思わず「えーっ」と叫んでしまいました。
言われてみればそうなのでしょうが、一方で野村萬斎と言えば、強烈な目力(めぢから)を持った人だと思っていたので、狂言では目で演技しないのだということに、あらためてびっくりしました。
では、あの鋭い目遣いはなにかというと……、
大河ドラマ「花の乱」に出演したとき、共演の市川団十郎丈、萬屋錦之助さんから盗んだ。
でも、この技術も映像出演のための技術で、狂言では使えないものなのだそうです。
こんな発見もありました。
「狂言にはラブシーンがない」
『法螺侍』というシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』を翻案した新作狂言があるのですが、そのなかに主人公が人妻に抱擁、接吻を迫るシーンがあり、
そのような情況に対応する古典の「型」はなく、「濡れ場」の演出には皆が気まずい思いもしたりした。
これには、思わず笑ってしまいました。
投稿元:
レビューを見る
日本人は農耕民族だから腰は下向きに(腰を入れる)っていうのは聞いていたが、西洋・狩猟・上向きの対比で納得した気がする
まんさいさんの狂言見たい
一度お能で寝ちゃったの挽回したいなwその時は一緒にやった狂言が飛んで空中回転するので、その音で起きたw
これも「下に」飛ぶというのは、本当に腰というか重心が下なんだなぁと思った
投稿元:
レビューを見る
狂言師としての文章と萬斎さんの日記のような文章が
組み合わさって構成されている本。
まず「型」を習得することで「芸」を身につける様を
コンピューターがプログラミングされるような視点から
デジタルなものなんてありえない伝統芸能の世界を解釈し
「サイボーグ」ととった萬斎さんのセンスって面白いと思う。
ほとんどの文章は日経新聞に連載されたものを編集してあるのだが、
写真と巻末の「僕は狂言サイボーグ」という文章は書き下ろし。
萬斎さん好きな人は読んだらよい本だと思います。
私のイチオシは足の写真(笑)
投稿元:
レビューを見る
野村萬斎さんが好きで、書店で見つけて思わず購入。
狂言、またご本人のこれまでについてを細かに紹介されています。
なかでも、狂言をコンピューターに、狂言の「型」をソフトに置き換えての発想がおもしろい。とても分かりやすい説明がありがたい。
おかげで「狂言」「古典演劇」にちょびっと触れることができたように思いました。(思いたい!)
同時に、自分の無知っぷりにも気付くことに。
国際化といえど、日本の伝統を知らずしてではね・・・と。(シュン・・・)
最後は詩「僕は狂言サイボーグ」で締めくくられています。
美麗な(&おもしろい)お写真も沢山掲載されています☆
Fanのみならず、古典演劇にご興味のある方にもオススメです。
投稿元:
レビューを見る
野村萬斎さんが、自分を狂言のサイボーグとして語る本。
堅苦しくなく、思うことを素直に語った内容はとても読みやすかったです。
投稿元:
レビューを見る
野村萬斎さんが書いた狂言の本。
若い時から連載してたエッセイをまとめたもので、失礼ながらだんだん文章がうまくなっていって、わかりやすくなっているなあと思った。
狂言をテーマ別にわかりやすく説明してあったりして、読みやすい。
萬斎さんの若い頃の写真もたくさん載ってます。
投稿元:
レビューを見る
著者は軽いエッセイのつもりで書いたのかもしれない。
読者にとっては現代において伝統芸能に取り組む人の格闘の記録であり、哲学書の類を読むような緊張を感じながら読みました。