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- カテゴリ:一般
- 発売日:2008/04/01
- 出版社: 日本経済新聞出版社
- サイズ:20cm/305p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-532-16658-8
紙の本
奇縁まんだら
生きるとは、人との出逢い。奇なる縁の不思議さと幸せ。島崎藤村、正宗白鳥、川端康成、三島由紀夫など、今や歴史上に名を止めた偉大な作家たちの記憶をつづる。『日本経済新聞』連載...
奇縁まんだら
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商品説明
生きるとは、人との出逢い。奇なる縁の不思議さと幸せ。島崎藤村、正宗白鳥、川端康成、三島由紀夫など、今や歴史上に名を止めた偉大な作家たちの記憶をつづる。『日本経済新聞』連載をまとめて単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
いまや日本を代表する女流作家が、藤村、川端、三島から岡本太郎まで、21人の物故巨匠作家との奇縁を綴った随想集。誰にも書けない日本文学史“ライブ”であり、“自立した女性”の魁となった著者の精神史でもある。【商品解説】
目次
- 島崎藤村/正宗白鳥/川端康成/三島由紀夫/谷崎潤一郎
- 舟橋聖一/丹羽文雄/稲垣足穂/佐藤春夫/宇野千代
- 今東光/松本清張/河盛好蔵/里見弴/荒畑寒村
- 岡本太郎/遠藤周作/水上勉/檀一雄
著者紹介
瀬戸内 寂聴
- 略歴
- 〈瀬戸内寂聴〉1922年徳島市生まれ。東京女子大卒。作家。比叡山延暦寺の禅光坊住職。「白道」で芸術選奨文部大臣賞、「場所」で野間文芸賞を受賞。2006年には文化勲章を受章。
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紙の本
横尾忠則の描く水上勉はやはり男前
2009/03/30 08:20
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ゴシップというのは興味本位の噂話のことをいうが、そのことを話す人聞く人はその話から影響を受けない安全地帯にいるようで好きではない。
かつて文壇と呼ばれた世界で活躍した作家や芸術家との交遊録を収めた瀬戸内寂聴の『奇縁まんだら』は、松本清張の女関係や谷崎潤一郎の豪華な吉兆の弁当といったゴシップまがいの話を描きながら、単に興味本位でない、あるがままの作家たちの姿が垣間見え、楽しく読めた。
それは作者の飾らない文体と開け放たれた性格によるものかと思える。
数多くの作品を書き継いできて、「書評のような感想を書いた」であるとか「シュールの絵を見たり、音楽を聴いて「わからないけど、何かしら気持ちがよくなった」という感動」などといった文章はなかなかに書けるものではない。
飾らない文体というのは実に読みやすい。
本書には島崎藤村、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、宇野千代、今東光、松本清張といった、昭和という時代に燦然と輝いた二十一人の文学者や芸術家の人となりが瀬戸内寂聴の目をとおして活写されている。
島崎藤村との一瞬の邂逅を「美しいナマの小説家をこの目で見た瞬間」と描写するように、著者の筆致は何十年の時を経て女学生のように若々しい。
そして、そのような「ナマの小説家」に会いたいという一見軽薄な態度は、女流作家として世に出たいという作家瀬戸内晴美の必死の願いでもあったにちがいない。
「平林たい子」の章で描かれる、熱海の温泉場の宴席で居並ぶ女流作家を前にして必死で阿波踊りを踊る著者の姿は印象深い。そういう光景があって、後に平林たい子から「瀬戸内さんが女の文士の最後の人になりましたね」と言われる、深い感慨へと続く。
「自分の生涯で、この人に逢えてほんとうによかった、幸せだったと思える人が一人でもいたら、その人はほんとうに幸せな人生を送ったことになろう。生まれてきた甲斐があるというものである」(183頁)
瀬戸内寂聴はなんと幸せな人であろう。そして、私たちもまたその幸せをわけて頂いた果報者である。
最後に、本書では横尾忠則が描いた作家肖像画53点もオールカラーで収録されていて、これもまた絶品であることを書きくわえておく。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。
紙の本
あの大作家たちがこうだったのか、というおもしろさ!そして、寂聴の懐の深さ、正直さに勇気付けられる。
2008/11/16 12:30
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
瀬戸内寂聴が、交友のあった作家たちを思い出しながら、その作家たちとの日々を描く。寂聴自身が、書き出すと彼らがあの世から教えてくれるような気がした、と書いているように、実に詳細でくっきりとしたその記憶に驚く。もはや、「歴史上の人物」になった大作家たちの在りし日の姿が、生き生きと、さっきまでそこにいたかのように描写されるので、とても興味深くおもしろく読んだ。
三島由紀夫は、自分の体へのコンプレックスから、身体改造に熱心になったとはよく書かれていることだが、寂聴も、出会った頃は、青白くひ弱な体格だった、と書いている。そして、その後の変化、楯の会への傾斜、そして、あの自衛隊での切腹事件に至るまでが綴られ、当時のあの異様な事件と雰囲気をまざまざと思い出した。川端康成がノーベル賞をとらないで、三島がとっていれば、彼らは、それぞれ自死しなかったのではないか、と書かれている辺り、歴史の「もし」を考えるおもしろさを感じた。
谷崎潤一郎を彩った、彼の作品のモデルにもなっている松子さんの姿、また、他の作家たちのモデルにもなった女性の、寂聴から観た姿が活写されているのも、興味深い。さすが、あの女性と感心したり、これが、あの作品のあの人か、その華やかさ美しさをもはや感じられない歳月の恐ろしさ、といった感想を書いているところもあり、何だかその率直さに、人生の真実を見る思いがした。また、男性作家たちの、華やかな女性遍歴を読むにつけ、男というものは‥と嘆息もさせられるが、女もまた、同じか。
平林たい子など、女性作家は、その着ているもの、身につけている宝石などでも、その人となりを表している。寂聴の観察眼の行き届いていることに驚く。
丹羽文雄、遠藤周作らの晩年には、しみじみさせられた。丹羽が徐々にボケていく様子、遠藤が「死」をとても恐れていたこと。ここにも誰にでもやってくる人の世の普遍的な本当の姿があり、それは、心に深く残った。
瀬戸内寂長聴は、もう、85歳を越えたとか。この作品全体が、実は、彼女自身の人生を描き、懐の深さ、もはや怖いものナシの強さをしっかりと表すものになっている。それによって、読むものは強く勇気付けられる。
この本のもうひとつの魅力である、横尾忠則のイラストも特筆に価する。文ではなく、画でも、一目でその人となりを描く。その天才というに値する画業の一端がここに現れている。
紙の本
人間愛を感じる作品です
2008/10/21 19:26
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:月光仮面 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の人間愛あふれる作品です。出会った著名人各々の考えや人生観を、日常の会話や生活からくみ取って、人間としてどう生きたかを語っています。共感できる部分が多く、時には「ホロリ」とさせられます。「文豪も、芸術家も、私たちと同じ喜怒哀楽を生きているんだなぁ。」と感じました。続編を期待しています。是非みなさんもご一読ください。