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紙の本
年貢の如く取り立てられ,余りにも無駄に使われ過ぎているこの国の税金に対する著者の怒りの書でもある
2001/03/29 18:16
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投稿者:宮本 惇夫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は,政府の税金無駄使いに業を煮やしたある1人の中年男が,会社を辞め仲間と拒税運動を展開する姿を活写した小説である。読んでいて溜飲が下がる,胸がスカッとする。
諸君,考えても見たまえ。中央政府,地方自体合わせて650兆円の借金,特殊法人という名の役人天国に注ぎ込まれる予算が年間4兆円。さらにウルグアイ・ラウンドに伴う6兆円もの農業補助金,銀行の不良債権処理のための60兆円もの資金枠,といった具合に我々の税金は湯水のごとく蕩尽されている。我々ビジネスマンは毎日,10円でも安いランチを探してビジネス街をうろついているというのに,である。脱税いや拒税したくなろうというものだ。
物語は『拒税のすすめ』を書いて会社を辞めざるをえなくなった主人公が,仲間を集めて拒税同盟を組織し,拒税運動を起こすことから始まる。拒税にはまず確定申告を拒否しなければならない。マンションは友人に売却して借りた形にし,財産は金の延べ棒に変えて隠す。税務署に尻尾をつかませないよう万全を期し,納税拒否に出る。その一方で,インターネットを使い一般に拒税を呼びかける。案の定,彼は国家権力から狙われ,挙句は地検特捜部に逮捕されるが,それは別件の外為法違反の容疑でだった。
しかし,主人公達が火を付けた拒税運動は政府や自治体自体を“税金泥棒”と呼ぶほどまでに盛り上がる。結局,国家権力は主人公を本来の狙いとした刑法や国税法違反で起訴することができず,外為法違反のままで起訴せざるをえなくなったところで,この小説は終わる。拒税運動は国家権力に勝ったのである。
税制という専門的なテーマを分かりやすく読みやすい小説の形にした著者の試みは成功だ。留置所の中の描写もリアルで臨場感に溢れている。実際,いまの日本は拒税運動を起こさねばならぬところまで政府の堕落は進んでいる。為政者に是非読ませたい本である。
(C) ブックレビュー社 2000-2001