紙の本
読みごたえのある実録
2010/04/03 21:04
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
三歳の事故で失明し、46歳の時の手術で見えるようになったので、正確には「43年目の光」である。主人公にとっては、目が見なかろうと見えようと、問題ではなかったようである。目が見えなくとも積極的、挑戦的に生きてきていた。自転車に乗りスキーをやり、車まで運転している。無謀にちかいことまでやっている。数々の事業を立ち上げ、目が見えない時の人生だけでも劇的で驚嘆する。
最新医療で目が見えるようになってからの経験が、貴重な学術的事例になっている。目の網膜に外界の映像が映るだけでは見ることにはならない。その映像を脳が解釈する必要がある。長年見る能力を使用していないと、脳はその部分を他の機能に振り向けてしまう。その機能を回復するためにどうするか、主人公は自分でも考え試行錯誤し実行してみる。母親が目の見えない息子を特別扱いせず育てたことや本人の性格もあろうが、積極的、挑戦的に見ることを工夫する。
長年目が見えなかった人が見えるようになった時、どのようなことになるのか、見るとはどういうことか、についての学術的事項と、目が見えなくとも積極的果敢に人生をおくってきた人物の記録とが、紹介されている。貴重な記録であるとともに、読みごたえのある実録である。
紙の本
見えることと理解することは違うのです。
2010/09/29 19:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
46年目の光 ロバート・カーソン 池村千秋訳 NTT出版
3歳のときに遊び中の事故(薬品扱いの爆発)で両目を失明(片方は義眼)したアメリカ人の男性が、49歳になって、優秀な医師の手術で片方の目が見えるようになったことを作者がレポートしたものです。
社会福祉の本と思いきや内容は科学の本です。書き始めから延々と続くのは、主人公マイク・メイの生い立ちと成長過程、貫き通すのは、彼の好奇心の旺盛さと挑戦する精神の強さです。作中、女性に対する興味が多々記述されるのですが、目が見えない男性でも女性の裸を見たいというすけべ心は男性の本能です。後半は一変して、視覚・視力に関する科学的な分析解説とマイク・メイの対処が書かれています。
目が見えることと見えているものがなんであるかを理解することは別物となっています。視覚だけでは見えない。脳とつながりがあるのです。視覚障害者であった頃のマイク・メイは、障害者スキーで活躍します。しかし、片目が見えるようになったら、ゲレンデでころんでばかりなのです。驚くべきことに彼は目が見えなかったときにバイクや車の運転までしています。でも目が見えるようになったら、文字を読めないことを始めとして、スーパーマーケットで商品を見てもそれが何なのかがわからいのです。さらに、片目だけだと遠近感がわからないとか、立体が平面に見える。常人の場合は、脳が指令を出して意図的に見え方を偽装するというシステムが働いているが、マイクの脳にはその機能がないことがわかります。
作中にマイクとは無関係の別の女性が、見えるようにならないほうがよかったとつぶやくちいさな記述があります。視覚障害者であった頃は福祉の恩恵で収入を得て生活していけたが、目が見えるようになったら、働かなければならなくなった。されど、長年の暮らしで働く技術が身についていない。彼女は、こぢんまりとした暮らしでよかったと嘆きます。
マイクには、彼をまっすぐに導いてくれた母親、どうしようもなかたけれど母親と離婚・離別した父親、姉、それから妻とふたりの男の子がいます。
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今年1番の本になるかもしれない。
最近はもっぱら、視覚を通した認識の学習のメカニズムに興味があったわけだが、その件に関してこの本の主人公であるマイクメイの経験はとても勉強になった。マイクは3歳から目が見えなくなっていたが、46歳になって手術により再び光を取り戻す…
マイクは光を取り戻し、動くものなどの認識は上手くいったが、奥行きや顔の細かなパターン等を手術後も上手く感じることが出来なかった。二次元的にしかものを見ることしかできないということである。それにはマイクが光を失った時期が問題であるらしく、そのような複雑な視覚に関するニューロンのネットワークの形成が出来ていないということだった。
私達がバナナを見てバナナだとわかるのは、バナナを認識するために形成されたニューロンのネットワークを通じて電気信号が移動するためだ。このバナナニューロンは実際にバナナを見るという経験を通じて強化されていく。特定のものにたいして、特定のニューロンネットワークを形成するわけであり、膨大なニューロンが必要なわけだが、そのような大量のニューロンは幼少期にしか用意されておらず、その結合もどんどん遅くなる。
あげくに、ニューロンには可塑性という性質があり、永く使われない機能は違う仕事をするように転換させられてしまうという。
これと発達心理学を合わせれば、自分の理解したいことがもう少しクリアになるのではないかと感じた。
しかしながら、この本は脳科学として面白いだけではない。マイクという人間の生き方やその軌跡はとても励まされるものだ。
目が見えなくても、電柱にぶつかったりすることを恐れずに走り出すこと。 これは簡単に出来ることじゃない。 好奇心を持ったら、動き出さなきゃいけないんだ。
そんなメンタリティで彼は全盲のスキーチャンピオンになる。常にベンチャーでビジネスを起こそうとしている。
そして、彼は今も医者に正常な視覚は戻らないと言われたにも関わらず、全ての感覚を駆使する事により、人並みの認識を手に入れようとしている。
科学と啓発のバランスのとれた、読んで良かったと思える一冊である。
そして学問的に参考になっただけでなく、マイクメイという人間の生き方自体に教えられるものが沢山あった。何事にも好奇心を持つ事、そしてその好奇心を満たす為に冒険することの大切さを彼は教えてくれた。
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バスルームに向かおうとするジェニファーの手をメイがつかんだ。
「きみをよく見たい」
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ちょっとしたワークショップに参加した。
“Dialog in the Dark”
http://www.dialoginthedark.com/
ほんとうの暗闇の中、
ガイドに導かれて進んでいく。
そんな。
すごく期待していた。
視覚を奪われるということで
目から鱗のような
頭を丸太で殴られるような。
でも、
そんなことはなかった。
全然。
しかし、考えた。
考えた。
結局、視覚を奪われたことくらいで
人の本質は変わりはしないのだ。
きっとそれが本質なのだ。
目が見えないこと。
それは恐ろしく、
それは不便で、
それは悲しいこと。
でも、実はそんなことは全くない。
それを見つけた。
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ぶ厚さにひるんだものの、なんとか読了。
見えるようになってからのエピソードで一番おもしろかったのが
コストコで太った女性とフォークリフトを間違えた場面。
マイク・メイは視力があってもなくても素晴らしい人生を送ったに違いないと思う。
映像化されたら誰がマイク・メイを演じるのかに興味があります。
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子供の時分から「目が見えること」が不思議でならなかった。超能力や超常現象よりもはるかに不思議である。「幽霊を見た」ことよりも、まず目が見えることを驚くべきなのだ。
http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100413/p4
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時系列的が時々前後するのでフィクションでコレをやられるのはちょっと頂けなかった。
ただ、もの凄いアクティブな人で、クリエイティブなんだと感心させられた。
視力が無い事をハンデとは思わない。
何にでもチャレンジをする好奇心。
視力を取り戻した時の戸惑いと、理解不明の画像との苦悩。
思った以上に医学的なので面白かったです。
『知識がないと見えてても見えないのと同じ』っていう件には納得させられました。
事もなげにやっているコトが、実は非常に高度なテクニックを必要としている。
やっぱり 脳 ってすごい。
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「目が見える」という不思議に出会えた、素敵な本だった。
主人公の不屈な精神を通して、たとえ科学や医学が「可能性ゼロ」と宣言したとしてもあきらめないことの大切さを教えられた。ゼロという確率をひっくり返す可能性を人が持ちうることに感動!
人間の知恵はすごい。そして、何事にもチャレンジし、希望を持ち続ける心のたくましさが、人生の醍醐味を味わわせてくれる秘訣であることに、すごく共感した。
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メイは3歳のとき事故で失明した男です。全盲ではあっても、夫して父として、事業家として幸せに暮らしていた46歳。
ある日妻の眼科健診について行って、ついでに自分も診てもらうことになり、「あなたの目は手術で見えるようになるでしょう」と言われます。
ごく個人的な事情、親子関係や夫婦生活の細部までも語られていて、ビックリしました。
これを話す人(本人・家族・友人)と、聞き出して書く人(密着取材に2年かけている)と、出版する人がいるアメリカって、エライ国だと思います。
見えなかった人が視力を得る。それが、すなわち幸運すなわち幸福ではないことにも驚きました。
晴眼者である私の想像力なんてお粗末なものです。
見る訓練をせず、見える人としての訓練も受けていなかった人が、ずっと目が見えていた人の世界で暮らす困難にまったく驚かされ通しでした。
また、奇跡の人生と普通の人生の間の垣根は案外低いものなんだとも思いました。
奇跡の人生に飛びこんだメイは、少し勇気のある普通の人です。
「少しの勇気」こそ、誰でも持てそうでいて実は大変な魔法の杖なのかもしれません・・・・。
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すごい勇気と冒険の物語だった。視力を取り戻した時の喜び、戸惑いが、まるで体験しているかのように伝わった。レーシックでさえ怖いのに…、
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年末年始に読んだ本をもう一冊。
主人公は3歳のころに、化学薬品の爆発によって角膜を損傷し、光を失った。決してあきらめない性格と、気丈な母に支えられて、やがて幸せな家庭を築き上げる。妻のコンタクトレンズの検診で訪れた眼科にて、視力の回復の可能性を告げられて、主人公は再び光を取り戻す。ノンフィクション。
詳細はネタバレしても仕方ないが、プロットだけならば昔からある非常に陳腐な話のように感じる。
この本を読んでいて非常に興味を覚えたのが、目が見えるということは経験と密接に関係しているということである。
以前、ある記事を読んだ際に、「風鈴を知らないフランス人は、風鈴を見ることができない」ということが書かれていて不思議に思ったことがあった。
本書では、主人公が新しいものを見るたびに、戸惑う様が書かれている。最初は、人の表情や男女の差を顔から判断することすらでき無かった。
もう一度翻って考えてみると、様々な知識や経験を経ることによって、同じものを見ても見え方が変わってくるということが言えるのだろう。
私はよく街中で変なものが落ちていることに気がつくことがある。同じ通りを通った同僚は全く気付かなかったらしい。
学ぶこと、経験することが、”見る”というありふれた行為を豊かなものにできるのだろう。
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好奇心をもつということ、挑戦するということの大切さを学べた。
本当に読んでよかったと思える本。
女性にとっては、ちょっと不快な部分もあったので星4つ。
でも、きれいな部分だけじゃなくて全てさらけ出してくれたところが主人公らしい。
結論、ほんとにスゴイのは主人公の奥さんだと思う。。笑
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三歳の時に事故で視力を失ったマイク・メイが、幹細胞移植を受けて46年ぶりに視力を取り戻す話。話としても面白いし、視覚という、私たちが普段何の意識もせずに行っている作業が長年の学習の賜物だということがものすごくよく分かる。ヒューベルら以来、視覚遮断の実験はネコを使ったものが大半であったが、当然のことながらネコは自分の体験を語ってくれないので、この人の体験はなかなか貴重だ。・色と動くものは理解できるが、その他の視覚体験は「外国語をしゃべるようなもの」で、意識的に解釈をしないと理解不能だという。(三歳よりも以前に視力を失っていたら、色と動きも理解できないんだろうか?)・特に相貌や奥行きの認識は全くダメで、人の顔を見てもそれが誰なのか、男なのか女なのかも判別が難しいし、車に乗っていても前方にある道路標識に近づくにつれ、それに衝突せず、下を通り抜けるということがなかなか分からない。象を見ても横から見るとわかるが、後ろから見ると分からない。・ホローフェイス錯視のように、顔と奥行きと両方の認知が係るようなものはもちろん、単純な水平垂直錯視などもこの人にはない。■人間がものを見るという行為の多くの部分は予備知識と予想を土台にしている
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3歳の時に事故で失明し、中年になってから再び視力を取り戻したアメリカ人男性の半生を描くノンフィクション。
あつおくんに昔薦められた本。
この本のコンテンツとして最大のものは長期間目が見えなかった人が視力を取り戻した時に何が起こるか、ということ。
科学?医学?生物学?としてもとても興味深かったし、主人公メイの人生に対する姿勢や、それがどの様に育まれたのか、という人物伝としてとても面白かった。
まず、生物学?的な内容で印象的だったのは、「見ること」に必要な脳のニューロンがしかるべき成長期に使われない場合、他の目的に使われるように変化し、それがもう戻ることはないという話。
ヒトがまだ進化における変化への対応力があればこそ、だなと。目的変更が幼少期のみだというのが大人になってしまった今となっては悲しくもある、、、。
人物伝的には、彼は日本でいう乙武さんみたいなひとだなあと。
好奇心でいっぱい。好奇心やチャレンジ精神に従って、いろいろ経験をしていく主人公を見守り続ける親のタフネス。
好奇心ってブレイクスルーのために大事過ぎる。
「見る」為に手術するのではなく、「見ることとはどういうことなのか」を「知る」ために手術した。というセリフが、主人公の心のありようを表している。
目に関するドラマがあればこその書籍化だと思うけど、それがなくても、相当気合の入った人生を送ってる人だから、より面白かった。
彼の奥さんと友達になりたい。
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今まで46年間、全く目が見えない方が視力を得る
どういう事だろうか?その世界は
想像以上だった。視ると言う事は
視界に「モノ」を捕らえる事だけでは
「経験の蓄積」が具体的にモノを言う
世界だと・・・