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何故産業革命はイギリスで起きたのか。産業革命が起こる前の社会と以後の社会は何が違うのか。
経済のみならず文化人類学的視点から、大きなスケールで産業革命の通説を切る名著。
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過去のデータを詳細に分析し、現在に至るまでどのような経済活動をしていたのか、そしてこれからどうなって行くのかを大胆に論じた経済本。 上巻・下巻と2部構成になっており、上巻では主に産業革命が起こった18〜19世紀以前の経済の動向に焦点をあてて推論を展開させている。
本書では経済の変遷を論じるにあたり、一人当たりの収入を主要な指標として時代時代の経済状況を測定しているが、そこに「マルサスの罠」という単純なるも説得力の高いメカニズムを導入して、過去の経済史がどのような因果関係で栄枯盛衰してきたかを解説している。
マルサスの罠とは、技術革新による短期的な所得の増大が人口の増加で相殺されている、というもの。 物質的生活水準が上がれば、それに伴って出生率も上がり、死亡率も低下するが、人口が増加してゆくに伴い、物質的生活水準がげらくするらしい。 産業革命が起こる1800年以前はマルサスの罠のメカニズムで物質的生活水準が向上と下落のサイクルを繰り返していた模様だが、驚くことに紀元前1000年まで遡ってみても、西暦1800年時点の個人所得額とそれほど大差が無い範囲で上下している。
西暦が始まってからのある時代では、紀元前よりも貧しい生活(物質的生活水準という意味で貧しい)をおくっていたと聞き、驚きを隠せない。 これまで人類は、多少の乱高下はあったものの着実に右肩上がりの線を描いていたと思い込んでいた私にとっては、新しい発見であり、歴史に対する興味も沸き起こってきた。
上巻では主に1800年以前の経済史の歩みが主な内容だが、下巻では1800年以降、特に産業革命がもたらした「大いなる分岐」という経済史上重大なターニングポイントと将来経済はどう変遷するのかについて書かれている。 歴史もそうであるが過去を紐解いてみるのは面白いものである。
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面白い!
今の豊かな世界になったのは産業革命からだが
その前の経済は何万年もの間まったく豊かには
なっていなかったことを理論的に論証している。
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計量経済史という視点から、超長期の世界経済を、産業革命以前と以後に分けて論じた興味深い著作である。(日経・福田慎一:2009/12/27)
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西暦1800年までのマルサス的経済、1800年の産業革命、そしてその後の大いなる分岐の3つの時期に分けて世界経済史を眺める。ビッグ・ヒストリーの試み。こういうの大好き。
本書からわかるのは、マルサス的経済の頃は、資料が基本的に少なく、曖昧なのに理論的には理解ができる一方で、産業革命以降の経済は、資料が豊富であり、理論も多数あるにもかかわらずよくわからないということだ。しかも、産業革命についても多くの謎が残る。
近代経済学や開発経済学の無能っぷりを連ねる一方で、用いられる手法はやはり経済学のものである。
大きな歴史のうねりの中で、今いるここは、どんな時代に位置づけられるのだろうか。とりあえず今、経済学が面白いことになっている。
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言いたいことは非常に少ないがそれなりに斬新(原始時代から産業革命まで、人類の生活水準は余り上っていない。富裕層の繁殖力の優位性が大きいことで文明が進歩し、英国で顕著だったことが産業革命の主因)。説得力を持たせるためにやたらとデータを引用しグラフを書くが、正直あまり説得力は増していないような印象。
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2010/03/22
「タイトル買い」。新石器時代から産業革命まで世界人口1人当たり所得の変化がほとんどなかったという事実はまことに興味深い。「どこで調べたの、こんな数字」って驚くくらいデータによる仮説検証もしっかりしている。が、いかんせん文章が冗長で、読んでると眠くなるのが難点。
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うーん。。そもそも冗長だし、文章も読みにくいし、更に、分析が主観的過ぎて納得出来ないし。。
それにも関わらず、みんなの評価が高いので、下巻に期待 はするものの。。。
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産業革命以前の世界経済を描いた上巻。
産業革命以前の「マルサス経済」は我々日本人にとって他人事ではない。
経済成長の無い世界では人口量だけが一人当たりの豊かさに関係する。
ここ数年まるで成長しない日本経済と減る一方の人口。
まるでマルサス経済学の世界である。
自らの使命を知らぬ者に奨める。
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上巻では、マルサスの罠という、以下のような原理を説明している。
・各社会の出生率は、物質的生活水準が上昇すれば増大する。
・各社会の死亡率は、物質的生活水準の上昇にともなって減少する。
・人口の増加にともない、物質的生活水準は下落する。
ゆえに、以下のことが言える。
・死亡率曲線を上昇させる要因、たとえば戦争、病気の流行、衛生状態の悪化などは物質的生活水準の上昇をもたらした。
・死亡率曲線を低下させる要因、たとえば医療の進歩、公衆衛生の改善、平和と治安の確保などは物質的生活水準の低下につながった。
人類が産業革命以降、どのようにしてこのマルサスの罠から抜け出ることができたかについては、下巻まで読まないといけないだろう。上巻だけだと、著者の言いたいことは理解できるが消化不良。
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何が前提で何が結論なのか分かりにくい議論が多くて、通読は挫折。
興味深い指摘は多いが、その論証に納得感は少ない。
面白そうな箇所だけ拾い読みして無責任に楽しんだ。
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本書は産業革命に軸を置き、それ以前と以後で世界経済が如何に変容したかを丁寧に解説している。重要な用語として多数登場するのが経済学者マルサスが唱えた「マルサスの罠」という思考法である。
世界経済において物質的生活水準は、人間の出生率と死亡率の二つの相関関係で全て説明できてしまうというものだ。
つまり、出生率が死亡率を上回ると所得が減る。死亡率が出生率を上回ると所得が増える。
そしてこれらはいずれ中間点に戻り、この公式によって世界経済は常に変動が抑えられ、安定している。
というものだ。
世界経済は産業革命までこの公式から抜け出すことができなかった。
故に、題名にもあるように、10万年前から1800年の産業革命まで世界経済の生活水準はほぼ同じなのだ。狩猟採集時代から定住農耕時代に移行してもなお、人間の生活水準は相対的に変わっていないという事実は驚嘆だった。
本書では出生率、死亡率、社会制度、技術力等から、如何に産業革命まで何故世界経済が「マルサスの罠」から抜け出せなかったのか、そして何故産業革命によって世界経済が飛躍的に進歩したのか、を様々なデータを挙げて検討している。
知的好奇心に駆られる実に良い学術書である。
何より、原住民族も英国紳士も相対的には皆等しい生活水準だった(あるいは前者が後者を優越する)というのは考えもしなかった。
本書は3部構成であり、マルサスの罠、産業革命、それ以後、の3点について書かれおり、上巻はマルサスの罠を非常に詳しく記してある。
読むに当たって経済学の知識は不要なので、経済専攻じゃない人にも優しい。
新しい思考法を得るために的確な踏み台を用意してくれるので読むといいと思う。
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上巻下巻のうちの、上巻。
世界経済の歴史はひとつのグラフで表せるとする。そのグラフは3つの問題を提起する。1つは、紀元前1000年前から西暦1800年までの人口一人当たりの所得、生活水準はほとんど変わっていないのはなぜか?これをマルサスの罠という。2つめは1800年を境に爆発的に伸びている国と減少している国があるが、それがイギリスで、1800年ごろの産業革命のときにはじまったのは何故か?3つめは、その結果「大いなる分岐」が起きたのはなぜか?
上巻では古代から1800年ごろの産業革命直前期までマルサスの罠(マルサス的経済モデル)とし、その論証を行っている。そのモデルは3つの仮定で表わされる。
1、各社会の出生率は物質的生活水準が上昇すれば増大する。2、各社会の死亡率は物質的生活水準の上昇にともなって減少する。3、人口の増加に伴い物質的生活水準は下落する。
この3つの過程で1800年までの経済史をぶったぎっている。
上巻で示されるのははマルサスモデルが適用できるという論証のみ。その論証も際どい。書き方もぼかしつつ(推論だから?)。マルサス経済モデルという切り口で見直すのはおもしろい視点だと思う。下巻に期待。
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重厚な感じのする非常にきれいな装丁の本で、タイトルが「10万年の世界経済史」。どことなく「銃・病原菌・鉄」に近い雰囲気があり、そういう性向の持ち主には、非常に訴求力の強いパッケージである。というか、実際のところ著者もジャレド・ダイヤモンドを強く意識しているようである。しかしながら、実際のところ詳しく扱われているのは10万年ではなく、良くて紀元前、下手をすると1200年代のイギリス以来といったところ。やや誇大広告といった趣が強いかもしれない。上巻の内容は、マルサス経済学的歴史の再検討だが、実際のところ上巻をすべて掛けるほどの内容が書かれているとは思えなかった。マルサス経済学とは、基本的には、「実質所得の過剰な状態は人口増を招くため、技術の進歩は長期的な所得の増大に繋がらない」ということを論じたものである。結局のところ、マルサス経済学のモデルは、一人当たりの実質所得を、生存必要な最低の所得に追従させるようなフィードバック制御系のモデルに相当する。したがって、過去の社会がマルサス経済学モデルに従うかどうかの検証は、ゲインや入力を変化させたときに、出力が発散するかどうかの議論になるべきなのだが、どうも著者にはその辺のモデルがどのような挙動を示すかといったイメージがないらしく、的外れな議論がだらだら続くだけであった。それだけなら19世紀の経済学の議論と何ら変わるところはない。いろいろな統計的資料を集める手腕にだけは感服するが、ハーバードのPh.Dでもバカな人がいるんだなぁ、という印象しかない。
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上巻の初めに数ページの著者によるまとめがあり、ほぼそれで言い尽くされている感もある。1800年頃まで、効率性がほぼ一定であったのに、産業革命以降爆発的にそれが増大したのはなぜか、という内容。1500年ころから現代までの分析がほとんどで、邦題の10万年、、、はちょっと言い過ぎか(原題は A Farewell to Alms)。「豊かさ」という問題を扱っているが、統計が整備されている現代はともかく、昔の人々の豊かさをどう評価するかという試行錯誤はちょっとおもしろかった。体格の良さなのか、子供の数なのか、労働時間の短さなのか、エンゲル係数なのか。。。産業革命以前の世界では、収穫は全て土地から得られており、一人ひとりの豊かさを決定するのは人口であった。人口が増えすぎると一人一人は貧しくなるため、産児制限や間引きはどの文化でも常態化していた。著者はこれを「マルサス的世界」と呼び、この基本原則は狩猟社会(人口は極めて少なく、労働時間が短いという意味では豊かな社会)でも農耕社会でも変わらなかった。マルサス的世界は、下方移動の世界であり、社会の下層に属する人々は子孫を残せず、上層の人々も世代を経るにつれ、下層に移動する子孫の割合が多くなっていった。ただし、豊かな人たちの子孫が生き残ることにより、読み書きや計算能力が広まっっていった。また、労働時間は長くなり、社会の中の暴力も減少した。産業革命以降は土地というしがらみがなくなり、指数関数的に効率がよくなっていった。