クルアーン入門

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投稿者：オタク。　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

日本語版クルアーンの「意味の翻訳」の歴史やイスラームの時代におけるユダヤ教の変化については面白かった。
　シーア派がスンニ派が「クルアーンの改竄」を唱えていたという話は知っていたが、シーア派が認めない「正統カリフ」ウスマーンの権威を認めないというところのようだ。しかしウスマーン本以外のクルアーンの存在をシーア派が唱えていても、裏付けとなる写本は残っていないようなので水掛け論になってしまう。もっともウスマーン本が成立した時点で異本を廃棄したというので、人間によって廃棄された「アッラーの啓示」があった事になる。「廃棄された啓示」という概念があるというのはクルアーン自体に矛盾があるのを説明する為だろう。
　「クルアーンにおけるイーサー」はムスリムによる護教論だ。「土で鳥を形づくり、それを生きた鳥に変える奇跡」は新約聖書ではなくて「トマスによるイエスの幼児物語」の記述だ。クルアーンではナザレのイエスの受難と復活を否定しているのは、二元論の影響を感じてしまう。ローマ帝国やアクスムでの迫害を逃れた二元論の教団が預言者と接した「キリスト教徒」なのかもしれない。
　回族が使っている漢語の用語を使えばいいと思うが、昨今のイスラーム紹介の本にあるようなアラビア語の用語を片仮名書きして「理解したかったらイスラームの勉強をしてシャハーダを唱えなさい」と言わんばかりなところがないのはいい。
　クルアーンやイスラームを知るには「ジャーヒリーヤ」の時代の多神教の知識が必要だと思うが、神道のような体系的な教義はないようなので、破却された後に残った僅かな記録を元に知るしかない。