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ブラック企業という言葉が認知された当時、ペンシルハウスを売りさばく不動産業を描いた「狭小邸宅」の作者の次作は、ネットワークビジネスいわゆるマルチ商法にのめり込む若者を描く。
メーカーの関連企業で働く竹田は、ある日大学時代の友人からの電話を取るが、彼が誘ってきたのはマルチだった。
そんな話に乗る気はさらさらなかったが、社内では業績悪化によるリストラが吹き荒れ、昇給なしボーナスなし。
地元の古くからの友人は、地元で最年少の市議会議員としてデビューした。
俺はこの先もこのままなのか。
何度もかかってくる友人からの誘いに、一回だけとセミナーに参加したことから、マルチ商法にのめり込んでしまう。
スーツを着た不安げな表情の若者が描かれたマトリョーシカが並ぶ表紙、最後尾には脱落して倒れた人形が。
夢もなく希望もない、この社会構造は一体なんだ。
読者によって先はどうなるかの受け取り方が異なるラストで話は終わる。
ハッピーエンドに思えたと解説には書かれているが、これはどう考えても新しい破滅の未来を暗示していると思う。
「先ほどまで明るい光に満ちていたはずの外は、夕暮れとは思えぬほど暗く沈んでいる(本文より)」
いったんはまり込んでしまった生き方からは抜けられない。
業が業を積み重ねる連鎖が止まらない。
タイトル通り「ニューカルマ(新たな業)」だ。
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ネットワークビジネス懐かしい・・結局やらなかったけど、一時期かなり関連の人と仲良くなった時期も。
なんとなく空気感も嫌だったかな。
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マルチにはまる心理状態が上手く描かれていて、初めは胡散臭い、けれどもだんだんとのめり込んでしまう、までの心情が、主人公に限らず、誰にでも起こりうることだと感じた。
ラストをハッピーエンドと捉えるか、バッドエンドと捉えるかはその人次第。
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人生や社会を豊かにすると喧伝するネットワークビジネス。のめり込んだその先にあるのは、天国か地獄か。現代社会の闇を描く問題作。
普通なら稼ぐことのできない収入と人脈が実現できるのが、このビジネスの魅力。現状に満足できない者や理想が高い者がはまってしまうのがよく分かる。でも、必ずといっていいほど、この手のビジネスの成功者が、海外旅行や豪華クルーズでパーティーとかで幸せを感じるのが理解できない。
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マルチ商法をテーマにした小説。
かつて勧誘を受けたことがあり、マルチ商法について色々と調べる機会があったので、「ああ、確かに勧誘員の人はこんな感じだったな笑」と思い出したながら楽しく読めました。
主人公にとってまだ救いがあるのは、人を騙したいとは決して思っておらず、何とか世の中のためになることをしたいと考えていること。
最後の結末は、読む人にとって捉え方が変わるかもしれませんが、私は好きな終わり方でした。
単純な一部構成ではなく、もう一展開入れてきたところは良かったです。
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非常に読みやすい物語展開だった。
周りの状況よりも、主人公の内情が細かく描写されており、入り込みやすかったためだと考える。
満足も不満足もしない今、これまでの人生の中でなにか一発逆転を狙って手を出してしまい、友達、家族、親友、お金を失い、同じ失敗を繰り返す。人の弱いところ鮮明に描いていて、自分もこうなってしまわないかな、と考えてしまう展開だった。
一方、読めてしまう展開だったのでそこが面白みにかけるかなぁ思い、評価は3で。
20200202
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あるサイトでこの小説がお勧めされていたので、
興味を持って、読んでみました。
この方の小説は初めて読みましたが、
結構、良くも悪くもクセのある小説ですね。
(面白くない、という意味ではありません。)
もともと興味を持ったきっかけが、
ネットワークビジネスについて知りたい(やりたいではない、笑)、
というものだったので、
その目的に関して言うと、小説を通じて面白く
ネットワークビジネスについて理解することができました。
小説自体の面白さは、ちょっと展開が早くて(というより少し雑で、ただそれもまた著者の個性なのでしょう)、
最後の終わり方も著者特有の終わり方のようで、
自分の好みとは少し違うなという感覚なのですが、
好きな人は好きというか、ハマるのではないかと思います。
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マルチ商法を題材にした小説。久しぶりにまっすぐなエンタメ小説を読んだけど、めちゃくちゃオモシロかった。今も昔も形を変えて存在し続けるマルチビジネス(またの名をネットワークビジネス)にはまってしまう1人の若者を主人公にして幸不幸を描いていく。おそらくめちゃくちゃ取材をしていることが文章から伺えてとてもリアルだった。会社でサラリーマンとして働いていて感じる何となくの虚無感が文章からにじみ出ている。マルチをネズミ講と同等と見なして、あきらかに胡散臭いと思っているのに自分の環境や立場が少し変わることでコロッとハマってしまう怖さ。そして一度壊れた人間関係は元に戻ることはなくて孤立を深めていく残酷さ。その結果、見ず知らずの人をどんどんマルチの渦に巻き込んでいく地獄さ。
対比として圧倒的な「正しさ」を持った友人を登場させている点も興味深かった。文庫版の解説にもあったが、終盤にかけてマルチが主張する「正しさ」と社会が主張する「正しさ」が溶け合って結局何が正しいのか分からなくなってしまう。巻き込まれていって抜け出せない人が後を絶たないのは、善悪の区別が曖昧になるからなのだとよく分かった。先が不透明で夢の見れない国において若者たちが夢見て向かう先がマルチだなんて悲しすぎるけど、その気持ちが痛いほどによく分かるので余計に辛い…自分の努力が目に見えてお金に還元されて承認欲求も満たせるのだから。幸い今まで誘われたことは一度もないけど、もしやっている人がいればこれを読んでみて欲しい。
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マルチビジネスの手口や会員の心理等が、よく描かれていて興味深く読了しました。以前携わった(ニュー○○)の記憶を思い出しました
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「給料とは別に、百万円入ってきたら、良いと思いませんか?」
勤めていた会社の業績不振によるリストラの危機で将来への不安を抱えた主人公。旧友からの誘いで、初めは否定的だったネットワークビジネスに次第にのめり込んでいく様子を描いた作品。
(感想)
自分も、ネットワークビジネスには「成功、夢、仲間」という甘い響きの言葉を餌に人々を騙してお金を儲ける悪徳なビジネスというイメージがあり非常に嫌悪感を持っている。
ストーリーの序盤は、そんな悪質なネットワークビジネスにのめり込む主人公が破滅の道を辿る物語だと思って読み進めていたが、
途中から、「あれ、ネットワークビジネスって、やり方次第では誰も損をせず、必ずしも悪いものではないのでは…?」と思ってしまうような説得力があり、読み手の価値観やスタンスが足下から揺らぐ瞬間があった。
結局のところ、そううまくはいかないのだが、ネットワークビジネスにハマる人の心理のようなものを擬似体験するような構成となっていて、単純にネットワークビジネス否定本ではないという点に著者の筆力の巧みさを感じた。
不安を抱える中、騙され、裏切られ、懲りずに何度も絶望を経験した主人公がストーリーの最後にした決断は果たしてハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは、読み手により意見が分かれるところだと思ったが、主人公の本気で人を幸せにしたいという気持ちは本物だと思わせるような描写もあり、不思議な読後感だった。
「自分は絶対にネットワークビジネスなんかに騙されないぞ」と思っている人ほど楽しめる内容だと思います。
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随分前、仕事の関係上でどうしても断れずア●ウェ●の講演会を聞きに行ったことがあります。
講演自体はプラス思考をテーマにしたもので、私生活でも役に立つ素晴らしいもので、その後も特に勧誘されることもなく実害はありませんでした。
宗教やネットワークビジネスには、様々な人間模様がありそうで小説のネタにピッタリかもしれませんね。
西尾潤さんの「マルチの子」も読みました!
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これも一気に読んでしまった。闇、、、
解説も面白かった。最後をハッピーエンドと見るか破滅の始まりとみるか。
私は闇だと思うし、、、依存症のように見えた。
主人公の妹との対比がすごかった。正当な道で自分の夢を目指した妹。をバカにしていてマルチにハマる兄。
そこは気づいたんだけど、タケシとの対比については解説を読むまで気づかなかった。世の中をよくしたい、何か社会の役に立ちたいという同じ思いのはずなのにベクトルがずれるとマルチ布教に。
そこでタケシと主人公の違いは、よく人を見ているかどうかというところではないかと思う。自分がよければいいというフィルターを通して見ていた主人公。親や他の人の状況を聞き取っていたタケシ。
身につまされる。
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マルチ商法をテーマにした本書。
途中までは、これ系のよくある話。パッとしない独身男性が、マルチ商法の世界に出会い、運よく成功していくというもの。
しかしある時からマルチが上手くいかなくなり、幼馴染に救われる、というのもありがちな展開。
そこから再び、主人公はマルチにハマる(?!)。
その企業名が「ニューカルマ」。最初のマルチとは異なり、社長の熱い想いと真摯な商品開発に、主人公は惹かれていく。
しかし結局、ニューカルマも「偽物」だったことが発覚。
商材が引き起こした健康被害に対して、強い自責の念を持つ主人公。それから、幕間に挟まれる、幼馴染との過去。その2つが交差するように物語が進んでいき、結末を迎える。
ありがちなテーマから始まった本書が、ちょっと意外な結末を迎えるのが面白かった。
筆者の前作の「狭小住宅」も面白かったけど、こちらも良かった。
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サッと読める長さで坂道を転がり落ちていくようにネットワークビジネスにハマる疾走感が2回も味わえる素敵な小説
一回懲りたはずがもう一度ハマるとか同じ業界の中で人員がグルグルしてるとかその辺が怖いな〜と思うなどでした
ラスト搾取側に回るのがちょっと不自然だったかな?この主人公みたいな他人を通じて自己実現するタイプは永遠に利用される側のマインドに見えるし、ビジネスを立ち上げる側に変わるならそこに至った経緯を書いて欲しかった
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この著者は登場人物や背景をあまり明確に表現しない。
ただ話の展開を楽しみたい方向け。
私は鮮明に想像出来るような文章が好きであるにも関わらず、読み進められたのにはきっかけがある。
大学の友人がAmw○yにハマってしまい
「お願い!ちょっとだけ!話だけ聞いてくれればいいから!」
と渋々講演会に連れて行かれた経験があるからだ。
まさにまさにという感じ。
陰謀論や宗教などと同じである。
いくら商品が素晴らしいから、夢を持ち続けることが美しいからと言えども、人に胸を張って紹介できる仕事ではない。
それでも一度、どうしようもない程に心酔してしまったらもう抜け出せないのだろう。
顔つき、喋り方、"普通の人"とはすべてが違う。
作中ではポロリポロリとその心情を語る文章があるものの、そこまで共感できる訳でもなく、何をどうしてまたハマり続けてしまうのかというのも曖昧だった為、自身の経験から「あるある!これこれ!」と思いながら読めたのが良かった。