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紙の本
南極で心臓の音は聞こえるか 生還の保証なし、南極観測隊 (光文社新書)
著者 山田 恭平 (著)
南極大陸の奥に進むと、静かすぎて己の心臓の音が聞こえる…。そんな伝説めいた話から南極を目指した著者は、第59次南極地域観測隊のひとりとしてかの地に足を踏み入れ…。非日常が...
南極で心臓の音は聞こえるか 生還の保証なし、南極観測隊 (光文社新書)
南極で心臓の音は聞こえるか~生還の保証なし、南極観測隊~
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商品説明
南極大陸の奥に進むと、静かすぎて己の心臓の音が聞こえる…。そんな伝説めいた話から南極を目指した著者は、第59次南極地域観測隊のひとりとしてかの地に足を踏み入れ…。非日常が日常的に起こる約1年4ケ月の南極滞在記。【「TRC MARC」の商品解説】
「南極大陸を奥へと進むと、まったくの無音になる。そこでは自分の心臓の音が聞こえる」——若き科学者による驚きの南極越冬記。【本の内容】
著者紹介
山田 恭平
- 略歴
- 〈山田恭平〉1988年栃木県生まれ。東北大学大学院理学研究科地球物理学博士課程後期修了。博士(理学)。長野県環境保全研究所飯綱庁舎環境保全特別研究員。第59次南極地域観測隊。
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紙の本
南極での日常生活がどのようなものか、リアルに詳細に描いた1冊
2021/12/02 18:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本は昭和基地という拠点を南極に持っており、毎年越冬しつつ観測作業を継続しています。その越冬隊の日常とはどういうものか、越冬隊の一員となった著者の滞在記と呼べる一冊です。
南極大陸と言っても面積は日本の37倍(オーストラリア大陸より広い!)もあり、平均標高は2000mを越えます。日本でさえ、平地と標高2000mの山岳地では気温その他が大きく異なるように、南極も海沿いと内陸では気候が大きく違って来ます。実は昭和基地は南極大陸本土にはなく、すぐ傍の東オングル島という島に設けられています。越冬隊の気象観測員である著者は、昭和基地だけでなく、標高の高い内陸への観測チームにも参加し、その気候の大きな違いも紹介されています。
本書の特徴として、著者の文体が妙に斜に構えているというか、常にユーモアを交えている点があります。
”(観測隊に参加した)おかげで貨幣制度が怪しくなったり、服はガムテープで補修するものではないということを忘れたり、33人以上人間がいるとコアリクイのように威嚇するようになったり、公衆浴場の先客にたいして「おつかれさまです」と声をかけそうになった”、”濡れた目出し帽は呼吸を遮り、溺れそうになる。雪上で溺れるのは新鮮だ。懸命に雪をかくために吐息は熱くなり、眼鏡を曇らせたり、睫毛や髪を凍らせたりする。いかにも南極だ。楽しんでいる。そんなわけがない。”、
”南極観測について書くにあたっては公序良俗に反した内容や観測隊の品位を貶めるような内容は書いてはいけないことになっている。しかし実物の観測隊は低給・低俗・低品位とバブル期の男に求められた三高とは正反対の道をまい進している。高いのは平均年齢と尿酸値だけだ”等々。
著者が足を踏み入れた最も過酷な場所は南極大陸内陸部、標高3800mのドームふじ基地です。昭和基地の年平均気温がマイナス10度前後なのに、ドームふじ基地では年平均気温がマイナス30度以下、最も寒い5月ではマイナス60度を下回り、昭和基地に戻った著者が「暑い!(あくまでも防寒具を着た状態で)」と感じるほどの過酷さです。しかし、著者特有のユーモアのある文体からは悲壮感は感じられず、だからこそ面白く読み進められるとも言えますし、そういう環境でもユーモアを持てるぐらいの神経の持ち主でないと南極では耐えられないのかもしれません。
宇宙飛行士の体験談とかは結構本になっていますが、南極滞在記というのは意外と少なく、その中でも面白く、気軽に読める1冊です。