ティアマトさんのレビュー一覧
投稿者:ティアマト
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2015/10/10 21:55
女にしか書けない両片思い
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雅文で綴られているため語られすぎることがなく、文中に描かれることのなかった余情が全編をとおしてたちのぼり、そのまま描いたら生臭さくなってしまいそうな花柳界の内側が、その外面と同じようにきれいなまま映し出されている。
女の権利云々が言われるようになってから名ばかりが大きくなって、女は弱くなったように思う。樋口一葉の描く女は幸せを掴むことが許されないうえに待つことしかできない。それなのに、本質的に現代の女よりも芯がある。でもやはりそこには弱さもり、それをさらけ出すことができずに苦しむが、「にごりえ」の結城にしろ「十三夜」の録之助にしろ、どこかでその弱さを認めてくれる男も描かれていて、読んでいて救われた。「たけくらべ」の藤本と美登利の両片思いも、女にしか描けない切なさと救われなさで、現代の恋愛小説以上に胸が締め付けられた。
弱いからこそイニシアチブを握ろうとして、強いふりをする女たち。そしてそこにプライドを持っているから、一葉の描く女はどうしようもなく哀しくてうつくしい。
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