hiball555さんのレビュー一覧
投稿者:hiball555
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紙の本すっぽん心中
2016/02/27 09:57
描かれている「ほんとうのこと」
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人に言いたくない記憶や、思い出すだけで赤面して穴に入りたくなる記憶は誰にでもあるはずだ。
「死ねばいいのに!」と言われたあの日やスピーチが滑った結婚式。不審者呼ばわりされたあの夜。
ふとしたことでそんな思い出が蘇り、同じ目に会いたくないと思うあまりに周囲の目が突然気になったり、行動が余計にぎこちなくなってしまう。
読んでいてそんな気持ちが蘇った。
首が横を向いたまま戻らない理由は運転中に後ろから追突されたからで、ぶつかってきた車を運転していた女の尻に浮かぶラインを見て、その尻に顔をうずめたいと思った。
そんな正直な気持ちから始まるこの小説は、正直に向き合いたくない感情や出来事ばかりをさらしだす。
人生にはたいていドラマみたいなことは起こらないし、登場人物は俺やあなたと同じく美男美女ではなく、その理想があるだけに客観的に見ると滑稽で、かっこ悪いことこのうえない。
そんなことばかりがこの小説には書かれていて、だからバカバカしいことを描いているようで、それがリアルだ。
やるせなく、情けない。
それでいて美しく、愛おしい。
なぜなら俺やあなたが感じてきた、経験してきたことが描かれているからだ。
かっこ悪いけれど、グッとくる「ほんとうのこと」が描かれているからだ。
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