三鏡 智史さんのレビュー一覧
投稿者:三鏡 智史
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紙の本十三妹
2002/08/02 01:08
武闘派少女の活劇、と言うよりは……
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中国の「忍者」とも言える少女、十三妹を主人公とした小説。
さぞ痛快な活劇を繰り広げてくれる……と思いきや、
実はその旦那である書生青年の登場の方が遥かに長い。
この旦那は無罪の罪で苦しむ身内のために長旅に出かけるのだが、
慣れない旅をするばかりにあちこちで苦難に襲われる。
そして十三妹はそれを陰から手助けするというのが大まかな粗筋である。
「忍者」的な主人公だけに派手な活躍をしないのは理に適っているかもしれないが、
しかしあまりに彼女の印象は薄い。
彼女に密かに恋焦がれながらも敵対するライバルといった登場人物はいるが、
どうもその設定を生かしきれていない気がしてならない。
一読した限りでは青白い書生青年の成長物語といった感を受ける。
「切れる妻を持った情けない旦那の憂鬱」といったものが根底に流れる
テーマとしてあるようで、その辺りの描写は見事である。
受験勉強ばかりしてきた男が世間の荒波に揉まれつつ、
切れものの妻を持った事で思い悩む小説と言うべきか。
少なくとも扉絵の少女の物語と思って読むと肩透かしをくらうだろう。
この小説の主人公は彼女ではなく、その旦那の方である。
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