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Yostosさんのレビュー一覧

投稿者:Yostos

88 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

ブロガーは必携、わかりやすい文章を書く指針!

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

以前かな漢字変換のATOKのオプションとしてこのハンドブックを辞書化した『記者ハンドブック辞書』を使用していて大変便利でした。合わせてこのハンドブックを手元においておくと、非常に参考になります。気をつけて自分の文章をよりわかりやすい表現にしましょう。

かな漢字変換を使用していると、つい漢字を多く使いがちです。例えば「比喩」とか「便箋」とかつい書いています。このハンドブックを引けば「比喩→例え」や「便箋→便せん」などの言い換えを示してくれます。普段は「私」と書いてしまいますが、一般的には「わたし」とひらがな書きした方がよいとかなかなか気づきません。

これは記者が記事を書く時に使用される「新聞用字用語集」をベースに共同通信社でさらに練られたものです。ハンドブックは3~4年ごとに改訂されていますし、「新聞用字用語集」は今回10年ぶりに改訂され、この11版ではそれが反映されています。

これを参考にすれば、ある程度トレンドを押さえ一般的にわかりやすく正しいとされる用字がわかる仕組みになっています。

最近はブログで文章を書いている人も多いでしょうが、こういった一般的な指針を参考にしながら自身の流儀を作っていけば文章のレベルも上がるとはずです。

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紙の本

万年筆文化の貴重な記録

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、近い将来日本の万年筆の文化を記録した歴史的な資料になるだろう。
古山氏の万年筆にかかわる本は、97年末に自費出版された『4本のヘミングウェイ』が最初で、その後単行本として『4本のヘミングウェイ』が2000年に出版されたが現在絶版になっており探し回っているマニアも多い。そんな中、『4本のヘミングウェイ』の内容をさらに充実させ、イラストを追加したいわば完全版が本書である。
工業技術などというものは線形に進化しているのだから工業製品に関しては過去の製品よりも新しいもののほうが優れていて当たり前だと思っていた。しかし、こと万年筆に限っては、万年筆の黄金期である50年代や60年代のものが現代で復刻することが難しい。それは需要と供給ののバランスに起因するコストの問題であったり原料の入手の問題ももちろんあるけれど、それ以上に万年筆職人と呼ばれる人たちが当時自らの経験と腕により実現していた技術が失われ現代の技術でもってしても再現できないことが大きい。この本は数少ない現代に残る万年筆職人たちの貴重なインタビューで、華やかな当時の事情といかにそういった人に支えられた技術が素晴らしいかを教えてくれる。
そうして現代ではボールペンやシャープペンなど硬筆が主流となっているが、かつて「筆」という軟筆文化を持っていた我々日本人には万年筆がいかに豊かな文筆生活を送らせてくれるかを改めて感じさせてくれる。

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紙の本

紙の本グッドラック

2002/10/07 05:42

DVDアニメにもなった「雪風」の続編

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「戦闘妖精・雪風」の続編です。

前作では、戦闘機雪風とパイロットの零のコミュニケーションが大きなテーマとなっていましたが、今回は零が前作の最後で雪風との関係に自信を失っているところから始まり、零は変化し成長し雪風との信頼関係を築いていきます。そこには、以前の自分そっくりなパイロットが登場し、より自身の変化が対比して強調されています。

テーマとなっている「コミュニケーション」についても、雪風を中心とした地球の「戦闘機械」のほかに、今回は異星体もより詳細に描かれており、人類-戦闘機械という関係のほかに、人類の戦闘機械-異星体との関係がクローズアップされ、人類-異星体の関係に、「本当に異星体は人類と戦っているのか、彼らは人類のコンピュータと戦っているのではないのか」という大きな疑問、が投げかけられます。

前作はどちらかというと零と雪風の関係が焦点を当てた静的な物語だったのに対し、今回は、よりこのシリーズの謎の部分に迫って、動的に進行していきますから、前作よりもボリュームはありますが読みやすいかもしれません。

「敵は海賊」シリーズと並んで、神林氏のライフワークとも言える作品ですから、他の作品で彼を気に入られた方は是非!

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紙の本

紙の本戦闘妖精・雪風〈改〉

2002/10/06 06:29

旧版の読者にもお勧め

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1984年に刊行された「戦闘妖精・雪風」の改訂版です。
改訂部分は、主にこれから執筆されるであろう続編との整合性をはかるために加筆された程度にとどまるようです。

異星体との戦闘を描きながら戦闘機と人間との関係をテーマとしていた本書を1984年に読んだときは、非常SFとしておもしろいけど一般受けはしないだろうなと思いました。「敵は海賊」シリーズを読んで、同じような作品を期待した読者はちょっとびっくりしました。が、改めて読み返して見るとおもしろい。

一つには、神林氏の他の作品を読むとわかりますが、多くの場合「コミュニケーション」がテーマとなっていることが多いのがわかります。それも、堅固と思っていたコミュニケーションが、実は非常に脆いものだという認識を主人公が持っていくという状況での作品が多いですね。そういう目で雪風と主人公の関係を見ていくと興味深いです。



一つは、当時あまりにまだまだ一般的でなかったコンピュータの普及で、作中の雪風を描いた描写についてより作者の意図が理解しやすくなったと思います。そういう意味では、20年前にこの目線で作品を作れた作者には驚きを感じます。

DVDでアニメ化もされ続編も続くようですから、神林長平のライフワークの一つなるでしょう。旧作を読んだ読者もこれからの続編を読むために再度<改>を読み直しましょう。

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紙の本

紙の本宗像大社・古代祭祀の原風景

2008/11/02 21:57

秋の夜長、古代のロマンに思いを馳せさせてくれる一冊

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

中学の頃、福岡に住んでいた。夏休みに暇を持て余して「神社でも回るか」と思ったのは、太宰府天満宮の近くに住んでいたからだろうか。最初に目指して50kmの道のりを自転車を漕ぎだし、途中で挫折したまま一度も音連れたことがないのが宗像大社だ。
「大社」というのは平安のころ延喜式神名帳に大社として格付けされた神社。500ほどの大社があるらしいが、まぁ大きな神社なのだろうとなんとなく思っていた。が、この『宗像大社/古代祭祀の原風景』ってのを読んでみると、とんでもなく古い由来のある神社で、500どころか古代にはベスト5には入っていて、平安のまでもの凄い権勢をふるっていて、それが戦国時代まで続いていたらしい。

この宗像大社の神領、というか御神体のような扱いをされているのが玄界灘に浮かぶ沖ノ島だ。福岡に住んでいながら全く知らなかったが、この島は海の正倉院と呼ばれるほど戦後の発掘調査でお宝がざくざく出たらしい。縄文時代から聖域で、北九州地方の宗像大社が治める地域はもちろん、古代から平安まで数百年に渡って大和朝廷が盛んにこういったお宝を奉納し祈祷を捧げていたらしい。それが、島が神領で立ち入り禁止だったこともあり、宝物がそのまま1000年の時を経て出てきたのだから驚く。

遣隋使や遣唐使の無事を祈ったというのもあるだろうが、大和から遠く離れた地方にあってこの重視の仕方は、とても不思議な感じがする。当時のこの島の神通力と、もしかすると天皇家や大和朝廷の成り立ちに関わっているのでは?という説が出てくるのもうなずける。

この本ではこういった宗像大社の歴史と沖ノ島の成り立ちを解き明かしながら、今年沖津宮現地大祭で禁断の島に立ち入った作者の新しい情報が紹介されている。また、同行した夢枕獏氏との対談も興味深い。

秋の夜長、古代のロマンに思いを馳せるのに最適な一冊。

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紙の本

紙の本キマイラ青龍変

2006/03/26 00:45

弘です、わたしはこのとき目覚めたとです……

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

長かった。
以前文庫本で出版されたキマイラシリーズが加筆された単行本が発行されるようになってから、「今後は、文庫本ではなくまず単行本で先行して出版していく」という宣言がなされた。そして2002年に文庫本をまとめた最後の単行本『キマイラ 8』が出版されて以来初めての単行本だ。
今回は本伝から少し離れて、サブキャラクターである龍王院弘が宇名月典善に出会った若き日から格闘家(?)としての目覚めまでを追ったストーリーになっている。信じられないことにいじめられっ子だった弘が典善の導きで天性の才能を開花させていく過程は、この蛇のような二人だけにほほ笑ましい少年の成長物語とはなりえない。どちらかというと凄惨な場面も多いが、それでもちゃんと成長物語として成立しているところはさすがに夢枕獏。
そして、馬垣勘十郎も登場して、人間の常識を超えた技と技、力と力の格闘シーンが続く。もう、これは、『獅子の門』や『我狼伝』の世界だ。そして、キマイラシリーズだけによりエグい。が、男の子ならば血に沸き起こるものを感じずにはいられない一冊。

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紙の本

30年の総括は重い!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

思えば、最初に発行された年に父親が買ってきて熱心に読みあさっていた。「この本はズバリものを言っているすごい本だ」と父親は漏らしていた。当時漫画『サーキットの狼』が前後して連載が始まったのではないだろうか。わたしはちょうどその連載にはまっていて子供ながらクルマに興味を持ち始めたところで、この本にも興味を持ってよく父親の本棚から取り出して読んでいたものだ。それから父親は毎年買い続けていたので、自然とわたしも読むことになった。
さて、この本は最終版ということで新たなレビューはなく今までのレビューを再構成することでこの30年間の日本のクルマ産業を総括しようという企画になっている。スポーツカーの浮き沈み、好ましくもいつか消えたクルマ、珍車、1リッターカー、マークII vs スカイラインなどのテーマでそれぞれの年代からクルマのレビューをまとめてある。
今からクルマを購入しようという人には直接はあまり参考にならないかもしれない。が、70年代後半くらいからのクルマに覚えのある人には、とにかく懐かしい。そしてテーマごとに並べられることで、その当時は意識できなかったクルマ産業の推移の中での位置づけが理解できるようになる。わたしなどはほとんどのレビューは以前一度は目にしているはずだが、ついつい引き込まれてまた読みふけってしまう。
一時は「この著者はお金持ちだから、ちょっと指向が一般と違うだけじゃなかろうか」なんて思ったものだが、こうした構成で改めて読み直すと「やっぱりこの著者のクルマに対する眼力はすごかったのだな」と関心するばかりである。
この徳大寺有恒氏や三本和彦氏など自身のポリシーをもってものが言える自動車評論家が第一線を退いていくのは、寂しい限りだ。
ちなみに、ミニバンも2つの章を割いてある。いまのミンバン・ブームを見れば順当だろうと思うが、やっぱりまったく興味がもてない。なんで日本はこうなっちゃたかなぁ……

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紙の本

日本刀のような美しさ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スバル(富士重工)といえば、水平対向エンジン、AWDを初めてとして独自のメカニズム・技術で継続して発展させて車作りに生かしている技術志向のメーカーというイメージが強い。日本の自動車産業にあっては、他社と比べると企業規模も小さいが、レガシィやインプレッサなど少数だがこのような技術の粋を集めて開発されラインナップでユニークなポジションを得ている。
この本には、そんなスバル車を支える技術の成果たるメカニズムを美しい写真で納められている。取り上げられている部品は、スバルを代表するエンジンのピストンから燃料タンクや防音材といった地味な部品まで広くカバーされている。言ってみれば単なる自動車の部品だが、長年にわたって磨き上げられ極限まで機能を追求し合理化されたメカニズムが放つ独特の機能美は、日本刀の美しさにも似ている。そして、時に息をのむような美しさを発している。
多くの他の自動車メーカーもそれぞれ技術力を高め独自のメカニズムを持ってはいるだろう。だが、スバルと言えば少しクルマに詳しい人ならば、「水平対向エンジン、4WD、軽量化」などすぐに返ってくる伝統的な強みを持つ技術がある。このような企画の本が成り立つのも愚鈍なまでに一筋に技術を磨いてきたスバルであるからこそであろう。この写真に実際の富士重工の開発者のインタビューで各々4ページ程度でまとめられており、技術的な背景や開発の創意工夫もかいま見ることができる。
スバルユーザーであれば、さらに愛車への愛着が増すことも間違いない。お薦めの本。

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紙の本

貴重な手ぬぐいのコレクション

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

落語協会の噺家さんらが作っている手ぬぐいを約三百種、写真で紹介した書籍です。

噺家さんの手ぬぐいは、既製品ではなくほとんどがオリジナルの手ぬぐいです。
噺家さんたちは落語で使うのはもちろん、名刺代わりに噺家同士やご贔屓筋への贈り物などに手ぬぐいをやり取りするのだそうです。そのため、自身で絵や字を書いている方、プロのイラストレータ(中には山藤章二、石ノ森章太郎、手塚治虫なんて大御所も)にデザインしてもらってる方など様々ですが、皆それぞれ工夫を凝らして粋と洒落の詰まったオリジナルの手ぬぐいを作っていらっしゃいます。

すべての手ぬぐいに、監修の玉の輔師匠の解説、噺家さんのプロフィールと自身のコメントが添えられています。手ぬぐいのデザインで、自分の名前をどーんと一面にデザインしている方、判地紋がちらしてあったり、謎掛けやオチがあるものなど意匠もそれぞれで、それらの文章と手ぬぐいと比較して読んでいるだけで、噺家さんの性格がわかったり意外だったりと楽しくなります。

すばらしい手ぬぐいばかりで、といって一般に手に入る物ではないだけに、よけいに物欲を刺激されます。

噺家さんは現在東西合わせて800人程度ということですから、そのうち300種を網羅しているというのは「手ぬぐい図鑑」と言っても過言でないコレクションの素晴らしい紹介書です。資料としても貴重なものとなっていくはずです。

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紙の本

紙の本やがて目覚めない朝が来る

2008/05/21 23:54

老いと死と、そして子供

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

有加という女性が大女優であった祖母との関わりを少女時代から祖母の死までを追想の形で書かれた物語。あくまで有加の視点で彼女の聞いたことだけが語られていく語り口と登場人物のからりとした生き様で切ない内容ながら読後はとても浄化されて清々しい気分になる。

現代では同居する家族が減ってきているので、親以外の大人、特に老人と触れあったり話したりする機会が限られている。わたしは身近に祖母が同居していたのでこの物語の雰囲気はとっても懐かしく思われる。祖母との関係は当然親とのそれとも違ったし、特に大人との触れ合いを避けたくなる思春期にある種大人でない特殊な大人としてつきあえた気がする。

そして、老いと病からは、どこかで弱っていく姿を見ることになり「やがて目覚めない朝」を迎えることになる。命の重みを周りにぶつけるように主張する大人は多い中、どこかで迎えなければならない死を受け入れ、自身の生きた証も他人の中に求めず、静かに老いと死を見つめつつ、それでも淡々と生きている老人の中にある種の美しさを見る。そして、子供時代に見えたことは「生きること」がより大事に思え、自分もそういう大人でありたいと願うようになれた。

そういうことを思い出させてくれる本だった。

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紙の本

紙の本新世界より 上

2008/04/05 16:05

最後の最後まで人の業の救いなきこと……

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

少女の一人称で語られる物語、描かれる世界は昭和初期を思わせる農村的風景、世界感を支配する「呪力」に架空の生物たち。なんとなく宮崎駿的ファンタジーを思い浮べながら読みはじめた。

ローレンツの動物行動学に発想を得たという、オオカミなど凶暴と言われる動物以上に同族への攻撃抑制ができない人間の不完全さが全編に渡って描かれている。描かれる人間の業は、後半に向けて繰り返し更に救いの無い形でより深く描かれていく。

かなり悲惨な展開の中で主人公の強さということが物語でも出てくるが、どちらかというとこれは展開上の必要性で与えられた属性でテーマは人間の業の救いの無さにあるように読める。

そして、最後の最後で更に救いのない形で世界を反転させてみせる結末ははSFとしてもホラーとしても見事と言える。これだけの長編で膨大な伏線とエピソードを張り巡らしながら、どれもが無駄なく論理立って繋っていき、なおかつ読後にテーマが一本の軸でブレれていないと読者を唸らせる作者の力量は並のものではない。

基本的にはホラーな人なのでかなり描写がグロな部分があるが、それが受容できる方にはお勧めの一冊。ページ数はかなりあるが一気に読めてしまう。

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紙の本

紙の本永遠の出口

2006/05/01 16:29

あのドラマに?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

小学校から高校卒業までの少女の成長を九つの章で描かれている。
普段あまり手に取るようなジャンルの作品ではないが、読んでみたのはその中のある章「黒魔術とコッペパン」が最近話題となった鬼教師のドラマを想起させたから。
この章では、「黒魔女」と恐れられる教師がクラスを支配していく様子とそれに向けて立ち上がる子供たちの様子が描かれている。テストの結果で与えられる飴とムチの成績至上主義、テストを配る様、教師の口から語られる病魔などの恐ろしい「現実」、給食のシチューをこぼしてしまう生徒、合同ダンスの補習でのいびり、一年間をやり過ごすと宣言する主人公の男友達……『女王の教室』で使用されたモチーフが驚くほどそのまま詰まっている。
全体として読んだ印象は、「男女の違いはあれ、自分の十代なんてこんなものだったなぁ」ということ。自身の思春期をのぞき見られているような感覚は、この人の感性のすごさなんだと思う。興味本位で読んでみても損はしない一冊でした。
おそらく、『女王の教室』の脚本を書いた脚本家はこの小説を読んでインスパイアされたであろうことは間違いない。実際にはそこに描かれている教師は阿久津真矢とは似ても似つかない。あくまで主人公である小学生の目を通して、教師はそこでの理不尽な世界の代表として描かれているだけで、力点は少女の成長にある。そこを膨らませて阿久津真矢というキャラクターを作り出したところが、『女王の教室』を『女王の教室』たらしめているところなのだ……という楽しみ方もできます。

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紙の本

紙の本電脳日本語論

2005/05/26 08:14

ATOKユーザー必見

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

コンピュータ、言語学、辞書学など各方面の専門家が集いATOKの成功と発展を裏で支えるATOK監修委員会。この委員会の取材を中心に構成されたATOKの歴史を集大成したドキュメンタリーだ。
小説家 篠原一の手によるドキュメンタリーだが、小説家としての彼女からは想像できない作品で少し驚いた。文体も非常に男性的だし、テクニカルな内容も適切にまとまっている。DOS時代のFEPのような話題も押さえており、文章からもご自身のテクニカルな指向が付け焼き刃でないことが感じられる。
本書は、当初「ASCII」での連載として執筆され単行本にまとめられたものである。この連載自体を目にしたことはないが、内容からすると1999年前後ではないかと思う。語られているのはATOK13くらいまでだが、MS-IMEに多くのIMEが駆逐され消えていく中ATOKだけが生き残っている現在の状況が単なる幸運ではなく、ジャストシステムによるこれらの日本語への挑戦ともいえる取り組みの成果であることがよくわかる。
こういった取り組みはなかなか表に出て我々ユーザが知るチャンスを得ることが少ない。 本書を直接の当事者へのインタビューで押さえた上で小説家らしい日本語へのこだわりについての共感と深い洞察からATOKが生まれ育ってきた歴史をドキュメンタリーとして成立させた貴重な良書である。

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紙の本

紙の本ねこのばば

2006/11/09 01:15

シリーズも進化中

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

久しぶりに読む『しゃばけ』シリーズの第三巻『ねこのばば 』。
最初の頃は大妖の孫、回りのあやかし達などの設定をうまく活用していないなぁという印象だったが、第三巻ともなるとそういうものもすっかり設定として馴染めてしまう。あぁ、シリーズ化とは恐ろしい。映画化も決まったそうだ。
いくつかの短編が収録されている。最初の三編はいつもと印象が違ような気がする・『茶巾たまご』『花かんざし』『ねこのばば』は人の業の深さが描かれ、かえってあやかし達のほうがすがすがしく感じてしまう。これは現代の今の世相にも当てつけた作品かもしれない。『産土』は面白いとは思うが、手法としてはおきて破りだろう。最後に収録されている『たまやたまや』は子供時代から大人になっていく若旦那の青春のエピソードとして描かれている。最後がこういうエピソードでちょっとほっとする。全体としては、いつものように終始「のほほん」とした雰囲気がながれているのだが、ちょっとシリアスな面も描かれていて短編としても読みごたえがでてきたようだ。

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紙の本

本当にこの本に感謝しています

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

近しい人が癌になりました。
本人の前に癌だという宣告を聞いて、動転して何をしてよいかもわかりませんでした。

そんなとき本を知りました。
癌の本というと、特定の療法の効果を大げさに扱う本が多く、本当に必要な立場になったとき頼れる情報がなかなかありませんでした。そんな中この本では、きちんとした医療に携わる医師たちにより執筆されているようで、非常に丁寧に必要な情報が簡潔にまとめてあり信頼できるものでした。癌の基本的な情報から、どう診断され、どのような治療法があり、その中からどう選択していくか、また再発から末期に至るまで患者の立場で病気とどう対処しプロである医師とどのように関わっていくかが示されています。

告知に関する考え方、セカンドオピニオン、EBM(科学的根拠に基づいた医療)など私にとって新しい考え方を学ぶことができました。実際の「告知」の際には、この本で得た知識があったため医師とのコミュニケーションをスムーズに行うことができ結果的により強い信頼関係を持つことができました。この本に出会わなければ、きっと、結果を受け入れられず、本人には病気を偽り、医師を信頼できずにアガリクスなどの代替医療に傾倒していたでしょう。

私は、この本はベースとなっている患者への情報公開とそのケアのあり方、EBMに賛同します。これから当人とともに病気と闘い付き合っていかなければなりませんが、この時期にこの本に出会えたことを本当に感謝しています。

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