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  3. 日経バイオビジネスさんのレビュー一覧

日経バイオビジネスさんのレビュー一覧

投稿者:日経バイオビジネス

36 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

2002/04/01

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 生物学者にとって有用なデータベースや解析ツール、ウェブサイトを、効率的に利用するための方法を解説する、バイオインフォマティクス入門書。
 著者の2人は、米国でバイオインフォマティクスを教える助教授と、博士課程の学生。「バイオインフォマティシャンは、エレガントなアルゴリズムを発見するのではなく、問題を解決するためのツールの構築者」とは、彼らの言葉だ。
 本書ではLinuxを中心としたUnixによるPC設定が研究に必要だとし、その環境設定方法に全体の1/3を割いている。Linuxでは計算生物学のツールが豊富だからだ。ただし、読者にOSを詳細に理解させようとするのではなく、その環境でいかにツールをうまく作動させるかを説く。残り2/3でバイオインフォマティクスツールの効率的な利用法解説に入るという構成だ。
Copyright (c)1998-2001 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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紙の本

2002/06/01

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 大学の発明を産業界など社会の中で生かす、産学技術移転の歴史をまとめた一冊。過去だけでなく、技術移転機関(TLO)がこれから果たすべき役割や、特にライセンス・アソシエイト(技術移転のアレンジを行う営業員)に求められる資質を解説する。
 米スタンフォード大学TLOでコーエン/ボイヤーの遺伝子組み換え技術をはじめ様々な特許の移転に成功したニールス・ライマースを引き合いに、大学の研究成果の移転は、ライセンス・アソシエイトと企業が1対1で交渉することが重要であると著者は主張する。
 自分が売り込んでいく技術に対する理解だけでなく、高いコミュニケーション能力がライセンスアソシエイトには求められるという。多くの実例を挙げ、この新しい職業に対し、読者の興味を引きつけることに成功している。
Copyright (c)1998-2001 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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紙の本

2002/06/01

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 基本的な知識でありながら、実験室で足をすくわれがちな項目をQ&A方式で整理する「バイオ実験超基本Q&A」の第2弾。基本的な実験でも高度な実験でも、「“定石”を踏まえればトラブルは突破できる」というコンセプトの下、トラブルの解決と予防のための16の定石を紹介。さらに、各種の実験の具体的な状況を想定し、「プラスミドの精製中はどこで中断できるか」「PCRで非特異的な増幅が多い場合はどうすればよいか」など、Q&Aはより細かくなった。学生や初心者を主対象とはしているものの、意外な盲点の解説は新しい実験にトライする際にも活用できそうだ。
 著者は、専門学校で講師を務める傍ら、一般向けの簡便なバイオ教材の開発も手がけている。実験初心者のみならず、門外漢にも最新のバイオ技術が理解できるような教材も、今後期待される。
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紙の本

紙の本植物が未来を拓く

2002/05/17 22:15

2002/06/01

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 日本学術振興会が平成8年度に発足させた未来開拓学術研究推進事業の1つ、「植物の環境応答機構とバイオテクノロジー」分野の研究成果を報告する。食糧問題や環境問題を解決する主役として期待される植物バイオテクノロジーの6年間にわたる研究結果とその背景を簡潔に解説したものだ。
 プロジェクトの内容は、過酷な条件でも耐える植物の環境適応力を基礎的に研究し、その成果を利用して生産性の高い穀物の育種や、環境浄化に植物を利用する手法などの開発を目指した。
 有用な遺伝子だけを導入してマーカー遺伝子を植物から除くことのできる遺伝子導入方法を開発した日本製紙の海老沼宏安氏の研究、リグニン含量の少ない樹木を作りエネルギー・食糧への利用を簡便にする東京農工大の諸星紀幸氏の研究など、興味深い報告がそろう。
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紙の本

2002/06/01

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 生物の形を支配する遺伝子であるホメオボックス遺伝子は、動物界、植物界を問わず生物種に受け継がれている、分化発生の要ともいうべき生物共通の遺伝子だ。
 この遺伝子を1983年に発見した著者が、自身の発見に至るまでの研究の経緯を詳細に語り、その後続々と明らかにされた分化発生に関る研究の軌跡をエピソード豊かにたどる。
 後にホメオティック遺伝子と判明するショウジョウバエのアンテナペディアは変位が起こると触角が中肢に変わる遺伝子として、日本でとりわけ著名なフシタラズという遺伝子は体節の数を制御する遺伝子として、それぞれ別々に報告されていた。これら遺伝子に共通の配列があることを著者が偶然見いだしたことがホメオボックスの発見とその後のドラマの幕開けとなった。
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紙の本

2002/06/01

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遺伝子工学が人々にもたらしたのは医学的な福音か、それとも生命倫理の破綻だったのか。クローンヒツジ「ドリー」の誕生から6年、「第二の創造」といえる体細胞クローン技術の誕生が、議論の引き金を引いたのは間違いない。本書はこの技術を開発した当事者、ロスリン研究所のイアン・ウィルマット氏らへのインタビューを主にまとめられたものだ。
 本書は2000年に出版された「The Second Creation」の邦訳。クローン技術にまつわる話題のすべてを網羅したといえるほど内容は詳細だ。細胞生物学の観点から見たクローン技術の課題や、人間が享受できる利益、あるいはクローン人間への可能性など、当事者ならではの視点でクローン技術を解説する。
 科学ライターであるコリン・タッジが、「ドリー」の産みの親、イアン・ウィルマットとキース・キャンベル両氏にインタビューしてまとめた。そのため、本書は両氏の肉声を聴き、体細胞クローン技術の開発に成功するまでの舞台裏をうかがい知ることのできる数少ない書であるといえる。
 興味深いのはドリー誕生後、一部に起こったという「ドリーは本物か」という議論だ。ドリー誕生の重要性は、分化した成体の細胞から産まれたという点にある。しかしウィルマットらが自ら認めるように、ドリーを作るために用いた培養乳腺細胞の中には、比較的未分化の細胞、いわゆる幹細胞が混じっていた可能性が否定できない。つまり、分化した細胞から誕生したわけではないのではないかというのが論点だ。
 この議論についてウィルマットは「もしドリーが幹細胞からできたとすると、彼女の栄光にはやや傷が付く」と述べ、完全に疑念を否定していない。ただし「成体には多くの幹細胞が含まれている。実用的な観点から言えば、成体の細胞からクローンが作り出せることに何ら変わりがない」と、研究の重要性には影響しないことを付け加える。
 内容は専門性が高い部分もあるが、専門家でなくとも画期的技術の誕生を臨場感たっぷりに感じることができる一冊だ。
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紙の本化学はなぜ環境を汚染するのか

2002/04/24 22:16

2002/02/01

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 殺虫剤の代名詞にして今や環境ホルモンの筆頭格でもあるDDTは、戦後間もなくは20世紀の3大発明の1つに数えられていた。こうした化学物質と我々の生活へのかかわりあいについて2面性をわかりやすく解説したのが本書だ。
 近代化学の歴史に続いて重金属、PCB、ダイオキシン、環境ホルモン、サリン、有機スズ、砒素、シアン化化合物など、環境を汚染し得る化学物質について章ごとにまとめられている。発見と使用、普及の歴史、毒性に関するエピソード、環境汚染防止の取り組みなどが、それぞれの化学物質について化学の視点で解説されている。
 本書は、環境を汚染する化学物質を題材にとった、やさしい化学の教科書でもある。現実の事象を学問部分まで追求することによって、化学知識として吸収することができる。
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2002/05/01

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 栄養素や薬物が体の中に入るとそれらは主に腸管を通して“吸収”され血流に乗って、作用する各臓器や組織にたどり着き、細胞へと“入る”。この吸収や細胞内への進入にある種の運搬のスペシャリストたんぱく質が存在することがここ10年くらいの間にわかってきた。
本書の表題となったABCトランスポーターとは現在まで最も重要と目されている運び屋たんぱく質。ABCとはATP Binding Cassetの略称。細胞膜上の存在するたんぱく質の仲間で、アミノ酸配列がよく似たATP(アデノシン三リン酸)結合領域がカセットのように挿入されていることからこの名前がある。
 本書はこうしたABCトランスポーターの最新の知見を専門家が解説した教科書。抗がん剤の排出ポンプMDR1やイオンチャンネルなどをそれぞれについて専門に研究する著者らが解説している。
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紙の本

2002/05/01

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 環境浄化には微生物を用いた手法が多く用いられている。その基本的な考え方は、目的の物質を分解できる微生物が他の微生物との生存競争に勝ち、増殖できるための条件を設定してやることだ。しかし、土壌や水系などの微生物環境は複雑な要因によって決まっているため、その条件を設定するのは容易ではない。本書では、環境中の微生物による生存競争の過程を簡潔に説明し、環境修復に微生物を利用する上で、有利な条件を設定するための基本原理を解説している。
 微生物による環境修復では、土着の微生物を活性化することがまず重要だ。ただ微生物製剤を添加するだけの手法は環境修復の主役にはならないと著者は主張。現在販売されている各種の微生物製剤の多くについて、その効果を疑問視する。
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紙の本神と悪魔の薬サリドマイド

2002/04/24 22:15

2002/05/01

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 1950年代後半、鎮静剤として発売され、世界中で先天異常を持つ大勢の子どもを生み出した悲劇の薬サリドマイド。しかし1998年、この薬は米国食品医薬品局により認可された。今度はハンセン病の合併症の特効薬として。
 本書ではサリドマイドの2つの側面を取り上げる。1つは、悪魔の薬としての側面だ。サリドマイドの合成とずさんな試験を経た発売から、アザラシ肢症患者の急激な増加を経て、製薬企業への補償を求めた裁判の経過をたどる。
 もう一方で「神の薬」としての側面、抗TNF−α抑制効果を持つ、炎症や自己免疫性疾患の治療薬としてのサリドマイドを、これによって救済された患者の手記と共に取り上げている。近年解明されつつある、サリドマイドが四肢欠損を引き起こす分子生物学的な作用機序についても紹介されている。
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紙の本

2002/05/01

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 後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスであるHIV−1と、成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであるHTLV−1は、ともにヒトのT細胞に感染するレトロウイルス。この2つの疾患に対する治療と撲滅の道を探るため、国内外でこれらの研究が活発だ。国内でHIV、HTLV研究のトップを走る研究者が、その研究の最先端を報告する。
 世界的にATLの発症率が高い日本では、以前からHTLV研究が活発に行われ世界で脚光を浴びてきた。その経緯から、同じくレトロウイルスに分類されるHIVについても、質の高い研究が進められている。本書はレトロウイルスの中でも、特に、HIV、HTLVに関して日本の研究者がまとめたレビューだ。
 HIVのレビューの1つは、個人の遺伝子多型と、AIDSへの感染のしやすさ、病態の進行速度などとの関連をテーマとしたものだ。ケモカインレセプターであるCCR5や、サイトカインの一種であるインターロイキン4、10などに見られる遺伝子多型がHIVへの感染しにくさに影響したり、逆にAIDSの病態進行を加速することがあるなどの報告を紹介している。従って筆者らは、遺伝子多型の解明が進めば、AIDSの予後予測に役立つと解説する。また白色人種と黒色人種に現れる同じ遺伝子多型が、疾病罹患、進行について異なった効果を与えているとの報告を例に、日本を含むアジア独自の遺伝子多型解析が重要と主張している。
 抗HIV薬についてのレビューでは、治療薬研究の動向と展望が一覧できる。HIVがヒトの細胞に侵入する機構をターゲットとした治療薬の中では、ウイルスエンベロープと宿主細胞膜の融合を進める因子gp41に作用するロシュ社の医薬品候補「T−20」について、臨床試験で抗ウイルス効果が証明されつつあることを紹介する。一方ケモカインレセプターCXCR4を阻害するアノメッド社の「AMD−3100」が臨床試験の中止を余儀なくされたケースも取り上げ、ケモカインレセプターのブロックによる思わぬ副作用の可能性についても言及する。
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2002/04/01

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 バイオテクノロジーは将来の食糧難克服、農業生産の向上、生活習慣病の予防、環境浄化機能などでさまざまな可能性を持つと指摘されてきた。しかし技術や関連商品のわかりやすい情報提供を欠いたために、市民レベルで不安ばかりが膨らんでしまった。本書の目的は、新しい技術の研究開発の段階、創出される作物や食品のプラスとマイナスを一般に向けて解説することだ。研究の問題点から管理、規制、国際組織の対応までが幅広く解説されている。もともとページ数は多くないが、全体像を見渡すことが可能だ。
 おそらく、この本だけでは消化不良な気分がするかもしれないが、必要に応じて参考文献も付記してある。インターネットで多くの情報が検索できる今日、情報の手がかり(だけ)を与えてくれるこのような書の有用性は高い。
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2002/04/01

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 ゲノム情報を創薬に活用している国内メーカー、およびその創薬を支援するツールやサービスを提供する国内企業に対し、産業タイムズ社がそのビジネス戦略と開発動向を多数取材し、編集した。
 本書でその戦略を紹介する企業98社は、ゲノム創薬・再生医療メーカー33社と、その支援メーカー65社に分けられている。前者では国内大手製薬企業に加え、キリンビールやサントリー、アンジェスエムジーなどが紹介されており、従来の製薬企業以外にも焦点が当てられている。
 また後者では、理化学機器メーカー、臨床検査会社、化学企業、大手電機メーカー、バイオベンチャーなどあらゆる業種の企業が取り上げられ、事業を展開する際のプラン策定の参考になるだろう。他にも自治体や各研究所の動向も収載し、資料価値が高い。
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2002/04/01

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 浪費、過食、賭け事、薬物、飲酒や喫煙…。なかなかやめられない行動が実は遺伝子の仕業によるという考え方は、有名なリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」をはじめとする著作物の影響で、幅広く浸透している。
 この話題に関連する書籍が数ある中で、本書は人間が遺伝子によってどうコントロールされているかを、肥満や薬物中毒などにまつわる事例で紹介するとともに、著者なりにアドバイスを加えるという「うまい生き方論」に仕上がっている。
 ただしそのアドバイスは「無駄な食材を買わないためには食事をした後に買い物をする」などのごく一般的なもので、実生活に役立つかどうかはそれぞれの判断に任せたい。生物の変な行動や著者の周辺の失敗談を、遺伝学の真面目な話と結び付けているのは面白い。
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2002/04/01

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「日本から逃げ出した」独創的日本研究者7人の本音をルポ。ライフサイエンス分野から3人の研究者が選ばれている。たんぱく質の立体構造をNMRで探るトロント大学の伊倉光彦教授、食欲・就眠調節物質「オレキシン」などを発見したテキサス大学の柳沢正史教授、体細胞クローンマウスを世界で初めて作ったハワイ大学の柳町隆造教授という顔ぶれだ。
 日本人は独創性に乏しいのだろうか? 答えは「ノー」であり「イエス」だ。
 本書に登場する流出頭脳たちが語る日本の問題点は、研究業績が大物研究者を中心に行われ、業績そのものを評価する力の弱さ・大学を中心とした研究現場人事の密室主義・硬直した予算主義——の3点だ。
 京都大学の柳沢正史講師は、ネイチャーに発表した1本の論文が縁でテキサス大学准教授のポストを得る。無名の研究者がなかなか評価され難い日本と違い、「良い論文を書いた若者がいるらしいから、呼んでみよう」と考える米国の懐の深さが異脳たちをひきつける1番の理由といえる。
 柳沢教授はまた、対照的な経験をする。東京大学が生理学の教授に招請したのだ。しかし打診を受けた当人が迷ううちに「就任が決まったから来てくれ」という連絡が届く。審査のプロセスは本人に一切知らされることなくだ。この一件に不信感を募らせた教授は、東大教授の席を蹴ってしまう。
 予算獲得の不備で高価な装置を購入できないことも珍しくない。海外流出組を公募して、従来の硬直した国立大学の人事慣行に一石を投じた筑波大学。カナダから応募して教授の辞令を受け取ったたんぱく質解析の伊倉光彦教授が、当日辞令とともに受け取った言葉が、「実は予算の都合で、申し訳ないがNMRの購入を1年待ってほしい」。ほどなく伊倉教授はカナダに“帰国”してしまう。
 知力と度胸で世界最先端の業績を上げ続ける流出頭脳組と官僚主義に侵食された悲喜劇に翻弄される国内滞留頭脳組の対比が日本落日の真の理由を語っている、優れて今日的な日本人論でもある。
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