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  3. ミケ子さんのレビュー一覧

ミケ子さんのレビュー一覧

投稿者:ミケ子

28 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本きんぎょが にげた

2004/05/06 20:00

小さなお子様をお持ちの家庭にこの絵本は必需品

19人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 以前、ほんの1年間でしたが自宅で絵本の家庭文庫をしていたことがありました。
そのころ息子の幼稚園で同じクラスになったとっても元気のよい男の子がいたのですが
その子のお母さん、それまで全く絵本なんて子どもに読んであげていなかったらしいのです。
日々の雑務に追われて、忙しい忙しいって、絵本を読もうなんて思ったことなかったそうです。
それが、ひょんなことから親しくなり、ちょっとしたきっかけから我が家の文庫に
遊びにきてくれるようになりました。
 どんな本を選んでよいやらわからないので、何かお勧めの本を教えて欲しいと
いうことだったのですが、この場での私の選書でこの親子のこれからの絵本との
かかわりが決まってしまうのではないかと緊張しました。
そして、私がお勧めした絵本がこの五味太郎さんの「きんぎょが にげた」でした。
ほとんど絵だけで、逃げたきんぎょを探すと言うシンプルな内容ながら、
子どもを惹きつけずにはおかない魅力のある絵本です。

 本の返却にきた時、そのお母さんが
「子どもが、こんなに笑いながら楽しそうに絵本を見るなんて、思いもよらなかったわ。
何度も何度も、読んでくれとせがまれて、『こんなのが、そんなに楽しいのかしら?』
と思いながらもゲラゲラ笑いながら楽しそうにしているので、ついつい何度も
読んでやったのよ。ホントにびっくりしちゃった。」
と仰ってくださったので、とても嬉しく思いました。
そして、五味太郎さんの絵本で他にいい本はないかしら、と言うので今度は
「きいろいのは ちょうちょ」と「ぐう ぐう ぐう」をお勧めしました。

 この男の子に限らず、この「きんぎょがにげた」はおはなし会などでも大人気で、
1、2歳の小さな子どもから小学校高学年の子どもまで一緒になって楽しめる絵本です。
もう、みんな身を乗り出してきて盛り上がるのです。

 夜寝る前に子どもと一緒にこの絵本を開いたなら、一度読むだけではすまないと
覚悟した方がよいでしょう。(笑)

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紙の本

紙の本こんにちは、長くつ下のピッピ

2004/03/16 10:32

ようこそ、ピッピワールドへ

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 岩波書店から出版されている小学校中高学年向きの児童文学
「長くつ下のピッピ」の絵本版である。
 小学生の頃、大好きで何度も読んだ「長くつ下のピッピ」。
当時TVでもピッピの番組が放送されていて、いつも楽しみに見ていた。
岩波の本の挿絵のピッピと、TVのピッピ(アニメではなく実写)が
とてもイメージが似ていたので、その挿絵がオリジナルだと思っていた。
独特の画風で、私も子どもながらとても気に入っていたし。

ところが、その挿絵はオリジナルじゃなかったんですね。
今回、徳間書店から出版されたこの「こんにちは、長くつ下のピッピ」の絵が
オリジナルだったのだ。
イングリッド・ニイマンという人が描いているが、ピッピの生まれ故郷
スウェーデンでは、このニイマンの描くピッピこそが「ピッピ」だそう。
東欧・北欧の絵本の絵でお馴染みの、くっきり・はっきりした絵で
とても愛らしい。

 内容はといえば、岩波の小学校中高学年向きの本の美味しいとこだけを
詰め込んだ絵本になっているので飽きない。
私が子どもの頃から大好きで忘れられなかった場面ばかりが
ページをめくる度に、次々とあらわれて楽しい、楽しい。

何でも一人で出来ちゃう、たくましいピッピ。
想像力が豊かで、小さなことは気にしない、愉快なピッピ。

「えっ?」と驚くような、人が振り返るような奇抜なことを平気で
人目も気にせずやるのだが、それが決して「あくたれ」ではなく
一本筋が通っているからピッピは子どもたちから尊敬されるのだろう。

 この絵本が日本で出版されたことで、小さな子どもたちとも
この愉快なピッピワールドを共有することができると思うととても嬉しい。

 それから、この絵本の最後に着せ替え人形が付いていてこれまた嬉しい。
そのまま切り取ったらもったいないから、カラーコピーして使おうかな。
でも、コピー紙だとペラペラで遊びにくいなぁ。
そんなことあれこれ思い巡らしていて、ふと気づいた。
我が家の子どもは小学生(低学年)の男の子二人なのだ。
着せ替え人形なんかしないよね。
……。
実は、私がやってみたいだけなのである。

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紙の本

紙の本せかいいちうつくしいぼくの村

2004/02/09 01:03

この絵本を通して幸せとは何であるかを噛み締めて欲しい

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アフガニスタンの、今はもうないパグマンという村の幸せな日常を描いた絵本。
その国にはいつも戦争の影がついてまわる。
しかし、この絵本の中には、戦争の生々しい描写はない。

 ヤモという少年は初めてお父さんと一緒に町へ果物を売りに行く。
戦争に行ったお兄さんのかわりにヤモがお父さんの手伝いをするのだ。
村にも町にも人々の普通の生活がある。
でも、ヤモのお兄さんは戦争に行っているし、さくらんぼを買ってくれた
あるおじさんは、戦争で片足を無くしていた。お昼ごはんを食べに行った
チャイハナ(食堂)で隣り合わせた知らないおじさんとお父さんが、
南の方の戦いが心配だと話をしている。

 著者の小林豊氏は、戦争の影が付きまとっていても、その横で
人々は普通の生活を送っているのだ、ということを知って欲しいのだろう。
1970年代初めから80年代初めにかけて、中東・アジアをたびたび訪れたという
小林氏の講演会を聞きに行った時、あなたは元々絵本作家ではなかったのに、
どうしてアフガニスタンのことを「絵本」にしたのかと私が質問すると
「絵本の横には大人だけでなく、必ず子どもがいるからです。大人の本で
アフガニスタンについて書いても、その本を読んだ大人がわざわざその内容について
子どもと話すことはないけれど、絵本だと子どもと大人が自然にアフガニスタンの
話をするでしょうから。」
と答えてくださった。

 絵本の最後は
『この としの ふゆ、
村は せんそうで はかいされ、
いまは もう ありません。』
という一文で締めくくられている。

 私が6歳の息子にこの絵本を読んでやったときのこと。
楽しそうにこの絵本の見ていた息子が、最後のこの一文を聞いた時、
急に、どうしていいか分からないという困った表情をした。
そして、ぎこちなく笑いながらこんなことを言った。
「ボクのところは戦争がなくてよかったァー。だってお父さんと一緒に暮らせるもん。」

 何気ない日常の生活が、家族と暮らせるという生活が、「幸せなこと」だと
感じることができる子どもたち、大人たちに希望があると信じたい。
子どもと大人が、お互いの体温を感じながら、この本を読んで欲しいと思う。

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紙の本

紙の本弟の戦争

2004/02/25 14:47

戦争が他人事とは思えなくなる緊迫感

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「僕」の家庭はイギリスのごく普通の家庭だ。
まあ、普通とちょっと違うといえば、弟アンディだ。
アンディは心優しい。かわいそうな動物や、飢えた難民の子どもの
写真などを見ると、とりつかれた様になる。
どうも彼は、その写真の動物や、かわいそうな子どもの中に入り込んで
「現場」を見て、感じることができるらしい。
湾岸戦争が始まったある日、弟は「自分はイラクの少年兵ラティーフだ」と
言い出した。今までの発作と違うのは、イラクの少年兵ラティーフの中に
入り込んだまま、次第に元の自分に戻れなくなっていくということ。
事態の深刻さに気づいた両親は弟を精神病棟に入院させる。
アンディはそこで、身体はイギリスの「ここ」にあるのに、本人の目の前には
イラクの戦場の風景が広がり、そして少年兵ラティーフとして生活していく。
ある日「僕」は、ラティーフ(アンディ)の様子から、戦闘が激しくなったことを知る。
「僕」の目の前でラティーフに同化しているアンディが吹き飛ばされ、動かなくなった。
ところがしばらくすると、アンディが目を覚ました。でも彼は何にも
覚えていなかった。そしてそれ以来、あの発作のような奇妙なふるまいもなくなったし、
空想もしなくなった。これ以上ないというくらい普通の男の子になった。

 この物語、迫力がありグイグイ引き込まれていく。
対岸の火事のように、他人事だった戦争を、誰にでも起こることではないにしても
一般の家庭の中に取り込んで、これほどの臨場感を出しているところが凄いと思う。
この本は対象年齢が小学校高学年以上となっているところがミソ。
戦争というものは、何処の国でも「少年」たちが第一線に立っているのだ。
日本という、今は戦場になっていない、モノの溢れるこの国にいても
この年頃の子どもはこの本を読むことで「僕」や「弟」の気持ちに近づけるだろうし
「僕」の恐怖や悲しみや怒りに、共鳴するだろう。

 アンディがいわゆる「普通」の男の子になってしばらくして
「僕」が庭で翼に傷を負った鳥を見つけ、助けてあげようとお母さんのところへ
持って行ったら、お母さんが「昔のフィギス(アンディのこと)みたいね」と言った。
「僕」は、ふと怖くなる。誰も家の外で起きることを少しも気にかけなくなってしまったことに。
弟は僕らの良心だった。僕らにはあの頃の弟が必要だった。
…ということが書かれた一節がある。

 アンディが少年兵として生活している場面の描写では、ナイフで切るような痛みを感じたが
ここの描写には、打ち身のような鈍い痛みを感じた。切り傷より、打ち身の方がいつまでも
ズキズキ痛むように。
私たちは、喉元過ぎれば熱さを忘れる。
そんな自分が情けなくなる。

 また、アンディの主治医である精神科医を黒人にしたことで、人種問題にも
触れている。この点においても、一読の価値があると思う。

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紙の本

紙の本狐笛のかなた

2004/02/14 23:01

日本の美しい風景に溶け込むピュアな心

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

泣きました、泣きました。
哀しくて、哀しくて。
切なくて、切なくて。
化粧がはげ落ちてしまうほど。

敵と味方。
そうなってしまったのは、自分たちの意思じゃない。
争いなどなかったら。
あの、何も知らなかった子どもの頃のように
ただただ笑っていられたら。

相手を想う純粋な気持ちを
純粋に持っていられる、純粋な彼ら。
たとえ我が身がどうなろうとも
見返りを求めない想い。

強いのか弱いのか。
嬉しいのか哀しいのか。
ただただ切ない。
夕風の吹き渡る枯野にも、
梅の香のむせ返る梅林にも、
桜の花の咲きほこる若桜野にも、
野火と小夜の面影が揺れ、
その想いに胸が締めつけられる。

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紙の本

紙の本寺内貫太郎一家

2004/01/24 23:56

大黒柱があった時代

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いわずと知れた、向田邦子の処女長編小説。
昭和49年にTVドラマ化されて、お茶の間で大人気になった。
当時私はまだ小学校3、4年生だったが、なんとなくこのドラマのことを
覚えている。でも詳細はあまり覚えていない。
最近、「阿修羅のごとく」の映画化で向田邦子ブームが起きているようだ。
今迄一度も向田作品を気に留めたことがなかったが、ここにきて
私も世間に感化され、ちょっと手に取ってみた。
エッセイ集「父の詫び状」と、この「寺内貫太郎一家」。

さて、この「寺内貫太郎一家」を書いた向田邦子はこんな言葉を残している。

<貫太郎のモデルは、私の父向田敏雄である。
よくどなり、よく殴り、5年前に亡くなった。
お線香代わりに、ちょっぴり「立派な男」に仕立て直して
お目にかけた…>

東京の下町を舞台に、人情味溢れる人間模様を描いている。
この作品が発表された当時でさえ、多分貫太郎一家のような家庭は
既に「古きよき時代」の家族像になりかけていたのだろうと思う。
あの目まぐるしく世の中が変わっていった高度成長期にこのドラマが
世間の支持を得たというのが、今思うとなんとも切ない。
前に進むことしか出来ない、留まることや後戻りすることができない
そんな哀しい性を背負いながら、私たちは昔を懐かしむのだ。

当時の日本の縮図を貫太郎一家に見るようだが、
今ならドメスティック・バイオレンスだの子どもの虐待だの、
人権無視だのと、色んなところで槍玉にあがりそうなことだらけだ。
それでも、何度も何度も目頭を押さえながら読んだ。
何故って、そこには確かに愛があるからである。

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紙の本

紙の本おっきょちゃんとかっぱ

2004/01/15 23:27

一度あったことは忘れない

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「きよ」という女の子は「おきよちゃん」と呼ばれるうちに
それが縮まって「おっきょちゃん」と呼ばれるようになった。
ある日、川辺で遊んでいるとき、カッパに誘われて川の中のお祭りに行った。
おみやげに「きゅうり」を持っていったので、カッパたちに大事にされ
おっきょちゃんは陸の上のことをすっかり忘れて、カッパの家族の一員として
川の中で暮らしていた。
ところがある日、ふとしたことからお母さんのことを思い出し
家へ帰りたくなる……。

同じく長谷川さんと降矢さんのコンビで書かれた「めっきらもっきらどおんどん」と
この「おっきょちゃんとかっぱ」はイメージがとてもよく似ている。
どちらも日本古来の不思議に通じていて、日本人は昔から天の神様や水の神様など
八百万の神とともに暮らしていたんだということを思い出させてくれる。

映画「千と千尋の神隠し」の中で、銭婆が言っていた。
「一度あったことは忘れないものさ」

「おっきょちゃんとかっぱ」にしても「めっきらもっきらどおんどん」にしても
元の世界に帰るとき、主人公の子ども達は不思議の世界のことを
忘れる(という設定になってる)けれど、潜在意識の奥深くに沈むだけで、
想いがなくなってしまうわけではないと思う。
生きていくって何かを振り切って前に進むことかもしれない。
でも振り切ってきたもののことは、絶対忘れないだろう。

心に染み入るお話で、大好きです。

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紙の本

紙の本くろねこかあさん

2004/10/04 10:47

白と黒の、この上なく愛らしい世界

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 白黒で表現された、猫の親子。
シンプルながらも、切り絵ならではのアイデアで
見る者をぐーっと惹きつけます。

 黒猫かあさんのお腹から生まれた子猫は、白猫3匹と黒猫3匹。
黒猫かあさんのお腹から切り取られた黒猫3匹と
お母さんのお腹の上に抱っこされるように切り抜かれた白猫3匹は
そう、同じ形をしています。

お母さん猫のお腹にくっついて母さん猫になめてもらう白い子猫3匹と
もうさっきなめてもらって、満足そうな黒い子猫3匹。

スズメを狙う母さん猫の背中に怖々隠れ見ている白い子猫3匹と
母さん猫の横に並んで一緒に見ている黒い子猫3匹。

黒いお池に落ちて慌てる白い子猫3匹と、
急いでお母さんに知らせようと慌てる黒い子猫3匹。

とにかく、この6匹の子猫たちが次の何をするか目が離せません。

 装丁がいかにも赤ちゃんの本、といった感じなのですが
小学校3年生の息子に「読んであげようか」と言うと
一瞬だけ照れた顔をしたものの、本を開いたとたんに
パッと目が開いて、読み進めるにしたがってジリジリと
にじり寄ってきました。

 おかあさんとあかちゃん、という組み合わせは、幸せの象徴であり
まわりの人にも安心感を与えるのでしょうか。
読んでもらっている子どもたちもさることながら、読んでいる大人の方が
きっと癒される一冊だと思います。
 
 息子たちも小学校になったし、今更ねぇと、いままで買うのを
見送ってきた絵本ですが、やっぱり今更ながら買ってしまいました。

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紙の本

紙の本翻訳夜話

2004/07/23 01:06

翻訳家をめざしてなくても、村上春樹小説のファンなら満足できる一冊

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私は村上春樹の小説が好きで、実はこの本も数年前から手元にあった。
でも小説じゃないから、すぐに読む気になれず、そうこうしているうちに
存在を忘れてしまっていた。
 何か読むものないかな〜と、本棚を物色していて「あ、こんな本があったのを
忘れていたわ。」と思って読み始めたのだけれど、これが面白い。
今まで、村上春樹の小説は読んできたけれど、翻訳の方はほとんど読んでいない。
レイモンド・カーヴァーも1,2冊本棚にあるけれど読んでいない。
村上氏が翻訳した絵本『急行「北極号」』『魔法のホウキ』『西風号の遭難』や
山本容子さんの銅版画のカポーティの『あるクリスマス』『クリスマスの思い出』
『おじいさんの思い出』は大好きな本たちだ。しかし、どれも子どもの本屋で
見つけて買ったもので、いわゆる大人を対象とした一般小説の翻訳物は、どうも
違和感があって今まで読めなかった。
 この「翻訳夜話」を読んでみると、う〜ん、これは彼が翻訳したものも読んでみたいゾ、
と思ってしまう。夕方、この本を読み終わって夕刊を開いたら、タイムリーにも
<「社会の手触りを」を描く 『レイモンド・カーヴァー全集』完結>
という見出しが大きく出ているではないか。村上春樹氏の写真つきで、大きく
取り上げられていて柴田元幸氏のコメントまでついている。
ますます、彼の翻訳物も読んでみようという気になってきた。
 
 この本の中に、柴田元幸氏と村上春樹氏が同じテキストを翻訳しているものが載っていて
とても興味深かった。もうこれは完全に好みの問題だと思うけれど、私はやはり村上氏の
訳のほうに惹きつけられる。本書の中で、訳者が違うことによって作品から受けるイメージが
違ってしまうということについて、それは音楽と同じで、たとえばベートーベンの曲を
いろいろな指揮者や演奏者が演奏して、その中で自分の肌に合う解釈を選ぶということが
できるといいと書いてあったけれど、なるほどそういうことかと腑に落ちた。
 実は「ライ麦畑でつかまえて」も、村上訳はまだ読んでいない。学生の頃読んだものと
イメージが違ったら、なんだかうろたえてしまいそうな気がして。でも音楽と同じだと
言われたら気が楽になった。今度「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も読んでみよう。

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紙の本

紙の本鬼の橋

2004/02/29 23:49

おばあちゃんの布団の中で聞いたお話のような楽しさ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いや〜、こんなに面白い話だとは正直思っていなかった。
日本の話で面白いものがないかなと探していた時、ある人から
「この本、面白いよ」と教えてもらった。
あまり日本の物語を読んでこなかったので、平安時代の実在の人物を
モデルにしたファンタジーだと聞いて、今ひとつ読む気になれなかった。
本の表紙の絵も、なんだかイカツイ感じ。
買っても好みの話じゃなかったらイヤだから、図書館で借りて読もう。
そう思って図書館で借りて読み始めた。
3分の1くらいまでは、退屈かもしれないなぁ。佳境に入るまで
何とか読み続けなくっちゃ、などと思いながら表紙の絵を見る。
 さて、1ページ目を読み始めたら「おっ? なんか面白そうだぞ。」
あっという間に一章読んでしまった。う〜ん、これは読み終わったら
きっとこの本を手元に置きたくなるに違いない。このまま図書館の本を
読んだ後に、改めてこの本を買うのもなんだか馬鹿みたいだしなぁ。
よし、読むのを一旦止めて、この本を買ってから続きを読もう。
そう思ってその日の午前中にbk1で注文をした。
続きが読みたいけど、2日ぐらい我慢しなくっちゃ。ああ、待ち遠しい。

 夕方、ピンポーンと呼び鈴がなる。
なんと、その日の内にこの「鬼の橋」が届いた。うわぁ、凄い!
感激して早速続きを読み始め、途中で止められずその晩のうちに
読み終えてしまった。

 ハリーポッターが出てから、ファンタジーというものをこの年になって
読み始めた私は、今迄日本のファンタジーなど見向きもしなかった。
初めてこの世界を味わったという新鮮さからなのか、それはそれは感激した。
もっと早く、日本のファンタジーを読めばよかったな。

 主人公、小野篁(おののたかむら)の精神的な成長物語としても十分面白い。
しかし、死後もなお、都を守れと帝からおおせつかった征夷大将軍・坂上田村麻呂の
寂しさと苦悩や、人間になりたくてもなれない鬼の哀しみや、鬼の哀しみを
共に分け合って生きていきたいと願う少女の強さと優しさなど、「善と悪」では
括りきれない「情」というものを描き出しているところが、一番心に沁みた。
その「情」こそが人間を強くもし、優しくもするのだろう。

 また、大田大八の挿絵がとても素晴らしい。
実に話に合った画風で、ますます話を盛り上げる。この絵のおかげなのか
昔、おばあちゃんが話してくれた昔話のようで、読みながら自然に情景が
目の前に浮かんでくる。次はどうなるの? 続きを早くお話して。
久々に童心にかえって物語の世界を楽しんだ。

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紙の本

紙の本輪違屋糸里 下

2004/06/23 19:42

男はみんな、女から生まれた。女は葦のように、しなやかで強い。

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 常套手段とはいえ、こんな場面で上巻が終わっていることに苛立ちを感じながら
はやる気持ちで下巻を手にした。

 糸里は「土方はんは踏み絵を踏まはったんどす。ほいで芹沢先生と仲良う
でけるのやったら、それでええのどす。」という。
どこまでも土方の為にということらしい。
惚れた弱みというか、いじらしいというか、流石というか。
国の行く末を左右するような動乱の時代に生きあったものたちは、男も女も
肝が据わっている。

 芹沢鴨に角屋の前で無礼打ちされた島原の音羽太夫も、土方歳三を想いながらも
土方と結ばれることなく、そして桜木太夫になった糸里も、我が身の内に子を
宿しながらも、その子の父親である新選組隊士・平山五郎を殺めた、島原の天神・吉栄も、
壬生で新選組の屯所となった八木邸のおまさも、同じく前川邸のお勝も、
傾きかけた老舗・菱屋を、妾でありながら建て直したにもかかわらず、太兵衛に
裏切られたお梅も、武士よりも武士らしくありたかった、近藤を始めとする
多摩の百姓たちも、水戸天狗党の看板を背負った尊皇攘夷の権化、芹沢鴨も、
時代に翻弄された人生でありながら、みな一生懸命に生きた。

 生きるために必死で生き、そして死ぬためにも必死で生きた、その生に対する
それぞれの誠実さを誰も責めることはできないだろう。

 タイトルが『輪違屋糸里』というだけあって、時代の激流を泳ぎながらも
次の世代に生を繋ぐ女たちの、腹の底からの唸るような叫びが聞こえる。
音羽太夫、糸里、お梅、おまさ、お勝、それぞれの啖呵は見もの。
糸里が天神から太夫に上がり、三本歯の高下駄を内八文字に練り歩く、
桜木太夫としての初道中の場面に、込み上げるものを抑えることはできない。

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紙の本

紙の本輪違屋糸里 上

2004/06/23 19:21

期待していたものとは違った、また別の期待

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 ミーハーな新選組ファンの私は、「輪違屋」などという文字を見ただけで絶対に飛びつく。
これはもう、条件反射のようなものだ。ついでに言うと「角屋」という文字にも弱い。
数年前、まずはじめに母性本能をくすぐる沖田総司に入れあげ、『沖田総司』(大内 美予子著)、
『沖田総司恋唄』(広瀬 仁紀著)、『沖田総司・おもかげ抄』( 森 満喜子著)、
『新撰組一番隊』(童門 冬二著 )などを読み漁り、つづいて『新選組血風録』(司馬遼太郎著)の
「沖田総司の恋」の章を何度も読んでは涙し、ついでに他の章も読んで、こんどは
『燃えよ剣』(司馬遼太郎著)で土方歳三に惚れこみ北海道は五稜郭にまで
行ってしまった。
引き続き、『幕末新選組』(池波正太郎著)や『近藤勇白書』(池波正太郎著)、
『バラガキ』(中場 利一著)なども読んだが、どれをとっても沖田や土方や近藤たち
新選組が主役で、かっこよく描かれている。

 この『輪違屋糸里』も、「土方歳三にひそかに思いを寄せていた島原の芸奴の話」と聞いて
そりゃぁ、土方と糸里のロマンチックな物語を想像して、期待して読みはじめた。
ところがどっこい、これは芹沢鴨とお梅の話ですか?とでもいうような話の展開で
当然、これまでに読んできた新選組関係の小説では「悪者」の印象しかない二人の
意外な描かれ方にびっくり。
とはいえ、今年の大河ドラマ「新選組!」でも、やっぱり芹沢鴨は魅力的に描かれており
少しばかり芹沢に心許していた私なので、この物語りも、なかなかイケるかも?と
最初とはまた違った期待に胸が膨らんでしまった。

 この小説で面白いのは、色々な人物に自分の胸の内や裏事情などを、長々と
語らせていることだ。おかげで今まで謎だった、それぞれの人物の行動や出生などが
あきらかになり(どこまで史実かわからないが)、そうなると、策士・土方歳三の
言動がいちいち非情に感じて憎らしくなる。
そんな感情が芽生え始めた頃合を見計らうかのように、土方に思いを寄せる
島原の天神・糸里に、そうと知っていながらも土方は、芹沢鴨の世話係である
平間重助の女になるように言うのだ。
んっまぁーーーーっ! なんて男でしょ! と読者の私の感情を煽ったところで、
下巻へつづく、なのである。
上巻を閉じたとたん、下巻を引っつかみ表紙をバッとめくった。

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紙の本

紙の本雨はコーラがのめない

2004/06/23 14:20

思わずクィーンのCDを買ってしまった。そしてクィーンを好きになった。

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 この本を読む前、私は「雨」を自然現象の「雨」だと思っていた。
思っていたというより、当然、というかそれ(自然現象)以外のものであるなんて
思いもよらなかったという感じ。
「雨はコーラがのめない」という文の主語としては「雨」は何か生き物であるのが
普通なのだけれど江國さんの感性で擬人化された表現なのだろうと思っていたのだ。
だから、読み始めてからやっと、どうもヘンだと気づいた。
「雨」は江國さんが飼っているアメリカン・コッカースパニエルの名前だ。
「雨は、いつものように庭にでるべく走ってきてふいに止まり、そのままじっと、雨をみている。」
そんな文章を読んで、私はフフフッと笑ってしまった。

 この本は、大和書房のホームページで連載されていた江國さんのエッセーをまとめたもので
雨と江國さんと音楽のことを書いている。
村上春樹の小説とかエッセーとかを読むと、いつも沢山のミュージシャンや歌のタイトルが
出てくる。それらのほとんどを私は知らなくて、だから、余計に村上氏の文章は大人の匂いがする。
ところが江國さんのこのエッセーに出てくるミュージシャンは半分は知っているミュージシャンで
今度は、江國さんをまるでお友達のように思ってしまう。
たぶんそれは、村上氏は私より少し年上で、江國さんは私とほとんど同じ時代を生きてきたという
ただそれだけのことだと思うけれど。

 クィーンの話題になれば、昔クィーンは嫌いだと決めつけていた頃のことを、
ビートルズの話題になれば、ジョンが凶弾に倒れた時、教室で喪に服していたクラスメートが
いたことを、ロッド・ステュアートの話になれば、「セイリング」を聴きながら
レガシィ・ツーリングワゴンに乗ってみたかったことを、ビリー・ジョエルの話がでれば
私も「PIANO MAN」を聴いたら、懐かしいニューヨークに連れて行かれてしまうということを、
本当に、色々な思い出を、本に向かって喋り出してしまいそうな自分に気づく。
たぶん「雨」という文字が、薄いベールのように、私を包んでしまうからだろう。

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紙の本

紙の本精霊の守り人

2004/04/20 20:13

思っていたより面白かった

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 女用心棒バルサは偶然からその国の第二皇子チャグムの命を救った。
第二皇子の母は、皇子の命が狙われているからと、バルサに皇子の用心棒をしてくれるよう頼む。
この世「サグ」と、サグと重なるようにして存在する別の世界「ナユグ」。
100年に一度の干ばつ。その年に水の精は卵を産むという。
卵を抱えることになってしまった新ヨゴ皇国の第二皇子チャグム。
水の精の卵を狙う「卵喰い」。
スピード感溢れる展開に、手に汗握る。

100年に一度しか起らない出来事であるがゆえに、人々に正確にその事実が語り伝わらない。
政治に強い影響力を持つ「星読み」たちは、最初、自分達の世界しか知らなかったし
自分達の考え方を信じて疑わなかった。
しかし、石版に残された極秘の文、古代文字で書かれた文を読み解くことにより
自分達の間違いに気づく。星読みは、ちょうど同じ頃バルサと行動を共にしていた
最高の呪術師トロガイ(そのときはまだ敵対していた)から手紙をもらう。
「星読み」がその地位からくるプライドより真実を取ったというその潔さと気高さが
それまで私が持っていた「星読み」に対する「負」の感情を一気にひっくり返した。

 「サグ」と「ナユグ」の有り方が、とても日本的で私は好きだ。
この世(サグ)が「善」だけ成り立っているのではないように
別の世界(ナユグ)もまた「悪」だけで存在しているわけではない。
善と悪があってはじめてそれは「全ったきもの」であるという世界観が好きなのだ。

ある方向から見れば悪であることも、逆から見れば善である。
いろいろなものに影響され、私の中の悪の感情が善の感情へ変わっていっても
またその逆であっても私は私でしかない。悪も善も私の一部なのだ。

サグとナユグはそれぞれを必要としているし、星読みと呪術師もお互いを必要と
し始めた。善も悪を必要とし、悪も善を必要とするのだろう。
一つのものの中にある二つの、いやそれ以上の色々なもののせめぎ合いによって
この世のすべてが存在しているのだと強く感じた。

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紙の本

紙の本ザスーラ

2004/02/15 15:39

終わらない不安

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C・V・オールスバーグの「ジュマンジ」の続編です。
「ジュマンジ」は1984年に発行されています。
この「ザスーラ」は2003年9月発行なので、約20年たって
続編が出たということになりますね。

「ジュマンジ」を読み終わった時、かなりショックを受けました。
ドキドキ、ハラハラ。
映画化もされたそうですが、これを題材にしたくなる気持ちは
とてもよく分かります。
そして「ザスーラ」はその「ジュマンジ」の続編なんですよ!

「ジュマンジ」の最後のページで、ゲームの箱を拾った兄弟が
今回の作品「ザスーラ」の主人公です。
いやー、前作をしのぐ面白さです。
「ジュマンジ」はジャングルが舞台ですが、「ザスーラ」は宇宙が舞台。
スケールも大きくなっています。
そして、最後。
いえ、この絵本の最終ページでこの絵本は終わってますが(当たり前ですけど)
絶対この話は終わってない!!

読み終わってから、我が目を疑いました。
「えっ?? これで終わり??」
そんなわけはないと、なんども前のページに戻ったり
次のページをめくったり、本を逆さにして振ってみたり。
続きのページがポロッとどこからか落ちてくるに違いない。
だってこれ、終わってないもん。終わってないもん。
ドキドキして焦ります。
怖いです。これで「絵本」が終わっていることが。

これも映画化が決定しているようですが、宇宙が舞台とあって
現代のCG技術を駆使した出来になるんでしょうね。

「ザスーラ」だけ読んでも楽しめますが、「ジュマンジ」を読んだあとに
「ザスーラ」を読んだ方がもっと面白いかも…。

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