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わたしのBOOK MARK

-第24回-キタンクラブ主宰 古屋大貴さん

本は、時に友となり、師となるもの。
人生の転機の支えとなった1冊とは?
時代を拓く注目のビジネスリーダーに聞く連載。
第24回は、「コップのフチ子」シリーズなどのカプセルトイが大人気、キタンクラブ主宰の古屋大貴さんです。
文/宮本恵理子 撮影/竹田俊晴

自分の心に正直に生きているか
ストレートに突き刺さる〝人生の指針〞となる言葉集

 僕の人生に影響を与えた本として、浮かんだのは2冊。出会った順序で話すと、1冊目は水島新司さん(原作・花登筺(はなとこばこ))の『銭っ子』(秋田書店)。兄の影響で同じく水島作品の『ドカベン』を読んだことがきっかけで知った〝幻の名作〞と言われる漫画です。

 元は裕福だったのに、不幸な事故がきっかけで極貧生活に転落した少年が再起をかける物語。身に迫る思いで読み耽ったのは、僕自身の幼少期と似ていたからです。父親の事業失敗がきっかけで、ある日突然一変した生活。電気を止められてしまってロウソクを灯し、公園に水を汲みに行く。そんな生活を現実に味わった記憶から、自分と主人公を重ね合わせたのだと思います。『銭っ子』の主人公は、強く憧れ、執着したはずのお金や成功を最後には手放します。真に求めるべきものは、金ではない。では、何なのか。社会に出る前に出会ったこの問いは、僕の胸に深く突き刺さりました。

 その問いをさらに強烈なパワーで僕に投げかけてきたのが、岡本太郎さんの言葉です。専門学校を出た後にメーカーに就職するものの肌に合わず、生き方に迷っていた僕は、指針となる本を求めていました。尊敬するみうらじゅんさんのトークイベントやタナカカツキさんの漫画にもその名前が度々あがっていたような気がします。

 人は皆いつか死ぬのだから、心から楽しめることをやらなければ意味がない。背中を押され、カプセルトイメーカーに転職しました。カプセルトイは、貧しかった子ども時代にも親しめた思い出の玩具です。1個のカプセル欲しさにマシンを持ち上げて操作したり、大人から叱られる悪さもたくさんしましたね。それだけ好きな商品に関われるのは面白かったのですが、会社が成長するにつれ、思い通りにならないことも増えてきました。独立したい衝動にかられながらも、目の前の仕事に追われ、なかなか行動できないでいる日々。そんな中で僕はもう一度、岡本太郎さんの本に出会ったのです。『強く生きる言葉』(イースト・プレス)をはじめとする名言を集めたシリーズでした。

「いつも危険だと思うほうに自分を賭ける。それが生き甲斐だ」「昨日すでにやったこと、人のやったことと同じようなことをやるのでは、まったく意味がない」――どのページをめくっても、「お前は本気で魂をぶつけて生きているか?」と突き付けられるようなエネルギーに満ちていました。

周りに左右されず自分を貫く心の強さを

 闘うことを恐れず、自分を突き通す生き方をしよう。僕が起業を決心できたのも、周りに左右されない志を持ち続けられるのも、その言葉に支えられたからです。

 ものづくりの根幹にあるべきは、独立心です。「コップのフチ子」シリーズのようなヒット商品が生まれると、いろんな話が舞い込んできます。例えば、「飲料ペットボトルのマスコットにしませんか?」など、楽して儲かる誘いはいくつもありました。でも、その世界観が自分のポリシーに合わなければ「やらない」。そう言い切れる自分でありたいと思うのです。自分たちが心から楽しめる仕事しかしない信念を貫くことが、たくさんの人に愛される商品づくりにつながるはずだと。

 バイブルのように繰り返し読んできたこの本は、『壁を破る言葉』『愛する言葉』と併せて、今も自宅のトイレに置いています。でも、だからといって人に勧めることはしません。本は自分で選び取ってこそ、意味があると思っているからです。

 ここ数年は読書に費やす時間がなかなかとれなかったのですが、最近は読書の時間を取り戻そうと思います。やはり心が栄養を求めるのでしょうね。好きなのは、表現者の人生録やエッセイ。最近読んで面白かったのは、写真家の石川直樹さんの『最後の冒険家』(集英社)。画家の横尾忠則さんのエッセイや、過去にめくった寺山修司さんの『書を捨てよ、町へ出よう』(角川書店)もまた読み返したくなりました。青臭かった若い頃、「カッコいい生き方をしたい」ともがきながら出会った本は、一生モノの指針になるのだなと、あらためて感じます。

HISTORY

1975
埼玉県生まれ。
1995
[20歳]専門学校を卒業後、屋根材メーカーに入社。
1996
[21歳]ユージン(現タカラトミーアーツ)に転職。カプセルトイの企画に多数携わる。

☆ここで『強く生きる言葉』に出会った

2006
[31歳]キタンクラブを設立。
2008
[33歳]オリジナル商品第1号として、ネイチャーテクニカラーシリーズ「海洋Ⅰ」を発売。精巧なクオリティの高さが話題に。続く「土下座ストラップ」(2010年)シリーズなどもヒット。
2012
[37歳]「コップのフチ子」シリーズを発売。翌年、累計100万個を突破。
2019
[44歳]「かぶりもの」「スマホのおふとん」「PUTITTO」など人気シリーズを多数展開中。

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