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わたしのBOOK MARK

-第27回-ブラウンシュガーファースト 代表取締役 荻野みどりさん

本は、時に友となり、師となるもの。
人生の転機の支えとなった1冊とは?
時代を拓く注目のビジネスリーダーに聞く連載。
第27回は、ココナッツオイルをはじめ、食の新たな文化を発信するブラウンシュガーファースト代表取締役の荻野みどりさんです。
文/宮本恵理子 撮影/竹井俊晴

90年前に書かれたSF小説に衝撃
揺さぶられて露わになった〝自分の軸〞で起業した

「君はもう少し、世の中を知ったほうがいい」

 当時付き合っていた彼からそう言われ、薦められたリストの中に、この本はありました。イギリスの作家、ハックスリーが1930年代に書いたSF小説『すばらしい新世界』(ハックスリー、松村達雄訳、講談社)。受精卵培養のシーンから始まる物語は、90年前に書かれたのが信じられないほど、資本主義が行き着く先を予言していて、何度読み返しても作者の洞察の深さに驚愕します。

 その世界では、家族愛は野蛮なものとして否定され、人間は感情を完全制御されて〝生産〞される。「怖い」と拒絶しながらも、どこかで「でも、これも一つの正義なのかもしれない」と納得してしまうことがショックでした。

 あの頃、私はまだ21歳。保守的な地元の空気が息苦しくて家出同然で上京し、職を転々としていた頃でした。大好きな服を販売しながら、ノルマの買い取り分のローンに追われ、働けどお金がない。都会で必死に暮らしながら、「こんなに消費して、着飾って、私は何のために生きているの?」と葛藤していました。

 この本との出会いをきっかけに、私は持っていた服を全部手放して、炊飯器や冷蔵庫も捨てて「自分にとって必要最低限とは何か?」を自問自答していきました。その結果、「ミニマムな暮らし」になりました。世間で当然のように受け入れられている〝常識〞を全部疑ってみよう―そんな視点を、『すばらしい新世界』は私に植えつけてくれました。

どんな未来を選びたいか
冷静に自分に問う

 当たり前を疑うクセがすっかり身についた私は、世の中の流行りものに対して「これが売れて、幸せになるのは誰?」「私はなぜこれを欲する?」と常に考えるようになりました。

 そして娘を産んだ2011年、東日本大震災をきっかけに「食の安全」に関心が向き、菓子店を創業。13年からはココナッツオイルの輸入販売をスタート。それがブームとなって、一時は400社近い競合が乱立し、「まさか私がブームを作る側になるなんて」と戸惑いました。戸惑いましたが、「ああ、人はこういうふうに新しいモノに価値を見出し、浸透させ、飽きていくんだな」と冷めた目で俯瞰している私もいました。

 ブームの最盛期には、量産するだけで莫大な富を得られることはわかっていましたが、私はそれを選びませんでした。ビジネスとしては成功だったとしても、「それで何が得られるの? 私は自分の手と目が届く範囲で、豊かな食文化を未来につなげたい」と〝自分の軸〞を握り続けました。『すばらしい新世界』で描かれた世界への拒絶感は、裏を返せば〝私が大切にしたい価値〞そのもの。「人類が母子愛を失わないでほしい」という思いから、昨年、母乳分析の事業を始めました。

 普段、本はよく読むほうだと思います。意外に思われるかもしれませんが(笑)、ずっしり系の本が好きで、今読んでいるのは『マネーの進化史』(ニーアル・ファーガソン、早川書房)。資本主義に興味があって。先日の10連休にロンドンとバルセロナを旅した時も、裏テーマは〝産業革命の爪痕を見に行く〞だったんです(笑)。私のインスタグラムでは、かなり軽いノリで発信していたけれど、実は相当マッチョな動機でした(笑)。「巨万の富を得た当時の商人たちは、自宅としてどんな建築物を造ろうとしたんだろう?」と見に行ったガウディ作品には、有機的な自然への敬意が溢れていました。

 より軽い気分で本を開きたい時によく読むのは『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ、KADOKAWA)。「行き詰まったとしても、すべては必然」と肩の力が抜けます。

 これからも、〝自分の軸〞を守るための本には出会っていきたいですね。大げさかもしれないけれど、経営者は未来をつくる役割を担っているし、それだけの責任がある。選択を誤らないように。自分の言動をいつでも疑えるように。うまくいっている時ほど、揺さぶりを与えてくれる本を読みたいと思っています。

HISTORY

1982
福岡県生まれ。
2000
[18歳]短大の被服科に進学。在学中、ニューヨークに短期留学。帰国後、短大を中退して、アパレルのセレクトショップで働く。
2003
[21歳]上京。アパレル販売、レストラン接客、電器店販売など、多数の仕事を経験。インターネット回線の営業で月収70万円稼ぐも、1年ほどで退職。ミニマムな暮らしを始める。

☆ここで『すばらしい新世界』に出会った

2004
[22歳]派遣社員をしながら放送大学へ。社会学に興味を持ち、さらに駒澤大学で学ぶ。
2011
[29歳]長女出産。東日本大震災を機に「食の安全」に目覚め、母親と共に食材を厳選した菓子店を創業。青山ファーマーズマーケットで販売スタート。
2013
[31歳]株式会社化し、バターに代わる製菓材料としてココナッツオイルの輸入を始める。そのほか有機食品を企画・販売し、年商7億円に。
2018
[36歳]Bonyu.labを設立。授乳期間中の母乳の栄養状態を検査するサービスを新たにスタート。

ブラウンシュガーファースト 代表取締役荻野みどりさんの著書はこちら

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