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連続インタビュー<クリエイターズ・ファイル>

Creative Works Interview14 アメリカンインディアンに認められた日本人/インディアンジュエリー・デザイナー
小野幸次郎(49歳)「R526☆ARIZONA」代表

トップクリエイターの仕事に迫るインタビューシリーズ。今回はジュエリーデザイナーとして、アメリカンインディアンに認められた人物が登場!

撮影:名和真紀子

HIS HISTORY

―日本では数少ない「アメリカンインディアンに認められた男」だとお聞きして、お話を伺いにまいりました。
 でもありがたいよね、ジュエリー・デザイナーとして僕のこと、広く知ってもらえるのは。
―本名は小野幸次郎さんですが、アメリカンインディアンネームもあるとか。
 そう、グラウンド・イーグル。アメリカンインディアンの男たちに認めてもらって、称号をいただいたんだ。うちの奥さんなんかには価値がわからないらしくって、「何それ」ってよく言われるんだけど。意外と知られていないもんだよね。
―なんでグラウンド・イーグルというインディアンネームになったのですか?
 それは僕もわからない。ラダー(族長)が決めることであって、僕が決めることじゃないから。
―どうしたら、ネームを授かることができるのですか?
 ふふふ。うーん、直接的な質問だけど、なんといったらいいんだろう。そりゃ、修行しないとダメだよね。
―その修行は厳しいのですか?
 厳しいという言葉だけでは片付けたくないかな、僕は。正直、想像を絶するものなのかもしれないね。
 まず、神への感謝は絶対。アリゾナでは神聖なる巨大なカラスと鷹が大地を支えているという象徴なのね。なので、僕たちはカラスと鷹に全身全霊を捧げるつもりで暮らさなきゃならない。驚いたのは、最初の5か月間はものをいっさい口にできないということ。

―5か月ですか? それで生きていけるものですか?
 生きていけてなけりゃ、このインタビューはどういうことってなっちゃうよね。けど、本当に極限状態だよ。その中で唯一口にできるものは鷹のクチバシなの。聖なる鷹は体を食べちゃいけないけど、クチバシなら許される。昔のアリゾナの人は、クチバシだったら、迷惑はかけないって思ったのかもね。でも、ほら、なんだろ、傘の先っぽのところみたいなもので、それがなくても雨はしのげるというか、さ。それから5か月を過ぎると、ようやく木の実は口にしてよくなる。それをまた7か月間。大地への感謝を体に刻み込む大切な時間なんだね。
―本当に過酷ですね。
 挫折してしまう人間はたくさんいる。だけど、どこかの国のテレビクルーの撮影かなんかで置いていったメロンパンや揚げパンの誘惑は本当に地獄だったね。また、向こうのメロンパンがうまそうなのよ。大きくて。そして1年の修行期間を終え、鷹の神に一目置かれる空気になり、やっと、ラダー(族長)にグラウンド・イーグルという名をいただくことができたってわけ。

△アリゾナ中部ロータリーにて

―なんでアメリカンインディアンに興味を持ったのですか?
 もともと、僕の親父が米国暮らしでね。僕も生まれは米国なんだ。小学校のとき日本に戻ったけど、親父の趣味でアリゾナの文化に染まって育った。童謡なんかも「どんぐりころころ」とかじゃなくて、「リステライリステライ」(アリゾナ州ネイティブ民謡)を歌ってた。遊びもテレビゲームもなく、木でできた「ルーディア!」というマカダミアナッツ、アプリコット、アーモンドなどの木の実を使った陣取りゲームの玩具にハマってた。そんな環境で育ったから、いつの間にか開拓時代の米国に自然と興味が湧いた。家にある本を見るとアメリカンインディアンが載っていて、身に着けているアクセサリーがかっこいいと思うようになった。だから学生時代は、アクセサリーのデザイン画ばっかり描いていたよ。教室の後ろに貼られる絵画や版画も常に僕は太陽と水と大地のジュエリーデザイン。もちろん、周りは僕を馬鹿にした。でも、正解じゃない? 今こうやって職業につなげられてるんだからね。
―それで憧れの米国へ渡ることにしたのですか?
 そう、高校を中退してね。けど、親父は強く止めなかった。今でも覚えてるけど、「お前がアリゾナ行きたいと思ったんなら、俺は止めないし、なんとなくアリゾナ行くって言うって思ってた」と親父は背中を押してくれた。それですぐさまアリゾナへ行って、ミロリヤ族のグラウンド・ブラウン族長に、修行させてほしいとお願いした。

△申請なる儀式にサズナの煙は欠かせない

RULE OF LIFE

―ミロリヤ族にいて特に大変だったことはなんですか?
 やっぱりグループ間の争いかな。けど、争いがあるからこそ共存ができている。争いがないと、むしろ共存できない。僕も戦いに行ったことがあるし、特にマユール族とはよく争った。歩き方が調子に乗ってるだの、言い方が荒いだの、本当にちょっとしたことで争いになる。もっとソフトに言えよ。そんな言い草ないだろ。直接的な言い方してんじゃん。そんなつもりはない。けど、そこオブラートに包んで言えたじゃん。とにかく、勝ち残るために争いは絶えなかった。でも、神様に生かされているという根底がそこにはある。皆、そこは忘れない。
―独特の儀式などはないのですか。
 土地を離れる前の最後の儀式かな。ラダー(族長)の飼うゴッド・イーグルという鷹がいて、その鷹に、腰の関節と関節の間の第五椎間板を、つまんでもらうという儀式。第五椎間板には神が宿っているという。それがじきに悪に変わってしまうのでゴッド・イーグルに食してもらう。これで全ての修行が終了となる。これがふつうは痛いらしいんだけど、僕はもともとヘルニアだったから、神経に触れている部分をちょうど鷹がつまんでくれて、むしろラッキーだった。おかげで楽になったなんて言ったら族長に悪いから、そのときはつらい顔していたけどね(笑)。

PHILOSOPHY

―幸次郎さんにとってインディアンジュエリーとはなんですか?
 もちろん、彼らと出会わせてくれたかけがえのないものかな。ジュエリーって奥深いんだ。僕はジュエリーを通して、民族や種族の違いなんて超えて、みんなひとつだってことを言いたいだけ。僕たち、地球人なんだから。今日も明日もあさっても、緑がいっぱい夢の町なんだよ。手と手をつないでつくろうよ。
―それってエンディングの歌ですよね。ドラえ……
 好きなんだよ。ターコイズブルーだしね。もうちょっと水色だったら最高かな。
―今日はどうもありがとうございました。

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