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連続インタビュー<クリエイターズ・ファイル>

Creative Works Interview15 トータル・ウェディング・プロデューサー/しあわせプランナー
揚 江美子(47歳)(株)POLAR BEAR WEDDING代表

各界のトップクリエイターに、その仕事ぶりと哲学を聞くシリーズ。今回は、幼少期を中国・大連で過ごし、18 歳で日本へ。現在、日本のブライダル業界で知らない者はいないカリスマの姿を追った。

Photo by Makiko Nawa

Works

―群馬県前橋市にある大型ブライダルサロン「POLAR BEAR WEDDING」にお邪魔しました。代表としてすべてを仕切る揚江美子さん、お仕事ぶりを拝見できますか?
 どうぞどうぞ、私でよければ。今日は、1か月後に結婚式を控えるカップルのお打ち合わせが入っているので、どうぞ同席なさってください。
 さ、新郎さんも新婦さんも、緊張なさらずに。式が近づいて、実感は湧いてきました? 
新郎「はい、徐々に」
新婦「3日前くらいから、なんだか急に緊張しはじめちゃって」
 アハハハ。旦那さんしっかりしないと(笑)。では今日は具体的にいろいろ決めていきましょう。
 まず、お召し物のイメージは固まっていますか? 先日もお話しましたが、ありきたりのものにしないのが、私のMWP、マイ・ウェディング・ポリシーです。
 こないだの式はドレスを着用せず、新郎新婦、家族、スタッフ全員が、背中に平和の象徴である白いハトがデザインされたウィンドブレーカーを着用するというプランもありました。
新婦「えー、すごい。私もできるものならやりたいかも」
 できるものなら、じゃない。できるんです。自分の結婚式なんだから。ほかにも、ガウチョ・パンツとドレスを合わせたり、タキシードの上にパーカーを羽織ったり。ほかにも、バンドメンバー同士で結婚されたカップルは、ウェディングドレスにダメージ加工を加えてあげたり、ドラムや音符の模様を刺繍してあげたり。個人的に好きだったのは、新郎が養蜂場に勤めるカップルは、奥様にベールの代わりに蜂避けネットを使ってみたりもしました。

新婦「えー、すごい!」
 おもしろいですよね。でも、間違いなく記憶には残るじゃないですか。
新郎「たしかに」
 せっかく広島から群馬までPOLAR BEAR WEDDINGを訪ねて来ていただいたわけですし。それくらい思い切らないとね。正式な決定は、今日じゃなくていいので、また次々回の打ち合わせまでに考えておいてください。
新婦「ほんとうに迷うんだけど……」
新郎「そうだよね」
―お話し中、すみません。式までにどれくらいの打ち合わせをなさるのですか?
 はい。POLAR BEAR WEDDINGはというより、私、揚のやり方なんですが、打ち合わせは、極力たくさんやります。他社は平均3~4回の打ち合わせで本番を迎えますが、POLAR BEAR WEDDINGは20回30回が当たり前。
 私の頭の中に、二人のためのプランをぎっしり用意させていただいています。ウェディングはひとつの大きなお祭り。盛り上げ方は無限にある。そんな盛大なお祭りの打ち合わせを3回で終わらせるって、たいしたお祭りじゃないのが目に見えてますよね。
 とはいっても、来ていただいて、お茶やお菓子を食べて終わる回もありますし、煮詰まったときはスポッチャやジョイポリスに行くことだってあるし、嫌いな人のグチを言い合って終わるときもある。ちなみにお二方は、苦手なご親族なんていますか?
新郎・新婦「え……、いや……」
 言うわけないですよね(笑)。
一同「アハハハハハ!」。

History

―徹底したこだわりを持った仕事ぶりですね。衣装の他に今日決めることは?
 では、披露宴の演出面も詰めましょう。お二人とも、お色直しの希望はありますか?
新郎「2回ほど替えたいなと思っています」
 なるほど。ちなみに、うちのスタッフの浅地の結婚式は、私がプランニングしたのですが、分刻みでお色直しをしました。計142着だったかな。おかげで式の写真は分厚く充実したものになりましたよ。
新婦「それはすごいかも!」
新郎「そうだね」
 ウェディングケーキはどうしますか? もちろんケーキ入刀はやられますよね?
新郎・新婦「やりたいです」
 POLAR BEAR WEDDINGでは、縁が切れない、切れにくいというゲンも担いで、レアチーズケーキをお勧めしています。結婚して何年たっても飽きることなく、レアで甘酸っぱい気持ちでいるとの意味も含ませていただいています。

△娘の食事をつくりに、いったん帰宅

―珍しいですね。ふつうのケーキはお勧めしないんですか?
 POLAR BEAR WEDDINGとしては、ふつうのケーキはあまり縁起のいいものではないと解釈しています。スポンジのようにスカスカな夫婦になる、フワフワした考えになる、愛の熱が溶けてしまう、生々しいことばかり起こる。正直、あまり縁起がいい気はしませんよね?
新婦「あ、すごーい」
新郎「すごいね。そこは知らなかったです」
―なるほど。揚さん、少しだけ僕らからも質問よろしいでしょうか。揚さんはいつからこの仕事を志したのですか?
 小学6年生まで、祖父の暮らす中国の大連で過ごしました。祖父の家の隣がホテルだったんです。その中に結婚式場がありまして、いつのまにか勝手に忍び込んで、鐘を鳴らしたり、パイプオルガンを弾いて遊んでいたんです。たまに結婚式に潜り込んで、友だち同士で参列したり。幸せなカップルをたくさん見て、そのうち素敵だなと思う気持ちが強くなってきました。その思いが、今につながっているんだと思います。

Her style

いよいよ、先日打ち合わせをしていたカップルの、式当日。本番まであと2時間を切っているところで、問題が発生―。
―どうされたんですか? 何か問題でも?
 大丈夫です。結婚式当日にトラブルはつきものです。慣れっこというとおかしいですが、トラブルを乗り越えてこそ、私たちも夫婦も強くなるんです。じつは、うちの浅地の発注ミスで、牧師さんの手配がついていないことが先ほど判明したんです。社員教育は徹底しているつもりなんですが……。
 でもだいじょうぶです。別のプランをメインにしてしまうのが私の流儀。新郎新婦が動揺するのは分かりますが、本当に牧師がいなくてもいい、私はたまにそう思うからです。
 二人がヴァージンロードを歩いてたどり着くと、そこには牧師がいない。たった二人の空気。とてつもない間。誰が仕切るのだという不安。でも、そういうときこそ、二人で乗り越えるべき。大事なときに牧師に頼るのは、夫婦にとってよくない。二人だけで誓い合う、これこそ本当の愛の儀式なんです。
―すごいですね。本当のプロを感じます。最後に、幸せを感じるときはいつですか?
すべて式が終わったときに、新郎新婦から、本当にPOLAR BEAR WEDDINGさんに頼んでよかった、ありがとうと、封筒に入った心づけをいただいたときが、ウェディング・プロデューサーとしての一番の幸せかもしれません。
―なるほど。ありがとうございました。

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