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連続インタビュー<クリエイターズ・ファイル>

Creative Works Interview27
企業レスキュー・コンサルタント
沖田義盛(45)

各界のクリエイターを紹介するシリーズに、日本のビジネスシーンで「救世主」と称される人物が登場!

*クリエイターズ・ファイルの単行本が発売されました。
クリエイターズ・ファイルVol.1
2016年9月20日発売。価格1,400円+税(DVD付き)
詳細はこちら。

撮影=高橋宗正↑おきた・よしもり
2008 年に企業レスキューコンサルタントを立ち上げ、現在までに経営不振に陥った60 近い会社を救う。元々、役者志望であり、九州で演劇活動をしていた異色の経歴の持ち主。著書に『社長室が会社を消す日』がある。

RESCUE1

 物流分野では中堅の企業「オオタワ物産」は現在、経営不振の状況にある。
ここ5年の物流グラフは年々下降し、去年32人の社員のリストラを決行した。そんなオオタワ物産総務部担当である池内さんに話を聞いてみた。「こんなこと言いたくはないですが、正直我が社は崖っぷちの状態です。もう我が社が自力で再建するのは不可能と感じています。そんな時、たまたま手に取った『社長室が会社を消す日』を読み、今こそ企業レスキュー・コンサルタント沖田さんにお願いするしかないと決意しました」
 取材している私たち自身、この状況で再建することは不可能だろうと感じるほどだった。何より、担当者・池内さんの目は切迫していたように感じた。すると約束の時間ぴったりにエレベーターから降り立った人物がひとり。沖田義盛だった。
「企業レスキューの沖田と申します。よろしくお願いします。状況はすべてわかっています。空気でね(笑)。会社を立て直せるかどうかはわかりませんが、いつも通り全力でやるのみです」
 と、沖田はオフィスの視察を始めた。「……なるほど、明るさはいいですね。オフィスに光がたっぷり入らないとアイデアなんて絶対に出ません」
 とチェックを入れた。
 次に目をつけたのが、空間だ。「包み隠さず言わせていただきます。社内の空気の流れがよくないです。流れが止まってしまう悪いツボのようなものが各所にあるように思えます。これをカンパニー・ポケットといいます。我々の業界ではカンポケと略していますが。『オオタワ物産』さんはこのカンポケが7ヶ所はあるのです。物流の会社ですから本来はモノを流す会社です。その流すということが自分の会社で行われていない。ここがまずい点だと思います」
 なるほど。カンポケが生じるメカニズムとは?
「人間の体と同じように、会社にもリンパが流れています。僕らはカンパニー・リンパと言っているのですが、基本的にこのカンパニー・リンパは玄関から社長室に流れていきます。しかし、オフィスの構造、コピー機の配置、人のポジション、日差しにより、リンパがポケットに溜まってしまいます。そこがカンポケというわけです。すなわち、ルートを確保してあげないと会社は回りません」
 カンパニー・リンパを流すために、今すぐできることは?
①席と席のあいだの仕切りを取り去れ
②オフィス内での会話はギザギザにせよ
③1人に話すな、3人に話せ
④内線はどんな用件も3人につなげ
まずは、そこから始めることです」

↑図で見ると、カンポケの多さに気づかされる

RESCUE2

この後、沖田さんは小さなアンテナのついた機器を取り出します。それは?
「これは社内のCAを測定しています。CAとはカンパニー・エアー。会社の空気を測っています。数値が少ないほどストレスも少ないのです。ちなみに、ここのあたり46CAと出ていますが、このあたりは2CAと出ています。この奥は何の部屋ですか? なるほど原因がはっきりしました。やはり、社長室に近い方がCAの数値が少ない。すなわち、社長室にストレスを感じている社員が多いのです。社長室は会社の空気清浄機でないといけないはずなのに」
 空気が沈んでいることを確認した沖田さん、ひとつゲームを提案します。「じつは僕は博多の人間なんですよ。故郷では演劇をやってました。若いころはずっと劇団に所属をしとったっちゃったんね。その経験が意外とコンサルタントの仕事に結びついとるとかいな(笑)。常に行動は見世物、ショーだと考えんといけんけんね。会社だってくさ、ひとつの劇団ばい。座長が社長やもん」
 と、沖田は目を輝かし、一同に説明した。
「じゃ、こっちの社員のみなさん、こっちに来て観客ばやってくれんね? 残りの人が劇ばするたい。はい、上演開始!」
 社員がしばらくいつも通りの業務を続けると、沖田さんの声が飛んだ。
沖田「はい、観客役のみなさん、今の劇ば観てどう感じた?」
社員A「うーん、つまらなかったです」
沖田「あなたは?」
社員B「劇として考えたらおもしろくはなかったです」
沖田「そりゃそうたい。何かを起こしてお客さんに観てもらおうという気持ちがなかったもんね。要は、いつ見られてもいいように、意識して仕事をしろいうことたい。今のが演劇やったら金返せ、金返せ、の大暴動たい。あ、ごめんね、博多弁、出てしもうて。じゃあ、それを意識してもう一回、いつも通りに仕事をしてみてください。スタート!」
 立ち上がって、男性社員が斜め前の女性社員に話しかけます。
社員A「主任! 来週の企画通るといいですね。私はすごくそう思います」
社員B「そうだねー。うまくいくといいねー。みんなはどう思うんだい?」
社員C「私もです」
社員D「僕もです」
社員B「いやー、楽しみになってきたなー」
(一同、ハハハハハ)
 「OK!」と、沖田さんが芝居を止めます。
沖田「観ている人、どう思った?」
社員A「おもしろかったし、早く続きが見たいです」
社員B「すごくバイタリティあふれる劇というか現場でした」
沖田「なんとなく、気づいてもらえたかな(笑)」

↑CA 計測器は沖田が自ら開発した機器だ

RESCUE3

昼休み明け、近くの広場に社員が集いました。
「はい、ここではカンパニー・アスレチック・プログラムをやります。この手鏡はカンパニー・ミラー。鬼ごっこをして、鏡を向けられたら自分の決意を叫んでください。捕まったら絶対に叫ばなくちゃダメ。スタート!」
 逃げ惑う人たちを、鏡を持った鬼が追いかけます。追いつかれ、鏡を向けられた社員は大声で決意表明。
「会社にとって自分は、新しい風になりたい!」
「会社にとって自分は、唯一無二の存在になりたい!」
 叫んだ社員の顔が目に見えて明るくなっていることが、取材陣にもわかった。
 このほかにも「カンパニー・ホース」と名付けた馬跳びで結束力を高めたり、さらには、沖田コンサルティングの真骨頂「カンパニー・シルエット」もこなします。
 カンパニー・シルエットとは、社員それぞれが会社の備品になりきるオリエンテーション。力を合わせてコピー機になったり、シュレッダーになったり、組体操のようにして、心を一つにします。これによって、会社の風景すべてを模写できるようオフィス全体を観る習慣がつくということだ。
 濃密な研修を終えました。沖田さんにとっては、社員の目の色が変わる瞬間こそ喜びなのでしょうか。
「そうです、その結果、傾きかけてる会社が元に戻ったときがいちばんうれしいですね。僕はどうも完成品より、壊れたものの方が好きなんです(笑)。会社でも、うまく回っているのを見ると、いったん壊したくなるんですよ。今回も私の研修中、合計5人が会社を辞めて、組織が壊れ、再創造が生まれましたね。でも、今のメンバー、なんだかいいでしょ? 
 シイタケだったかな、いったん冷凍して繊維を壊し、解凍して食べると旨味が出るって聞いたことがあるんですよね。会社はシイタケであってほしい、そう思うとです」
 なるほど。ありがとうございました。

↑コピー機を表現するオオタワ物産の若い社員たち

↑こんな若者たちが会社を傾かせるわけがないと沖田は言う

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