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連続インタビュー<クリエイターズ・ファイル>

Creative Works Interview 49 史上もっともクリエイティブだった妖怪
喰らう人(くらうど)

気鋭のクリエイターを紹介する当シリーズ取材班はこのたび、由緒あるお寺に潜入。
世にもクリエイティブな妖怪たちがいるという噂を、徹底検証した。

撮影=高橋宗正

Ghost Story 1

――3月8日、和歌山県。日本の妖怪史上もっともクリエイティブだった妖怪の痕跡が祀られていると聞き、取材班は、和歌山県中心地から車で3時間弱、小さな村にある東開満寺に向かった。

「ようこそお運びいただきました」

――お出迎えしてくれたのは東開満寺住職・来生宝生(きずぎほうしょう)さんだ。よろしくお願いします。

「はい、我が東開満寺には大昔、たくさんの妖怪が訪れた痕跡がわかりやすく残っています。さっそくですが、そちらにあります小さな池にも、不気味な言い伝えがあるのです。この池に大昔、日が暮れ、辺りが真っ暗になると同時にそれはもう、恐ろしい小さな妖怪たちが集団で現れたのだそうです。

 村人たちはその妖怪を『よなかおよぎ』と呼んでいたとまでは伝記に残っております。なんとも物騒な妖怪で、名前の通り、夜中に池でパシャパシャと泳ぎ狂い、村人は眠りにつけず困り果てていたといいます。その妖怪『よなかおよぎ』ですが、近年になり、若者たちに注目されることになりました。現代の若者の間でナイトプールなるレジャーが流行っているとのことですが、妖怪『よなかおよぎ』の習性があまりにもそれと重なるというんです。挙げ句の果てには、雑誌やメディアが『よなかおよぎ』がナイトプールの元祖だと報道し、私もわからないうちに、流行の先取りをした妖怪として知れ渡りました。なんともよくわからない話ですが(笑)」

共通点の多い「よなかおよぎ」とナイトプール。中には桃色の鳥にまたがる妖怪もいたという

実は住職の来生宝生さんも、突然の妖怪ブームには驚きを隠せないという。息子の健吾さんは元バンドマンだ

今では全国から妖怪愛好家たちが多く訪れる東開満寺。敷地一帯が塩化亜赤中性の土壌のため、妖怪が好んだのでは?と愛好家は言う

――そうなのですか。他にも妖怪の痕跡はありますか?

「たくさんございます。この寺内の沼に背の高い植物がたくさん生えております。誠に得体の知れない奇妙な光景でございますが、昔、『富士六』というなんともおぞましい傲慢な妖怪が、この沼に勝手に種を植え、植物を育てたのです。一年たち、成長した植物の姿は所狭しと立っている、スタンディングしている光景なのです。うちの倅(せがれ)に言わせると、まるでステージを囲むフェスのようだとかなんだとか。私にはよくわかりませんが、この妖怪『富士六』が、音楽のフジロックとかなんとかいうお祭りの語源になったと言うのです。もちろん、真実のほどは定かではございませんが、倅(せがれ)がそう言うもので」

密集して真っ直ぐに立つ植物の姿は、野外フェスそのものだ

境内には他にも、日本最古のフォトグラファーといわれる妖怪のぞき男が覗いたと言い伝えられる穴岩も

「店頭」は出没するたびに香りや泡の色を変えていたという

Ghost Story 2

――ここで、本日取材させていただくメインでもあります、あの恐ろしい妖怪の掛け軸を見せていただけますか。

「はい。こちらが史上もっともクリエイティブだったと言われている妖怪『喰らう人(くらうど)』の絵でございます」

――住職、「喰らう人(くらうど)」とはどんな妖怪なのですか?

「600年前から伝わるお話がございます。『喰らう人(くらうど)』はまず、皆で新しい銘柄米を栽培しようと企画し、言葉巧みに人を募るのです。村人は企画に賛同し、畑仕事に力を注ぎます。しかし、いざ稲が実ると皆で分けるどころか、独り占めするのです。挙げ句の果てには集まった村人まで喰い殺してしまう恐ろしい妖怪なのです。ここで今一度、『喰らう人』の習性を考えてみてください。計画・企画を発表し、人を集める。そう募るという意味では、現代のクラウドファンディング?なんたるものにそっくりだと、倅せがれが言うのです。たちまちクリエイティブな妖怪と話題になり、最近ではクラウドファンディングの会社を立ち上げた若い社長や一流クリエイターたちがこぞって掛け軸に参拝に訪れます。倅(せがれ)もものすごく喜んでおります。当寺としてはありがたいことでございます」

「喰らう人」に参拝するクラウドファンディング会社の方々。御守りは千八百円で発売している

――他にもゆかりの妖怪がいるのですか。

「こちらは『猥背(わいはい)』という飛び回る奇妙な妖怪です。背中に彫られた卑猥(ひわい)な刺青を見せつけながら村中を飛び回る妖怪であり、昔の男たちは、この妖艶な彫りを求めて、〈ここ『猥背(わいはい)』飛んでる?〉〈うわ、そうなんだ、『猥背(わいはい)』飛んでないんだ〉と悔しがったと言います。

 倅が言うには、現代のWi-Fiは猥背(わいはい)が語源だということです。

 他にも、代官山の語源といわれている『山大漢(やまだいかん)』。テレアポの語源となった『照阿呆(てれあぽ)』、SNSの語源となった『餌得餌(えさえるえさ)』など、たくさん存在していたといいます。倅(せがれ)が言っていることなのですが……」

――なるほど、妖怪たちは現代にも息づいているのですね。ありがとうございました。

東開満寺に保存されている「猥背」の古絵。額のシワが驚くほどに現代のWi-Fiの印と似ている

代官山の元となった「山大漢」。人様のお洒落な服や小物を盗んでは空から一箇所にばら撒いたという

大切に保存されている「喰らう人」の手のミイラ。住職の息子で元バンドマンの健吾さんが見つけたという

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