ブックキュレーター週刊・フジマル
民間企業を丸裸にしたノンフィクション
資本主義社会では民間企業の動向が、数年がかりで社会を激変させる。実際に第二次世界大戦の原因の一部は、民間企業が生み出した。だから企業活動の本当のところや経営トップの頭の中身はどうなっているのか、関心を寄せる編集者や取材者は多い。それを丸裸にすることに成功した本からは、社会のこれからを見通せるような気がする。
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ファーストリテイリング会長兼社長が06年に著した手記。単なる経営者本だが、90年代に爆発的に成長した「ユニクロ」のサクセスストーリーがつづられ、現在の同社の骨格を物語っている。デフレの勝ち組と称される同社が、4年前にブラック企業批判と円安進展を受けてとった雇用戦略や値上げ戦略が今ひとつ芳しくないのは、同社の骨格がそれを受け付けなかったことが要因かもしれない。
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著者の横田増生は過去20年間で急成長したユニクロの歪みを「帝国の影」として明らかにしていく。13年に巻き起こったユニクロのブラック企業批判は、横田と出版社をファーストリテイリングが名誉棄損で提訴した裁判がきっかけだった。ユニクロ側が裁判に提出した資料が、逆にユニクロでの仕事の過酷さを物語っていたという皮肉な結果は、帝国トップの慢心を如実に現していた。裁判は最高裁まで争われ、ユニクロの全面敗訴が確定した。
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大塚家具のお家騒動の顛末から企業統治の問題を浮き彫りにしている。父と娘の骨肉の争いと騒がれた同社のお家騒動だが、実は同族経営や創業者のカリスマに依存しがちな日本ではどの会社でも起こり得る。企業統治のなんたるかが分かる一冊。
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90年代の経営者たちは「オカルト」に走り、スピリチュアルにすがるようにして、経営は非科学化していた。地下鉄サリン事件が発生し、社会問題の視点は新興宗教にむけられていたが、終末期思想に最も毒されていたのは名だたる大企業の資本家や経営者たちだったという衝撃。時代の空気を思いっきり吸い上げて、自身の仮説を検証し、一冊のノンフィクションにまとめ上げた力量はすさまじい。
ブックキュレーター
週刊・フジマル取材者・ライターとなって11年目のシーズンを迎えた。「週刊現代」を主戦場に、芸能、事件、経済、政治などなど、なんでも取材してきた。取材資料として本を読みあさり、どこかしこから届けられる献本にも目を通している。企業不祥事、内紛、政治家や官僚の汚職事件をやりながら、日本の富裕層モノや資産運用の記事を作って、EU崩壊を本気で心配していると、好きなジャンルはなかなか定義しづらくなっているけど、かつては斉藤貴男の『カルト資本主義』に感動し、最近では横田増生の『仁義なき宅配』を読んで、取材者とはかくありたいと思った。福岡県出身、無趣味。
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