読後にひとひらの切なさが残る、感動だけじゃない「泣ける」小説

強盗殺人を犯して服役する、加害者の家族の物語です。加害者の家族という苛烈な立場を、あえて正面から描き切った禁断の作品。毎月届く獄中からの手紙と、試される家族の絆は、現実以上に過酷な現実を読み手に突き立てるようで、平然と読み切ることは不可能なほどの力が宿っています。

不倫関係から妊娠に至った男女と、その友人の物語です。はじめは、ただ友人として力になるはずだった感情は、やがて違う形へ。何かを得るためには何かを捨てなければならず、そしてその選択には大きな痛みが伴います。純愛を貫くために痛みを選ぶ生きざまが、どこまでも切ない女性の物語です。

妻が若い男と不貞を行っている間に、3歳の娘は殺されてしまいます。夫は、妻への復讐をくわだて、殺人犯の娘・陽子を秘密裏に養子に迎えたのでした。復讐の道具にされているとは知らず、健やかに育つ陽子。やがて夫のたくらみに気づき、陽子を殺そうとする妻。愛の狭間で罪とゆるしが揺れる、救いがたい復讐の物語です。

不倫相手から、生まれたばかりの赤子を誘拐した希和子。逃亡を続けながらも、血のつながりのない娘・薫を育てます。逃亡に次ぐ逃亡で疲弊する希和子、復讐のために作られた親子関係と、それでも芽生える母性。加害者が本当にすべて悪いのだろうかと、釈然としない感覚が常に脳裏をよぎる切ない小説です。

難病にかかった子どもを救うための募金。有り触れた光景ですが、本書はその裏側を冷淡に描いています。人身売買、臓器売買、そして自分の子のために死んでいく他人の子。正しいと思っていた価値観が崩され、信じて疑わなかった倫理感が根底から揺るがされる、仄暗い物語です。