個性豊かな主人公と、危うさが魅力的！女刑事の小説

雪平夏見。捜査一課内で検挙率1位、大酒飲みで無駄に美人、バツイチで子持ち、容疑者を射殺した経験あり。そんな彼女が主人公です。ある日、警察に小説が届けられ、その小説通りに殺人事件が起きます。次の事件を防ぎたければ小説の続きを買うようにと迫る犯人。犯人のターゲットにされた雪平に迫る危機。緊迫感あふれる一冊です。

八神瑛子。夫を失った過去の事件から警察を憎み、同僚の弱みを握って脅迫したり、暴力団とつるむ悪徳刑事。彼女の管轄区域で暴力団組長の娘が殺害され、瑛子の排除を目論む署長から監視されるなか、彼女は独自に捜査を進めます。その矢先、手口が酷似した事件が起き・・・。冷酷で憎悪に満ちた、危険な女刑事の活躍が描かれています。

姫川玲子。天性のひらめきを持つ女刑事であり、過去にうけた性犯罪の記憶に縛られる女性でもあります。チンピラ惨殺事件の捜査をするなか、犯人を特定する情報が入りますが、上層部から情報を追うなという指示が・・・。捜査過程で出会う暴力団幹部・牧田との禁断の恋。恋と事件の解決が相反する危うさと、もろさを美しく描写した小説です。

藤堂比奈子。記憶力以外は一見、平凡。しかし優れた直観力をもつ女刑事。比奈子が追うのは奇妙な連続自死事件。犯人らは、自らが行った殺人と同じ手口で自死していきます。そして、捜査の過程で未解決の幼女惨殺事件が結びつき・・・。凄惨で残虐な事件現場を、薄氷を踏むように渡り歩く比奈子の姿にハラハラさせられます。

5人の女性警官を主人公にした短編集。それぞれ警官を志したさまざまな背景をもち、その仕事への違和感を感じながらも、死に隣接したリスキーな職務を遂行する女性たち。容疑者を射殺した女性警官の苦悩を描く「完全」では、主人公が事件の内容と、どのように射殺したかを回顧します。人を殺した心の闇が淡々と描写されています。