ブックキュレーター作家 安生正
心揺さぶる男たちのドラマ。今の時代だからこそ読んで欲しい硬派の小説
程度の差はあれ、人はみな人生の荒波を航海しています。「なぜ自分だけが」とへこんだ時、前を向く勇気が欲しくなる時もあるはず。どんな困難に出会っても拳を握りしめ、奥歯を噛みしめて運命に立ち向かう男たちを主人公にしたエンターテインメント小説を選んでみました。
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女王陛下のユリシーズ号
アリステア・マクリーン(著) , 村上 博基(訳)
第二次世界大戦の末期、北大西洋。猛り狂う海、嵐、そして襲いかかる独軍。絶望的な作戦にかり出された男たちのジョンブル魂が胸を打ちます。登場人物全員が主人公ですが、とくに「やるがいい。英国海軍くたばれ。我愛の限りを込めて」という電文を発して、自分の船と運命をともにする船長に思わず涙します。
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ナヴァロンの要塞
アリステア・マクリーン(著) , 平井 イサク(訳)
第二次世界大戦のエーゲ海、ナヴァロン島。ハイテク装備などない時代に、知力の限りを尽くして独軍に挑む男たち。彼らが戦場で見せるのは、名誉ある死を選ぶ潔さではなく、生き残るための猾さとしたたかさです。捉えられればスパイとして処刑される運命と知りながら、友軍を救うために男たちは出撃します。
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凍てつく街、殺伐とした緩衝地帯に群れるカラス。解放前の東西ベルリンを知っている私には、この小説で描かれる風景、政治情勢、スパイの現実、すべてが胸を締めつけます。東西冷戦に翻弄される主人公。イアン・フレミングの世界とは真逆の、心がズタズタに引き裂かれる非情な世界こそが諜報の真実だと教えてくれます。
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アルジェリア戦争終結にともなうド・ゴール暗殺計画。恐るべきリアリティで追う側と追われる側の息詰まる攻防が描かれます。鮮やかに登場し、金のためにド・ゴール大統領を狙う冷徹な殺し屋とは対照的に、仕事の九十九%までは決まりきった地味な捜査と信じるベテラン警視の対決。これもまた見事な男のドラマです。
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ブックキュレーター
作家 安生正1958年生まれ。京都大学大学院工学研究科卒業。建設会社勤務。2012年、第11回「このミステリーがすごい大賞」を『生存者ゼロ』で受賞。その後『ゼロの迎撃』『ゼロの激震』がパニック3部作として刊行される。2014年12月「このミステリーがすごい! ベストセラー作家からの挑戦状」で『ダイヤモンドダスト』がTBS系にてドラマ化。無類のロック&映画好きでもあります。
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