ブックキュレーター松村真宏
仕掛けで人を動かす
押してダメなら引いてみな。一言で言うとこれが仕掛けの極意です。人に動いてほしいときは無理やり動かそうとするのではなく、自ら進んで動きたくなるような仕掛けをつくればよいのです。ただ、言うは易し、行うは難し。「ついしたくなる」仕掛けをつくるヒントとなる本を紹介します。
【丸善日本橋店フェアー/書籍によるビジネス講座『日本橋ビジネススクール』ブックツリー】
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考えなしの行動?
ジェーン・フルトン・スーリ(著) , IDEO(著) , 森 博嗣(訳)
書類を口でくわえているのは両手で財布を使うため。塀の上に空き缶が置かれているのはごみ箱がなくなったため。横断歩道で赤信号を待っている人がいないのは、ついさっき赤に変わったばかりだから。このように、一見すると「考えなしの行動」に見えることでも、そこでは何かが起こっているのである。本書はそのような事例を写真と簡潔な解説(英語の原本には解説がないそうだ)で紹介しただけの本である。しかし、何気ない日常空間の見方を変えてくれる、そのような気づきのスイッチを入れてくれることは間違いない。
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本書で扱う「影響力」は、人の行動を促す心理的な力のことである。たとえば、レストランのウェイターが伝票と一緒にアメをつけるとチップが増えるという実験結果がある。この理由を探っていくと、アメをつけることが人の返報性という原理に働きかけ、その結果としてチップが増えるという因果関係が導かれる。本書ではこのような事例が数多く掲載されている。身近な事例が多く出てくるため、いかに身の回りで影響力の武器が利用されているのかもわかる。世の中に対する見方が変わる一冊である。
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アイデアのつくり方
ジェームス・W.ヤング(著) , 今井 茂雄(訳)
これほど本質だけが簡潔に書かれた本も珍しい。一応全部で102ページあるが本文は62ページまでであり、しかも小さな本に大きな文字なのであっという間に読める。それにも関わらず、本書では『アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。』(p.28)を実現するための方法が見事にまとめられている。63ページ以降の竹内均氏による解説も読み応えがあるので、本文と合わせてじっくり味わっていただきたい。
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実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択
リチャード・セイラー(著) , キャス・サンスティーン(著) , 遠藤 真美(訳)
面倒くさいときやよく分からないときは適当にエイヤッと決めてしまうことは多いし、何も考えずになんとなく選んでしまうこともある。このように、人が合理的な行動をしていないことは、我が身を振り返ってみれば明らかである。したがって、選択肢があって自由に選んでいいときに人を合理的な判断へと導くことができれば、それは素晴らしいことである。本書はそっと肘で突く(ナッジ)ことで人を合理的な選択肢へといざなうメカニズムについて多数の事例とともに分かりやすく紹介している。
ブックキュレーター
松村真宏1975年大阪生まれ。大阪大学基礎工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。2004年より大阪大学大学院経済学研究科講師、2007年より同大学准教授、現在に至る。2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、2012~2013年スタンフォード大学客員研究員。趣味は娘たちと遊ぶこと(遊んでもらうこと)。
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