ブックキュレーター漫画家 倉田真由美
事件は何かを教えてくれる!戦慄の5冊
実際に起きた事件、特に殺人事件は私たちが日常巻き込まれるトラブルの究極の姿です。誰もが加害者になる可能性があるとは私は思いませんが、被害者には誰でもなり得ます。例えば私も「だめんず」で何度も見たストーカートラブルは、事件化していないものを含めるとおそらく毎年何百件何千件と起こっているはずですが、殺人にまで至るものはごく一部です。ただ、ごく一部ですが「ストーカー殺人」は毎年起こります。殺人にまで至るもの至らないもの、どこに差があるのかどういう避け方があるのか、実際の事件から学べることは多いはずです。殺人事件を第三者がみっちりと取材してある5冊です。
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木嶋佳苗の事件と同時期に、一人の女の周りで起きた鳥取での男性連続不審死事件。容疑者の上田美由紀はスナックのホステスで木嶋と同世代で似た体型でありながら、派手な生活をしていた佳苗とはまるで違う地味で貧しい暮らしをしています。いわゆる魅力的な女のイメージからはほど遠い彼女が、どうやって何人もの男たちの心を絡めとっていったのか、緻密な取材で分かってきます。取材者である著者・青木理さんが、出過ぎず引っ込み過ぎない絶妙の距離感で存在感を示してくれているのもいいです。
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少年時代に自分の母親を殺し、その後何年も経って全く無関係な姉妹を殺した男の言葉。たったこの一言に、怒りと悲しみと、どうしようもない脱力感を感じてしまいました。既に死刑になってこの世にはいない犯人の不幸な生い立ちや発達障害、悪縁としかいえない人間関係など詳細に取材してあり、考えさせられるところがたくさんあります。本のレビューを見ても、いろんな人が様々な立場から多様な感想を持ったことが分かります。
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津山三十人殺し 日本犯罪史上空前の惨劇
筑波 昭(著)
日本の犯罪史に残る大量殺人、古い事件ですがかなり詳しく取材してあります。どうも事実と異なる部分もあるようですが、読み物として矛盾はなく問題ないと思います。時折挿入されている古い写真が妙に恐ろしく、夜寝る時、瞼に甦ります・・・。
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黒い看護婦 福岡四人組保険金連続殺人
森 功(著)
北九州で起きた一家連続殺人、尼崎の一家殺人、そしてこの看護師の女4人による殺人、どれも共通するのが「異常なマインドコントロール」です。どの事件にも指導者的な立場の主犯がいて、これが強烈に口が上手く他人を支配するのが上手い。未だ出会ったことがないし、そんなに数はいないんだと思う(というか信じたい)けど、このタイプの人に出会ったら自分はどう感じるんだろうと想像してしまいます。丸め込まれてしまうのか、「バカなこと言ってる」と相手にしないでいられるのか・・・「出会ったら最後」な、致死率100%のウイルスのような人間がいる、ってことなのかもしれません。しかし、女の死刑囚は男に比べ圧倒的に数が少ないけど、マインドコントローラーに関しては女の比率もかなり高い気がする・・・。
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事件もののノンフィクションとして、金字塔の一作。今でこそストーカー規制法のきっかけとなったこの事件を知る人は多いけど、発生当時は様々なとらえられ方をされ、被害者が侮辱されるような記事なども出ました。でも、事件の全容が判明するにつれ、何の落ち度もない被害者の名誉はずいぶん回復されたことと思います。その立役者がこの本の著者・清水潔さんです。情熱的な取材力にただただ心が震えます。
ブックキュレーター
漫画家 倉田真由美大学卒業後、「ヤングマガジンギャグ大賞」に応募し大賞受賞。2000年ダメ男を好きになる女たちを描いた『だめんず・うぉ~か~』連載開始。その後も『もんぺ町ヨメトメうぉ~ず』、アイドル漫画『終末アイドルフルフル9』『トーキョーはらへり散歩』『くらたまの恋愛やり直し!!塾』など、多数の漫画や書籍を執筆。現在は執筆活動のほかにテレビ・ラジオ出演、トークショーと多方面で活躍中。趣味は読書で好きなジャンルはミステリー、ホラー、好きな作家は貴志祐介、前川裕、小野不由美。
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