ブックキュレーター田中裕介(イギリス文学・文化研究者)
「イギリス」が感じられる日本語の著作
「イギリス」を感じるためには、当地に長く滞在すればよい。それが容易にできなければ、イギリス人の著作を読めばよいだろう。私もそうやって日本で「イギリス」経験を重ねてきた。しかしそのような書物群にいつの間にか紛れ込んだ日本語の著作がある。イギリス情報を与えるというよりも、日本語の散文で「イギリス」を感じさせてくれる本・・・。
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エレガンスの流儀
加藤 和彦(著)
英国ファッションに関してもっとも板についた日本語を綴ったのがミュージシャンだったのは意味深い。単なる英国紳士のスタイルの物まねをあざ笑うだけのスノビズムは簡単には手に入れられないが、加藤はそれを膨大な手間暇をかけて自分のものとしている。そのストイックな態度こそがきわめて「イギリス」的に見える。
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節約の王道
林 望(著)
加藤の「エレガンス」と林の「節約」は表裏一体で「イギリス」に肉薄しているように思える。林の著作ではイギリス紹介エッセイよりも近年の生活指南本にこそ「イギリス」が強く匂う。ヴィクトリア時代に多くいたこのような「奇矯な合理主義者」はいっそ懐かしい。もっとも英国のこの種の男は独身者であることが多いのだが。
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歴史の工房 英国で学んだこと
草光 俊雄(著)
学者が書き綴る日本語が一般的に魅力を失って久しいが、イギリス的な学問の蓄積を伝える日本語の書き手の筆頭に挙げられるのは本書の著者である。彼は長きにわたった英国滞在の経験を、その経験自体が絶妙に浸透した日本語で刻み上げる。多彩な対象を語る一貫した文体の核に、そのイギリス的な日本語の感触が潜んでいる。
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ブックキュレーター
田中裕介(イギリス文学・文化研究者)1972年静岡県生まれ。現在、青山学院大学文学部英米文学科准教授。専門は19世紀イギリス文学・文化。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了(学術博士)。共著に、『混沌と抗戦―三島由紀夫と日本、そして世界』(水声社)など。訳書に、エドマンド・ホワイト『マルセル・プルースト』、ピーター・ゲイ『シュニッツラーの世紀』(以上、岩波書店)、フランク・トレントマン『フリートレイド・ネイション』(NTT出版)など。メンバーの一員である「飯田橋文学」のサイトでは対談インタビュー等の様々なコンテンツを配信中(https://note.mu/iibungaku)。
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