ブックキュレーターライター・編集者・映像制作者 品川亮
遠くへの旅に誘われる本
日本では想像もできない現実やらトンでもない出来事ばかり書かれていると、面白いけれどそんなとこ行きたくないという気持になるし、あたりまえに行って帰ってこられそうな旅の話では読んでいて一向面白くない。ここにあるのは、読んで面白くしかも遠く離れた土地への旅に強烈に誘いだしてくれるという、希有な旅本である。
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たまたまザイール、またコンゴ
田中 真知(著)
旅行記はこんなに面白かったのかとジャンルそのものを再発見させてくれる本。想像を絶するブラック・アフリカの現実を開陳しつつも、笑いを忘れず、しかも旅のエクストリーム性だけを売りにしていないためか、キビシイとわかっていてもコンゴに行ってみたくなるから不思議なもの。この著者の旅行記をもっと読みたい。
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ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え
デイヴィッド・グラン(著) , 近藤 隆文(訳)
「エル・ドラード」と聞いただけでジャングルに飛びこみたくならない人間がいるだろうか。実際のアマゾンが地獄そのものだと知っていても。本書の著者もまたすべて承知の上で、1925年に出発し二度と戻らなかったイギリス人探検家の足跡とその先にあるかもしれない「幻の都市」を求めて自ら「探検」に乗り出すのである。
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ここにある80年代末のギリシャとトルコの現実が、どれほど遠い風景なのかはわからない。だが素直に、著者の旅したコースをそのまま辿ってみたいという気持にさせる。旅の経験をすべて「良い思い出」へと変質させるあの「旅の魔法」を、読者全員にかけているということになるだろう。登場する食べ物もみなうまそう。
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砂漠へ 心の故郷、アメリカ南西部
ウィリアム・キトリッジ(著) , 幾島 幸子(訳)
アメリカ南西部はメキシコとの国境地帯に広がっている。過去から現在に至るまで、侵略と殺戮のさまざまな物語を生成してきた土地である。そこにオレゴン生まれの著者が、「よそ者」の澄んだ視線を投げかける。激シブな紀行文だが、旅から戻った夜にふと開きたくなり、数ページ読んではまた南西部に戻りたい気持にさせる。
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ブックキュレーター
ライター・編集者・映像制作者 品川亮ライター・編集者・映像制作者。SPLEEN FILMS代表。出版社などの勤務を経て、2016年フリーランスに。カルチャー情報サイト「HarmlessUntruths.net」(http://harmlessuntruths.net)主宰。月刊誌「STUDIO VOICE」元編集長。共編著に『ゼロ年代+の映画』。
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