ブックキュレーター哲学読書室
20世紀フランスの哲学地図を書き換える
20世紀のフランス哲学は、ジャン・カヴァイエスというスピノザ主義者で数理哲学者の系譜を加えてみると、欠けたハブを取り戻したかのように、知られざる知のネットワークの存在を浮かび上がらせます。あなたの《フランス哲学》もそろそろアップデートしてみませんか。【選者:近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-:鹿児島大学法文学部准教授)】
- 110
- お気に入り
- 11320
- 閲覧数
-
構造と生成 1 カヴァイエス研究
近藤 和敬(著)
そもそもカヴァイエスなんて名前は聞いたことがないという人のほうが多いと思います。彼が集合論などの現代数学史を書きながら、哲学として何を考えようとしていたのかということをモノグラフの形式でまとめたのが本書です。彼の哲学的遺作は『構造と生成II 学知の理論と論理学について』(月曜社)で読むことができます。
-
主体の論理・概念の倫理 二〇世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義
上野 修(編) , 米虫 正巳(編) , 近藤 和敬(編)
カヴァイエスはスピノザ主義者として知られていたのですが、その彼の影響は「概念の哲学」という旗印のもと、戦後ジョルジュ・カンギレムやジャン=トゥサン・ドゥサンティ、ルイ・アルチュセール、ジュール・ヴュイユマンらを経由して戦後の構造主義や精神分析、特に『分析手帳』周辺の哲学者に深い影響を与えました。
-
カンギレムと経験の統一性 判断することと行動すること1926−1939年
グザヴィエ・ロート(著) , 田中 祐理子(訳)
カヴァイエスよりも一つ年下のカンギレムは、彼とともに対独レジスタンス活動(「南の自由」)に参加します。戦後一人生き残った彼は、その後多くのカヴァイエス論を書くことになります。そのカンギレムの知られざる戦間期の哲学を明らかにしたのが本書です。戦間期のフランス哲学の実像を解明した貴重な研究です。
-
スピノザの哲学にはどこかしら近づきがたいところがあります。そのスピノザの哲学のなかでも最も難しい部分を、本書は現代の観点を踏まえながらも、デカルトやホッブズなど彼の同時代の知的文脈を再構成することで、明らかにしてくれます。スピノザ理解のための最初の一書としてぜひおすすめです。
-
フランス現象学の現在
米虫 正巳(編) , ディディエ・フランク(ほか著)
現象学といえばフッサール、ハイデガーとドイツ哲学という印象がありますが、フランスでも彼らの哲学を受容しつつ展開した現象学が存在しています。カヴァイエスもまたそのフランス現象学の黎明期に影響を与えた一人です。本書でドゥサンティ論を著しているドミニック・プラデルはその特異な系譜を現在に伝えています。
ブックキュレーター
哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です