ブックキュレーター吉川弘文館 編集者 堤崇志
現状に満足できないときに、歴史から考えてみる
春は就職や異動など、地位や役回りが様変わりする季節です。現在の身の置かれ方に得心している人とそうではない人、様々でしょうが、誰しも前向きに仕事に取り組みたいものです。就職を歴史学的に考察した書籍を導入に、職人的な仕事ぶりを示した幾人かにフォーカスしてみます。
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高学歴を武器に社会に出ようとするものの、定職につけないつらさ。そうした「高等遊民」たちを、国会や行政の公的資料ばかりでなく、当時の新興メディアである新聞や雑誌なども使って洗い出す。個人の力量ではどうすることもできない就職事情を、景気・不景気だけに還元せず、国の教育政策の矛盾として追及する。
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行政資料だけで歴史をみることができないのは、昨今の公文書をめぐる問題からも明らか。大事なのは政治家や官僚たちの手元に残された手紙や日記、音声記録など、表には出せない個人史料である。長年の史料発掘の苦労を披露しているが、80歳を超えてなお『史料の収集・保存・公開という仕事』に邁進しているのがすごい。
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哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和
山本 一生(著)
エノケン(榎本健一)としのぎを削った喜劇人で、無類の記録魔だった古川ロッパ。彼の膨大な日記を存分に料理して、華麗な芸能界の人脈と、喜劇王に上り詰めた生涯を描く『初の評伝』。戦後にはすっかり没落し、美食家として知られ、でっぷりと太っていたロッパがろくに飯も食えず、喀血に苦しむ晩年は壮絶である。
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『一生懸命生活すること』の基本は、繕わぬ日々の家庭料理であり、特別においしいもの、手の込んだ献立などではないと断言しています。料理番組での巧みな話術で楽しませてくれる土井先生による、極めてシンプルな『提案』の書です。御尊父と同じ料理研究の道に打ち込んだ末の、食文化の伝承にかける決意が伝わってきます。
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植木等伝「わかっちゃいるけど、やめられない!」
戸井 十月(著)
無責任男という虚像に悩んでいたことは有名な話。こんな仕事嫌だなと思う反面、『これが俺のやることだ』と言い聞かせて、何にでも精一杯取り組んだ。60歳を過ぎて「スーダラ伝説」を自ら企画し、虚像を実像が呑み込んでしまった植木さん。亡くなる直前までのインタビューだが、その語りぶりがとにかく面白い。
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ブックキュレーター
吉川弘文館 編集者 堤崇志1973年生まれ。東京都出身。1996年吉川弘文館入社。月刊誌『日本歴史』や伝記シリーズ『人物叢書』を担当。近年では、『永青文庫叢書 細川家文書』や『豊臣秀吉文書集』などの歴史学の基礎となる史料集の編集に関わる。2015年より編集部長。
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