ブックキュレーター著述家・翻訳家 関口涼子
食べることは救いなのか、絶望なのか
通常わたしたちは、食べることは楽しいこと、食卓は分かち合いと対話の場と考えています。でも、本当にそれだけなのでしょうか。食物には「影」はないのでしょうか。飢饉はどこでも人間の生活をずっと脅かしてきましたし、あらゆる悲劇は食の問題と関わっています。そんなことを教えてくれる書物を選んでみました。
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ナチスのキッチン 「食べること」の環境史 決定版
藤原 辰史(著)
キッチンは時代の動きと無関係でいられる聖域でも避難所でもない。ときには、時代の政治性がこれ以上ないほど露わにされる場にもなりうる。台所の改革を追うことによって、ナチスの支配体制、そしてキッチンまで入り込んだ「戦場」が何だったのかを理解することができる、刺激的な一冊。
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戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る
斎藤 美奈子(著)
『戦争の影響で食糧がなくなるのではない。食糧がなくなることが戦争なのだ。』著者のこの文章は何よりも的確に、戦争と食との関係を表している。食べ物がなくなるだけではなく、素材のテクスチャーも、料理法も、ひいては食べるということの概念自体が変わってしまうのだ。何度でも読みなおす価値のある一冊。
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戦争や悲劇が、食糧難や飢餓と常に結びついていたとすれば、その反対に、飢餓を克服し、生産力を向上することはそのまま文明の拡大に結びついていたと言っていいだろう。食糧生産という点から書き上げられる人類史は、私たちと食べ物の関係をずっと広い視野から見ることを教えてくれる。
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なぜふつうに食べられないのか 拒食と過食の文化人類学
磯野 真穂(著)
食べられないのは食べ物がないからだけではない。食物という他者を体内に取り込むことは、自分の身体、心と親密に結びついているからこそ、そのバランスが崩れた時、「摂食障害」が現れる。文化人類学の視点から拒食と過食にアプローチする、新しい試み。
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食べることと完璧に折り合いがついている人など誰もいない。特に、人生と容赦ない関係を持ち続けている作家たちならなおさらだ。文豪たちは偏食、奇食、途方もない乱食によって、自分の「身にした」ものを作品として紡ぎだす。
ブックキュレーター
著述家・翻訳家 関口涼子著述家、翻訳家。東京生まれ、パリ在住。フランス語と日本語でそれぞれ10数冊の著作がある。主な著作に『熱帯植物園』『La voix sombre』『Fade』など。主な翻訳作品に、アティーク・ラヒーミー『悲しみを聞く石』、ジャン・エシュノーズ『ラヴェル』など。パトリック・シャモワゾーの『素晴らしきソリボ』邦訳で第二回日本翻訳大賞受賞(パトリック・オノレとの共訳)。2016年あいちトリエンナーレの招待作家として「味の翻訳」に関する作品をインスタレーション・パフォーマンスディナーの形で発表するなど、ジャンルを横断した活動を行っている。2012年フランス文化芸術勲章シュヴァリエ受章。メンバーの一員である「飯田橋文学」のサイトでは対談インタビュー等の様々なコンテンツを配信中(https://note.mu/iibungaku/)。
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