ブックキュレーター田口卓臣(西洋哲学研究者)
「例外」や「異常」と名付けられたものの側に立つと、世界はどう見えるのだろう?
驚くべき事件や常軌を逸した人物に出会うと、「例外」、「異常」、「狂気」といった言葉を思い浮かべがちである。そんな時、私たちは「法則」や「基準」の側に身を置いて、世界を裁いている。本当にそれでいいのだろうか? この世界の複雑さ、異様さ、過激さを感知するための5冊。
- 73
- お気に入り
- 3845
- 閲覧数
-
科学史・科学哲学研究 新装版
ジョルジュ・カンギレム(著) , 金森 修(監訳)
特異な出来事を「例外」として片付けようとする「法則」や「規範」に対し、科学史的な観点から批判を試みた名著。「法則/例外」、「正常/異常」、「基準/逸脱」といった分類からこぼれ落ちるものを見抜くにあたって、必読の一冊。同じ理由から、カンギレムの『正常と病理』(法政大学出版局)もお勧め。
-
人間の理性で自然を支配し、科学技術で自然の法則を統制できると教えてきた啓蒙思想。ディドロは、その啓蒙思想のチャンピオンとみなされた18世紀フランスの哲学者である。私が本書で明らかにしたのは、こうした通説とは異なり、「法則/例外」、「正常/異常」、「基準/逸脱」といった区別を次々に転覆していくディドロの「怪物的思考」だった。
-
例外状態
ジョルジョ・アガンベン(著) , 上村 忠男(訳) , 中村 勝己(訳)
現在、国内外で非常事態が宣言され、戒厳令が敷かれるようなケースが相次いでいる。こうした「例外状態」が統治者によって作りだされる過程を、理論的・歴史的に検証した名著。「非常時」を常態化させようとする統治者の手法を観察することで、私たちが当たり前のように受け止めている「平時」なるものの舞台裏も見えてくる。
-
例外の理論
フィリップ・ソレルス(著) , 宮林 寛(訳)
ソレルスが取り上げる文学者たちは、異様さに満ちている。彼らに似たものは彼らの前に存在せず、規則や様式が生まれたのは彼らの後だった。文学とは規則あっての例外ではなく、本来的に「規則なき例外」なのだ。分かりやすい知識や見通しを得るためではなく、文学の過激さを感知するための窓として開いてほしい。
ブックキュレーター
田口卓臣(西洋哲学研究者)1973年横浜生まれ。宇都宮大学国際学部准教授。17~18世紀西洋の哲学、科学、文学を中心に研究を続けてきた。現在は、20世紀以降の西洋哲学や日本近代文学にも関心を寄せている。主著として、『ディドロ 限界の思考―小説に関する試論』(風間書房、渋沢クローデル賞特別賞)、『怪物的思考―近代思想の転覆者ディドロ』(講談社)、『脱原発の哲学』(人文書院、佐藤嘉幸との共著)。訳書として、ドニ・ディドロ『運命論者ジャックとその主人』(白水社、王寺賢太との共訳)などがある。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です