ブックキュレーター松田哲夫(編集者・筑摩書房顧問)
没後刊行の単行本を読みながら、赤瀬川原平ワールドを再発見する
赤瀬川原平が亡くなって2年半、「芸術新潮」が緊急特集、千葉、大分、広島での大回顧展、そして、新刊単行本が5冊。どの本も、読者に新鮮な楽しみを与えてくれる。60年代・前衛芸術家時代の処女作の復刻本『オブジェを持った無産者』(河出書房新社)、絶筆を収めた『増補 健康半分』(デコ)と併読すると、さらに味わいが深まるだろう。
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赤瀬川原平漫画大全
赤瀬川 原平(著)
赤瀬川は、60年代・前衛芸術家、80年代・芥川賞作家の間の時代、70年代には、ペン画による「漫画・パロディ作家」だった。「ガロ」とりわけつげ義春の作品、宮武外骨の雑誌表現に強い衝撃を受け、鮮烈な筆捌きで空前絶後の漫画を描いていった。今回、『櫻画報』以外の強烈で、奥深い作品群が初めて本にまとめられた。
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妄想科学小説
赤瀬川 原平(著)
70年代後半、月刊誌に連載したショート・ショート作品集。この時期は、赤瀬川原平から尾辻克彦が生まれる過渡期で小説的表現を模索していた。これらの作品は、あまり作り込まずに書いているので、彼の発想・創作の原石がたくさん転がっている。作家が物語を熟成させていくプロセスを見ることができるのも楽しい。
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レンズの下の聖徳太子
赤瀬川 原平(著)
単行本未収録の小説集だが、実に面白い。個々の作品はもちろん、一人の作家の文体変遷史としても興味深い。赤瀬川の文章は、現代詩のような文章を書いていた青年期、肩の力を抜いた小説で芥川賞を受賞した壮年期、前2期の要素をすべて取り込んだ熟年期と変化している。この本には3期の特徴がわかる作品が並んでいるのだ。
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世の中は偶然に満ちている
赤瀬川 原平(著) , 赤瀬川 尚子(編)
赤瀬川の没後、発見された30数年間の手帖や日記には、身の回りで実際に出会った偶然の出来事の記録と夢の記述が克明に記されていた。宇宙の原理と人間の日常生活がシンクロする偶然の不思議に挑んだ記録だ。あらゆるものを観察し、個性的な思索と多彩な表現で僕たちを楽しませてくれた赤瀬川ワールドの源泉がここにある。
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絵画、オブジェ、ハプニング、イラスト、漫画、パロディ、小説、カメラ、日本美術などなど、多彩なジャンルにわたって独自の足跡を残した稀代の表現者。彼が最後に注目したのが時計だった。小さくて精密で、するりと丸く手に収まる、金属製の「生きもの」の魅力の虜となり、完璧な時計を求めてさまよう壮大な探索記である。
ブックキュレーター
松田哲夫(編集者・筑摩書房顧問)編集者(筑摩書房顧問)。書評家。1947年東京生まれ。筑摩書房の書籍編集者として400冊以上の本を編集。『逃走論』、『ちくま文学の森』、『路上観察学入門』、『老人力』、『包帯クラブ』などのベストセラーを生み、「ちくま文庫」、「ちくまプリマー新書」を創刊する。TBS系テレビ「王様のブランチ」コメンテーターを12年半、NHK「ラジオ深夜便」書評コーナーを8年間担当し、1000冊以上の本を紹介してきた。著書に『編集狂時代』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』、『縁もたけなわ』など。個人編集の『中学生までに読んでおきたい日本文学』や、池内紀、川本三郎と共同編集の『日本文学 100年の名作』などのアンソロジーも好評。
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