ブックキュレーター哲学読書室
19世紀末の歴史的文脈のなかでソシュールを読み直す
従来ソシュールは20世紀の言語学、特に構造主義あるいは記号論の先駆者として読まれてきた。21世紀になってすでに十余年が経った今、一般言語学だけでなく、伝説・神話研究やアナグラム研究、さらには政治的言説を含め、ソシュールを19世紀末から20世紀初頭の歴史的文脈のなかで読み直すことが求められる。【選者:金澤忠信(かなざわ・ただのぶ:1970-:香川大学准教授)】
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ソシュールの政治的言説
金澤 忠信(著)
1996年に発見されたボーア戦争、アルメニア人虐殺事件、ドレフュス事件などに関する新資料から、ソシュールの知られざる政治的立場を読み解く。20世紀の「言語学者」あるいは「思想家」としてのソシュール像からはかけ離れた、19世紀末の歴史的事件を冷徹な眼差しで見つめる「知識人」としての姿が浮き彫りになる。
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伝説・神話研究
フェルディナン・ド・ソシュール(著) , 金澤 忠信(訳)
ソシュールの伝説・神話研究を構造主義的神話学の先駆として読む研究者もいるが、ソシュールは神話学的記号としての「象徴」よりむしろ、伝説のなかで語り継がれてきたありきたりなもの、無意味なもの、英雄らしからぬものを手がかりに、伝説の起源としての歴史的事実に迫ろうとする。
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ソシュールのアナグラム 語の下に潜む語
ジャン・スタロバンスキー(著) , 金澤 忠信(訳)
ソシュールのアナグラム研究と言えばこれ。共時言語学のみを重視する「言語学者」とは別の、「もう一人のソシュール」を世に出すのに寄与した。著者はジュネーヴ大学最後の巨匠と言っても過言ではないが、いたって気さくでチャーミングな老人。
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「知識人」の誕生 1880−1900
クリストフ・シャルル(著) , 白鳥 義彦(訳)
1880-1900年のフランスにおける「知識人」の誕生についてドレフュス事件を中心に論じている。ソシュールが手稿のなかで言及しているエルネスト・ラヴィス、フランシス・ド・プレサンセ、アルベール・レヴィルら「知識人」たちのそれぞれの立場や相関関係について知ることができる。
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知識人の時代 バレス/ジッド/サルトル
ミシェル・ヴィノック(著) , 塚原 史(ほか訳)
ソシュールに直接関わるのは第一部「バレスの時代」。パリでソシュールの言語学の講義に出席したことがあるピエール・キヤールの名が、ジャン・ジョレス、ジョルジュ・クレマンソー、レオン・ブルムらドレフュス派知識人とならんで出てくる。
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哲学読書室知の更新へと向かう終わりなき対話のための、人文書編集者と若手研究者の連携による開放アカウント。コーディネーターは小林浩(月曜社取締役)が務めます。アイコンはエティエンヌ・ルイ・ブレ(1728-1799)による有名な「ニュートン記念堂」より。
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