ブックキュレーター松田哲夫(編集者・筑摩書房顧問)
僕が企画編集して刊行し、長い寿命を保っている本ベスト5
本の寿命が短くなっているという。僕が、約50年の編集者人生の間につくった本は400点を超えている。このうち、現在も売られている、筑摩書房刊行のものは約80点ぐらい。どんな本が長生きなのか、単行本刊行時点から現在までの時間の長さ(年齢)順に並べてみた。なんと、すべて80年代の本で、5点中3点は路上観察学会メンバーの本だった。
※本ブックツリーの内容は、執筆時点(2017年7月17日)の情報に基づいております。
- 21
- お気に入り
- 1878
- 閲覧数
-
逃走論 スキゾ・キッズの冒険
浅田 彰(著)
2位になったのは、スキゾ・キッズの浅田さん。単行本が1984年3月(文庫が86年12月)だから、33歳4カ月である。僕は、こういう現代思想系の本は得意ではないのだが、種村季弘さん、天野祐吉さんのオススメもあった。刊行後は、筑紫哲也さんなどとともにニューアカ・ブームに一役を買うことになり、楽しむことができた。
-
建築探偵の冒険 東京篇
藤森 照信(著)
3位は、建築史家・建築家の藤森さん。単行本が1986年3月(文庫が89年12月)だから、31歳4カ月である。雑誌で彼の文章を読み、会いに行ったがけんもほろろ。何回か通ううちにこの本ができた。その後は、路上観察学会を一緒に立ち上げ、日本各地や上海、ベトナム、台湾に旅行するなど、最も親しい友人の一人となった。
-
路上観察学入門
赤瀬川 原平(ほか編)
4位は、僕が、赤瀬川さん、藤森さん、南さん、林丈二さんたちと結成した学会のスタートの本。単行本が1986年6月(文庫が93年12月)だから、31歳1カ月である。この学会が、最近、再び注目を集めている。水戸、近江八幡での地元学会発足、台湾、中国での翻訳出版、カナダ、オランダ、アメリカでの展示などが続いている。
-
江戸へようこそ
杉浦 日向子(著)
5位は、路上観察学会員だった杉浦さんの、漫画以外の最初の著作。単行本が1986年12月(文庫が89年1月)だから、30歳7カ月である。杉浦さんは、江戸の町や暮らしを、わがことのように、くわしく楽しく話してくれた。それを聞いていると、江戸の住人が、何かの間違いで現代の東京にまぎれ込んだとしか考えられなかった。
ブックキュレーター
松田哲夫(編集者・筑摩書房顧問)編集者(筑摩書房顧問)。書評家。1947年東京生まれ。筑摩書房の書籍編集者として400冊以上の本を編集。『逃走論』、『ちくま文学の森』、『路上観察学入門』、『老人力』、『包帯クラブ』などのベストセラーを生み、「ちくま文庫」、「ちくまプリマー新書」を創刊する。TBS系テレビ「王様のブランチ」コメンテーターを12年半、NHK「ラジオ深夜便」書評コーナーを8年間担当し、1000冊以上の本を紹介してきた。著書に『編集狂時代』、『印刷に恋して』、『「本」に恋して』、『縁もたけなわ』など。個人編集の『中学生までに読んでおきたい日本文学』や、池内紀、川本三郎と共同編集の『日本文学 100年の名作』などのアンソロジーも好評。
ブックツリーとは?
ブックツリーは、本に精通したブックキュレーターが独自のテーマで集めた数千の本を、あなたの"関心・興味"や"気分"に沿って紹介するサービスです。
会員登録を行い、丸善・ジュンク堂・文教堂を含む提携書店やhontoでの購入、ほしい本・Myブックツリーに追加等を行うことで、思いがけない本が次々と提案されます。
Facebook、Twitterから人気・話題のブックツリーをチェックしませんか?
テーマ募集中!
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを募集中です。あなたのリクエスト通りのブックツリーが現れるかも?
テーマ応募フォーム
こんなテーマでブックツリーを作ってほしいというあなたのリクエストを入力してください。
ご応募ありがとうございました。
このテーマにおける、あなたの”6冊目の本”は?
※投稿された内容は、このページの「みんなのコメント」に掲載されます。
コメントを入力するにはログインが必要です